第46話 真由、絶体絶命
なぜかマリと言う美少女は、俺の髪を触わり続けるが、俺は何も抵抗も出来ず視線を落とした。
「本当いい髪、殺すのは惜しいね。このまま持って帰ろうかしら」
俺を持って帰って何するんだよ! おい!
「何を言っている! マリ!」
「ふふふ、ガウロ、冗談よ。でも、私の人形にしたいわね」
マリの目線はガウロの方に向いたな。逃げるなら今がチャンスか。
ここはMPCシステムで一気にドアまでダッシュして、逃げるぞ!
俺はマリの手を払いのけ、右脚にパワーを集中し、そして一気に放出すると、ドアまで逃げることが出来た。
「えっ、何!?」
「なんだ今のは!?」
マリとガウロは、今の出来事に驚きを隠せなかったようだが、イフリートは寡黙で顔の表情も分かりにくいから、どう思ったのかは分からない。
「全く魔力を感じなかったよ。ガウロどうなっているの?」
「この俺でも感知出来ないだと……そんなバカな」
すぐにドアまで追ってくるかと思ったが、魔力を感知出来なかったことへの戸惑いのせいか、追う気配すらない。これはチャンスだ。
俺は、難なくドアを開け外に出ることが出来た。
しかし!
「げっ! なんだこいつは!?」
「部外者は排除する」
外に出た瞬間、目の前に居たのは、2メートル以上は有りそうな身長に、岩みたいにごつごつした身体と顔、そう、こいつはゴーレムだ。
そして、このゴーレムは俺に出会った瞬間、ハンマーみたいな右手を振り上げ、俺に攻撃を仕掛けた。だが、出会っていきなりの攻撃に対応出来ない。
だから、MPCシステムで胴体に剛性を集中させて、防御力を高めた。
しかし、剛性を集中させる範囲をもっと狭めれば、高い防御力を得られたのだが、今回はそこまで範囲が絞れなかった為、ゴーレムのパンチを喰らい、ダメージを受けてしまった。
「ぐはっ!」
俺は一発の攻撃で、数メートル吹っ飛ばされ、地面を2回、3回と転がり、今日雨が降ったせいで泥を被ってしまった。
いくら何でも複数の魔王軍幹部を相手するのは、流石に分が悪過ぎる。だから、逃げの一手に限ると考えていたが、それも難しいかもしれない。
俺はゆっくりと起き上がり、絶望的な風景が視界に入ると逃げる気が失せてしまい、茫然と立ち尽くすしかなかった。
この建物の周囲は、ゴブリン、オーガと言った様相で、言うまでも無く魔王軍であるのは明白だ。
しかも、合わせて100体ぐらいはいそうだ。
さらに最悪なことに建物内にいた、ガウロ、マリ、イフリートまでもが外に出て来てしまい、俺は絶体絶命の苦境に追い込まれてしまった。
そして、マリがゴーレムの傍に寄り、俺に話始めた。
「真由ちゃんに逃げ場なんて無いよ。この一体に結界を張っているから、魔力感知もされないし、助けも来ない。でも、マリのゴーちゃんの攻撃を喰らったみたいだけど、立っていられるとはね」
「サポーターとはいえ、こいつも脅威になるかもしれん。確実に消さねば」
あのゴーレムは幹部じゃあなくて、マリの部下だったのか。しかもゴーちゃんって……。
そんな事はどうでもいいか。問題はどうやって逃げるかだな。
結界が張ってあると言ったが、外に出られるだろうか?
俺は魔王幹部達がいない方向に、ここまで来た道があるのが見えたので、MPCのダッシュを使って逃げる事にした。
ゴブリンとオーガ達は多くいるが、これならいけそうだー!
俺はダッシュによる勢いで、最初にぶち当たったゴブリンをぶっ飛ばし、相手が驚く時間も与えないまま、すかさず周囲にいた魔王軍を蹴散らした。
魔力の使わない攻撃は、いちいち動揺してくれるので隙を与えてくれる。そして、俺は攻撃の手を辞めずに次々と魔王軍を倒していった。
よし、もう少しで逃げれるぞ!
その様子を見ていたガウロは、腰に下げていた1メートルぐらいはある棒を手に取り、何か攻撃するような構えで、俺の方を睨みつけた。
「ジェネラルソード。魔動転化!」
すると、ただの棒が剣にデザインされ、さらに魔力が纏ったことで、剣からゆらゆらと青い光が放たれた。
「魔動斬撃!」
ガウロは俺の方に向かって剣を振り下すと、魔力による衝撃波が斬撃となって、軌道上に魔王軍いようともお構いなしに飛ばしてきた!
俺はその斬撃に気づいた時には、目の前に差し迫っていたので、とっさにMPCで上にジャンプして、かわした。
「かわされた!? 魔力感知も出来ない。妙な技だ。しかし! 空中ではどうにもならんだろう!」
ガウロは剣を連続で振り回した。
「魔動斬撃! 乱れ打ち!」
ガウロの放つ斬撃の嵐は、空中で避けようがない俺に容赦無く襲いかかった。
もちろんMPCで剛性を高めてガードしたが、流石にこれだけの数を打ち込まれると抑えきれなり、次第に切り傷から血が吹き出し、服も切り裂かれた。
「駄目か。これでも致命傷にならんか」
「ガウロ、俺に任せろ」
そう言ったのは、これまで殆ど喋らなかったイフリートだった。
俺は、ガウロの攻撃にボロボロになりながらもなんとか耐え、そろそろ地面に着地しようかという時に、突然地面が赤くなり、噴火のように炎が襲いかかった。
まだ落下中の俺には避けることが出来ず、羽織ってたジャージで身を屈めた。
だが、ジャージは勢いよく燃え為、すぐに脱ぎ捨て、地面を蹴ってすぐにその場を離れた。
しかし幹部達の切れ間の無い攻撃はまだ続いた。今度はマリだ。
「ふふ、簡単に魔力を捉えれたわ。何を考えているのかしら」
マリは手のひらを広げて差し出し、笑みを浮かべながらそう言うと、俺の身体は突然動かなくなった。というより動きが鈍くなった。
「えっ!! なんだぁ! か、身体が、こんなの反則だろ!」
「あなたが油断するからよ。ふっふっふ、じゃあ、こっちに来なさい。魔動引力!」
「うわ、身体が磁石みたいに引っ張られる!」
マリの『魔動引力』という魔法は、手足は動かせるが、身体全体で引き寄せられるようで、どうすることも出来なかった。
そして、マリの手のひらに俺の胴体がくっつくような感じで止まった。
「魔動ショック!」
「え? ぐわっ!!」
マリの手のひらから、瞬発的に強い魔力が発生したかと思うと、もの凄い衝撃波が俺に襲いかかり、吹っ飛ばされてしまった。
そして、地面に叩きつけられたかと思うと、時間が巻き戻しされたようにまた俺は、マリの手のひらに引き寄せられた。
「真由ちゃん、何で抵抗しないの? つまらないじゃん。ただのサポータじゃないんでしょう?」
マリは少し呆れ顔で、俺に言った。
て、抵抗? こいつの魔法に対処方法があるのか?
もしかして基本的な事なのかもしれないが、授業でも習って無いし、俺が知るはずもない。
「まぁいいわ。はい、魔動ショック」
「ぐはっ」
俺は再び衝撃波で飛ばされてしまった。
やばい……このままじゃあ、本気で殺されてしまう……。
何か対策を考えねば……あの『魔動引力』を上手く利用出来ないか?
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