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第52話 ミリちゃんはくっつきたい

 俺はミリちゃんのお姫様抱っこのおかげで、全速力の速さでネスタリア区域を抜ける直前の所までやって来た。

 

 聞いた話だが、道中に討伐隊と通行人がすれ違う時は『ご苦労様です』と挨拶してくれたり、差し入れがあったりする事があるのだが、この討伐隊『ラビットちゃん』の場合は、ただ奇異の目に晒されるだけだった。



 そして気づけばもう辺りはすっかり暗くなっていたので、道の外れの少し生い茂った林の中で野宿することになった。


 結局、最後までミリちゃんにお姫様抱っこされたままだったが、途中でミルネに代わってあげる話はどうなったんだろうか? 

 

 うーん、ミルネは少し落ち込んでいるように見えなくはない。

 明日はミルネにお願いしたほうがいいのかなぁ……いや、俺が言うのも変な話か。


 

 そして、こうしている間にもアルシアは夕食の準備……と言っても、この世界に来てこれしか食べてない、毎度お馴染みのジュレの準備をしているところだ。


 ただ今日は、なぜかミリちゃんが俺にくっついて離れてくれない……。

 こちらから離れようとしても、服を引っ張ったり、腕を掴んだりと、しかもそれを無言でするから、可愛いと言えば可愛いが、怖いと言えば怖いのだ。



 こうして、夕食時もくっついたままで、本当食べにくい状態で食事をとり、食事が終わって就寝の準備に入っても離れなかった。怪我人に対して嫌がらせだぞ。

 

 

「ミリちゃん、そろそろ離れてくれないかな? というか何でそんなにくっつくの?」



 俺はついミリちゃんに否定するような事を言ってしまった。すると、ミリちゃんは俺にくっついたまま、ジト目で俺を見つめた。


 やばい! うっかり言ってしまった! 



「いや、違うんだよっ、ただ単純に理由が知りたかっただけで、駄目って言ってるわけじゃっうわ!」

「ふんっ」



 俺はミリちゃんにすぐに弁明したけど、時すでに遅し。俺の手は万歳する形で魔法によって拘束され、さらにその状態で、前にポンタがやったように俺を寝袋へと収納されてしまった。


 そのあと、ミリちゃんが俊敏な動きで寝袋に入り、デザイン魔法により昨日と同じパジャマで俺が嬢様の薄い水色のワンピース、ミリちゃんがピンク色に衣装チェンジした。

 しかし、昨日より生地が薄く、露出が多くなった気がする。


 そしてミリちゃんは、がっつりと抱きしめて、その様子を見るためミルネがしゃがんで頬杖ついていた。


 俺の目線は地面に近いぐらい低いから、ミルネがそんな座り方をすると制服のスカートからパンツが丸見え状態になってしまうが、今はそれどころではない。

 

 相変わらず、傍から見れば凄い状況だよな……。



「マユリン、なんでそんな事になっているの? ツンツン」



 ミルネは俺が拘束されていることをいい事に、指で頬を突いてきた。



「うぅ、やめ……ろ! 良い子が真似するだろ! ミルネも早く寝なさい」

「アル姉が、雑務があるからまだ寝ないって言ってたから、もう少し起きてるよ」



 その雑務って、片付けとかだよな。食事が終わった後に、ミリちゃんに拘束されてたから何もしていない。もちろん、この二人も同様だ。ただ、ポンタだけはアルシアを手伝っているようで、結構気が利くやつかもしれん。

 

 ごめん、アルシア……。



「てか、ミルネ手伝ってあげたら?」

「さっき声かけたら大丈夫って言ってたよ」

「真由ちゃん……早く寝よ……」

「ほら、ミリちゃんも寝落ちしそうだぞ。早く戻れよ」

「マユリンが眠ったら行くよ」



 相変わらずミルネは、無自覚だと思うがパンツが見えたまま、ニヤニヤしている。



「つんつん」

「指で俺の身体を突くはやめろ! うひゃ」



 俺が抵抗出来ないことをいいことに悪戯して、面白がっている。しかし、ランダムに打ってくる突きは、時々変な所に当たって、思わずピクっとなってしまう。



「うひゃっひゃあ、や、やめろ! ミリちゃんが起きるだろ!」

「ごめん、ごめん、マユリン可愛いからついからかいたくなるんだよ」



 じゃあ、キリッとした顔で睨んでやる。



「キャーッ! マユリン可愛い!」



 どんな顔をしても無駄みたいだ。

 


「ミルネ! 私たちも寝ましょう」

「あ、アル姉だ。はーい!」



 よし、ナイスだアルシア! これで安心して眠れるぞ! いや、拘束されているから安心は出来ないか。いつかこの状況で敵に襲われたりしないだろうな。



「じゃあ、あたし戻るね。おやすみ、マユリン」

「ああ、おやすみ」



 ふーう、これでこの拘束魔法が解けたらいいんだが……。

 俺も寝よう。


 俺はミルネから戻っていくのを見届けると視線を戻し、ミリちゃんと向き合う状態になった。

 すると!



「げっ!」


 

 ミリちゃんはジト目で俺の方をじっと見ていた。しかも少し不機嫌な感じな表情をしている。



「真由ちゃん、早く寝るの」

「分かってるよ。あと、この拘束魔法を解いてくれると助かるのだが」

「駄目。真由ちゃんまた出歩いて怪我する」

「いや、もう出歩いたりしないから」



 ああ、なるほど。ミリちゃんは俺の事を心配しての事だったのか。

 かなり斜め上をいってるけど!!



「真由ちゃん、舌を出して」

「えっ! いきなり何!?」

「早く出して」



 うーん、いきなり予想外の要求が来たぞ。でも舌を出したら何をされるか分からないし、拒否したら、それはそれで何されるか分からない。


 詰んでるな……。


 俺は拒むよりも従う方を選び、お互い顔が近いからミリちゃんの唇に触れそうだけど、恐る恐る舌を出した。



「ふんっ」

「ほぇぇぇー!!」



 なぜか舌を掴む!? しかも離さない! 何がしたい!?

 もしかして、俺が出歩かないように掴んでいるのか?


 いやいや、そんな所掴まれても……。




 しばらくすると、ミリちゃんは掴んだままウトウトし始め、今にも寝落ちしそうな感じになってきた。


 何だよこの状況!

 こんなんで絶対眠れないわ!

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