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第44話 ミリちゃんは一緒に寝たい

 俺は、寝袋を燃やした理由をミリちゃんに聞くと……



「真由ちゃんと一緒に寝る」



 ジト目で俺を見ながら答えた。

 うーん、それなら別に燃やす必要は無いよね。どうせ1つ足りないんだから。

 


「真由ちゃん抱いて寝る約束」

「やっぱり覚えてたか……」

「マユリンと寝たかったな.....」



 勢いで回避出来ると思ったが、無理だったか。

 ミリちゃんが一度そう決めたら、覆すのは難しいだろう。下手に抵抗すると拘束されてしまうし、ここは従うしかないようだ。

 

 うぅぅ、俺隊長なのに。



「分かったよ、でもこの服は脱ぐぞ。流石にこんなフリフリの服で寝るわけにはいかないからな」

「真由ちゃん、大丈夫。ミリがデザインしてあげる」

「いや、ご心配なく。ジャージがあるのでって、おい!」



 ミリちゃんは俺の言葉も聞く事なく、デザイン魔法で服を変えやがった。



「こ、これは……」



 俺の格好は、お嬢様が着るような薄い水色のワンピースパジャマみたいだ。

 ただ、肩周りがキャミソールでスカート丈がやけに短い。ちょっと露出が多くないかこれ。



「真由ちゃん、一緒に寝よう」



 気づけばミリちゃんも、俺と同じで薄いピンク色バージョンで、これはこれで可愛かった。という事は、俺も随分可愛いことになっているんじゃないのか?



「真由ちゃん、早く」

「お、おい引っ張るな!」



 ミリちゃんは強引に俺を寝袋に詰め込んだ。多少たりとも魔力を使ってるんだろう。そうじゃないとあんな力は出せないはずだ。


 俺が中に押し込められると、ミリちゃんも自ら入ってきた。

 


「真由ちゃん、こっち」

「うげっ」



 寝袋に入ったミリちゃんは、俺の顔と体の向きをミリちゃん好みに調整し、お互い抱き合うというよりかは、ミリちゃんが寄り添うような感じのポジションをとった。


 しかし、ベッドの時と違って、スペースが無いから、完全に逃げられない。

 つまり抵抗出来ないから余計に何されるか分からない恐怖が俺に付きまとう。だが、その様子を見ていたミルネが、心配そうに寝袋の前までやってきた。



「マユリン、大丈……夫.....こ! これは!?」



 ミルネは俺とミリちゃんの一緒に寝る姿を見て、固まってしまった。

 恐らく、ミリちゃんがデザインした可愛いパジャマ姿で、2人が一緒になるこの絵が、とても可愛く映ったのであろう。多分……。



「こ、これは……ほ、欲しい.....」

「駄目、真由ちゃんはミリのもの」



 ミルネが物欲しそうな目で、手を差し出したら、盗られると思ったのか、ミリちゃんはミルネの方を見ながら、俺を抱き寄せた。



「マ、マユリン……ミリちゃん……」



 ミルネがその場に立ち尽くしていた時、アルシアもこちらにやって来た。



「ミルネ、私たちもそろそろ寝……ま……」



 アルシアは顔を赤くしながら、立ち止まってしまった。あのアルシアもこうなるという事は、余程可愛いことになっているんだろうな。正直、俺も見てみたい。



「はっ、ううん、ミルネ、私たちも寝るわよ。2人ともおやすみなさい」



 我に返ったアルシアは、ミルネを連れて自分の寝袋に戻った。

 俺も早く寝たいが、この状況で寝れるのかな……。


 相変わらずミリちゃんは、俺を抱きしめながらジト目で俺を見つめている。

 ミリちゃんはミルネより幼く見える上に、西洋のお人形さんみたいに可愛い。

 このまま大人しく寝てくれればいいんだが。



 しかし、そんなに甘くは無かった。



「うごぉっ!」



 突然、ミリちゃんは人差し指を俺の口の中に押し込んで来た!



「いやあのぅ、にゃんのつもりでぇすか?」

 


 喋りにくい中、一応問いかけてみたが、ミリちゃんは何も答えず止めることは無かった。起きているのか? 寝ているのか? それすら分からない。


 

「お、おい、いやめぃれろ」



 もしかして、ミリちゃんってドSなのか!? 

 なんとか止めさせないと、これ以上奥に行ってしまったら、吐いてしまうぞ。

 でも、無理に止めさせたら、拘束魔法で動けなくされてしまう。


 うーん、なんとかしないと……。



「うごっっぷ、げほげほ」



 今、危なかった! 急に奥に来やがった! こうなったら、俺も同じ事をしてやる。やられたら、俺の気持ちを理解してくれるかもしれないし、それで止めてくれるかもしれない。

 

 俺もミリちゃんの口元に人差し指を運んだ。



「ぱくっ」

「いて!」



 ミリちゃんは、まるでブラックバスのように俺の指を噛みついて来た。そして、噛んだ状態で離さない。それどころか満更でもない表情だ。


 起きているよな? 



「うっぷぅ」



 ――こうしてミリちゃんのよく分からない行動で、何度も吐きそうになりながらも耐えて、ようやく朝がやって……来なかった。当然か……。

 

 深夜に苦しくなって、俺は目を覚ました。



「く、苦しい、ミリちゃんちょっと」

「お姉ちゃん……」

「誰がお姉ちゃんだ!?」



 ミリちゃんにもの凄い力で抱きしめられていた。

 俺はミリちゃんを起こさないように、腕をゆっくり解いて、一旦寝袋から脱出した。


 ふぅ、本当に参った……。すっかり眠気が覚めてしまったな。

 

 俺は立ち上がると、ミルネとアルシアが仲のいい姉妹みたいに寝ているのが見えてた。

 うーん、ほのぼのとした感じで、とても癒される……。

 はぁ、こっちが良かったな……ははは。まだ口の中が変な感じだ。



 この恰好だと寒いからジャージを上から羽織り、道の方まで歩いた。

 この辺りは空気が澄んで気持ち良かったから、大きく深呼吸をしてみた。



「なんか気持ちいいなぁ」



 この辺りの草木も、魔力があるみたいで、青白く発光して周囲を見渡せた。そして、俺はネスタリア街とは反対の方向のすこし離れた所から、ある光の存在に気付いた。


 あの光はなんだろう? 


 建物からの光に見えるなぁ。明るい時は気づかなかったけど、お店でもやっているのかな? それともただの家か?

 

 ちょっと散歩がてらに行ってみようかな。

 まぁ、深夜にこんな格好の美少女が、出歩くのは危険かもしれないが。




 俺は光の方にしばらく歩くと、その光はやっぱり建物で、この道沿いにありそうだ。

 

 結局、15分ぐらいは歩いただろう。光は見えても、実際歩いたら意外に遠かった。


 そこは飲食店らしき建物で、その前は無駄に広いスペースがあった。

 

 こんな深夜でも営業してるということはバーかな? 

 それだったらいいなぁ。金なら魔力で支払えばなんとかなるはず。

 いや、俺には無理か。最悪水でも飲めたらいいんだけど。

 

 

 こんな格好だから、門前払いになるかもしれないけど、入るだけ入ってみるか……。


お読み頂き、ありがとうございます。


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