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第47話  幼女!?魔王フィルリアル

 俺はマリの『魔動ショック』で再び地面に叩きつけられた。だが、さっきみたいに連続で『魔動引力』を打って来なかった。


 俺はゆっくり体を起こし、フラフラになりながらも立ち上がることが出来た。

 しかし、ふと視線を落としてみると、血と泥で服は汚れた上に、斬られたり燃やされたりしたせいでボロボロになっていた。


 せっかく、ミリちゃんが俺の為にデザインしてくれたものなのに。


 しかし、元々薄着だったから、こんなに服が破れてしまうと、かなりセクシーなことになっている。

 大事な所は大丈夫だが、これは気を遣ってくれているのかな?




「ねぇ、今から魔動引力をもう一回やるけど、準備はいい?」



 くそ、ふざけやがって……。でも、向こうからしたら、何も対応してこない俺にイライラしているのかもしれない。だが、俺には、あの魔法の対処法が分からない。


 しかし! 魔法でなければ、一つ方法を考えた。


 相手が魔力で引っ張るのなら、こっちからも飛び込んでやればいい。

 例えば、動物に手を噛まれて放さなかった場合、逆にこっちが口の中に押し込んでやると、苦しがって放す場合がある。

 

 今回もそれと同じように、MPCでマリの方にダッシュしてやる。上手くいくか分からないが、一瞬の隙は出来る筈。その時に攻撃すれば倒せる可能性大だ。


 でも、MPCを使うにはもう体の限界がある。あと一回が最後かもしれないな……。



「と、ら、え、た」

「うわっ」



 マリは不機嫌そうな顔をしていた。向こうにすれば、ふざけているようにしか見えないからな。



「真由ちゃん、完全にふざけてるわね。本当に死ぬよ」

「はは、やってみろよ!」

「ふん! 今度は本気でやるからね! 魔動引力!」

「よし、今だ!」



 俺は魔動引力で引き寄せられると同時に、MPCでダッシュを試みた。

 すると、魔動引力の引っ張る力とダッシュの力が相まって、もの凄い速さで一気にマリの所まで来た。


「えっ!? うそ?」



 マリは予想もしなかった俺の行動に驚いてしまったせいか、手を引っ込めた。

 そのおかげで魔動引力の呪縛から俺は解放され、またとないチャンスを手に入れた。



「し、しまった! ま、まさかこの為に……私を油断させた!?」



 俺は、MPCを使う体力はもう無かったので、拳に魔力を纏わせ『魔動拳』を打つ事にした。



「魔動拳!」

「こ、殺される!」

「えっ?」

 


 俺は馬鹿だ。本当に馬鹿だ。

 そんな余裕なんて無いはずなのに、マリの顔面に当たる寸前で魔動拳を止めてしまった。

 

 それは彼女が美少女だから……いや、違う。

 彼女の瞳が一瞬、ミリちゃんに見えてしまい、躊躇ってしまった。


 しかし、躊躇ってしまった事の代償は大きかった。



「うわ! く、苦しぃぃ」



 ゴーレムが俺の首を掴み、持ち上げた。



「真由ちゃん、どういうつもり!? あのまま魔動拳を打っていれば私を倒せたはずよ!」

「うぅぅぅ」

「マリ、さっさとやれ。それとも俺が斬ろうか?」

「私がやるわよ! ゴーちゃんそのまま掴んでなさい」



 俺の今の行動は、マリにとって挑発しているように映るだろう。ただでさえ、ふざけてると思われているのに。

 

 このままだと、次のマリの攻撃を喰らえば、俺は殺されるかもしれない。

 だから、なんとかしてこの状況を打破しないといけないが、もうそんな力は残っていない。


 マリはどんどん魔力を高めていき、恐らく魔動拳を打つつもりだろう。


 これで万事休すかと思われたその時、何処からともなく黒い煙のようなものが、俺や幹部達がいる辺りを渦を巻くように現れた。


 すると、ガウロとイフリートはすぐさま、ひざまづいた。



「おい、マリ! お前も早く!」

「な、なぜここに……」



 誰かお偉い方が来たのは間違いないだろう。そのおかげで俺は解放されたけど、状況はもっと深刻になりそうだ。幹部がひれ伏す相手なんて、絶対魔王だろ!


 実は、一瞬だけ、この絶望的な状況を救ってくれる白馬の王子様を期待してしまった。だって、映画やアニメならこんな美少女がボロボロにされて、その上殺されそうになったら、登場してもおかしくないだろう?

 

 そもそも、冒険の初日でいきなり魔王幹部と戦って、そして魔王が登場するって、どんなシナリオだよ! 〝現実は小説より奇なり”というやつか。


 その渦を巻いた黒い煙は、だんだんと薄れてくると、その中から人が現れた。



「あとは私がやります。あなた達は下がっていなさい」

「「「はっ! 魔王フィルリアル様!」」」



 煙の中にいる者は、とても魔王と思えない程小さな子どもで、丁寧な話し方をしているが、声が幼い少女の声だった。 


 そして、薄い黒い煙が魔王の周りをぐるぐる回りながら、魔王は俺の方に歩いて近づいた。すると、だんだんと魔王の風貌が見えてきた。


 幼女じゃないか!? でも、図書館では魔王はザイロンだったはず……。

 魔王フィルリアル? どういうこと?


 その幼女は長い黒髪でとても可愛らしいが、赤い瞳が邪悪な感じにさせている。

 うーん、こんな可愛らしい子が……魔王? って余裕かましてる場合では無かった。


 俺は重傷ではないけど、骨は何本かいってると思うし、MPCの使い過ぎでもう体力は残って無い。

 魔力はあるが、魔法で魔王に勝てる気が全くしない。


 だから、俺一人ではもうどうする事も出来ない。この魔王が、マリみたいに俺をお持ち帰りしてくれるなら、まだいい方だ。


 魔王フィルリアルは、ついに俺の前までやって来た。

 

 魔法が素人の俺でも、はっきりとこいつの魔力が膨大で凄まじい事が分かる。

 だから俺は抵抗したり、逃走しても殺されるだけなので、両手を上げて降参した。


 すると、魔王フィルリアルは俺にあごクイをして、俺の方をじっと見ながら話始めた。



「魔力が少し違います。あなたは異世界から来たのですか?」

「えっ!?」

「あなたの世界の事を教えてくれませんか? そうすれば、安楽死にしてあげます」



 やっぱり、俺に生きる選択肢は無いのかよ!

 それになんで異世界から来たことがバレてるんだよ!

 魔王なんかに、こっちの情報なんて言えるわけがない。



「教えてくれないの? 苦しむことになりますよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ」

「魔力封鎖」

「なっ! か、身体が」



 いつ魔法攻撃されたのか分からなかったが、俺の身体は全く動かなくなった。

 前に拘束魔法を掛けられた時は、縛られた感覚でもがくことは出来たが、今回はそれすら出来ない。 まるで石のように固まってしまった感じだ。



「魔動コンプレッション」



 魔王フィルリアルが魔法を唱えると、俺の身体全体に圧迫するような力が少しずつ加わって来た。



「お、おい嘘だろ」

「教えてくれないの?」

「こ、この悪魔め……ぐは」



 圧がだんだん強くなり、俺は血を吐き、もう耐えるのが限界に差し掛かってきた。

 ここまでか……と思った瞬間、どこからか聞いた事も無い声が聞こえてきた。



「元主! 今助けに参った!」

「だ、誰!?」

お読み頂き、ありがとうございます。


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