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第43話 金が無い

 森を抜けてネスタリア街に着いた頃には、雨は止んでいた。

 

 ここまで特に何事も無く……いや、時々ミリちゃんが途中で居なくなったりしたわ。

 うーん、いきなり居なくなるとかやめて欲しいんだが……。

 


 俺たちは、前回と同じく素材屋のパンダライフに行き、物資を受け取ることにした。 

 今回も前にミルネと時に対応してくれた、優しそうな顔のおばさんが店番をしていた。



「あーら、お嬢ちゃん達久しぶりねー、こんな可愛い恰好しちゃって。あーら、アルシアちゃんにミリちゃんもいるのー、みんな可愛いからおばさんギュッとしたいわ」


「それは十分間に合っているので結構です。それより、討伐隊ラビットちゃんの物資を受け取りに来ました」


「あーら、それがねー、今回に限って色々と物資が揃ってないのよ。ごめんなさいね」



 またダンロッパの仕業か? 別にもう驚かないけど、本当にしょうもない奴だと思う。



「とりあえず、あるだけ持ってくるわね」



 おばさんはそう言うと、奥の部屋に入り、物資を取に行ってくれた。そして、戻ってくるとカウンターの上に物資を並べてくれた。


 お土産ぐらいのサイズの箱が3つと、寝袋だと思うがそれが3つであった。

 俺からすれば、寝袋が3つというのが気になるが、それ以外は何が足りないとか分からない。ミルネもミリちゃんも同じだろう。

 

 しかし、アルシアだけは違った。



「えっ! これだけしかないの? 魔力弾が6個だけで、戦闘用の素材も緊急避難用のジュレ弾も無いなんてありえないわ!」


「ごめんなさいね。なぜか今回に限って調達が出来なかったのよ」



 ジュレ弾? 餌巻いて逃げるのに使うのか? よく分からないけど、アルシアの反応からすると絶望的に足りてないようだな。

 しかし、無い物は無いからここで、このおばさんに嘆いてもしょうがないだろう。


 アルシアは不満だらけだと思うが、俺は予想通りという感じだ。とりあえず、俺達は今ある物資だけをもらって店を出た。



「アルシア、この3つの箱の中身は何が入っているの?」

「ジュレを圧縮した食料が3日分。全然足りないわ」

「何とかならないよ……な?」

「普通、討伐隊は途中で追加の依頼がよく入るから、2週間から一か月は活動するの。寝袋も一つ足りないし……どうしょうかしら」



 アルシアは困ってそうだな。今までダンロッパのチームに居たわけだから、余計に今回の物資は少なく感じるのかもしれない。



「じゃあ、この街で少しでも調達するのはどうかな? ちなみに俺は金が無いが」

「マユリン、あたしも無いよ」

「私は準備で食料をいっぱい買ったから、そんなに持ってないわ」



 当然、俺とミルネは金が無い。アルシアも多少持っていたみたいだけど、俺達の為に色んな物資を調達してくれたみたいで今は無い。

 残るはSランクのミリちゃんだ。Sランクだったら絶対持っているだろう。 



「ミリはお金に興味無い」

「なんでだよ!?」



 人の事言える立場で無いけど、アルシア以外は終わってるな。

 ミリちゃんなんかSランクだし、お金持ってそうなんだけど、本人が興味無いなら仕方がないか。っておい!



「別に金が無くても、金が魔力みたいなものだから、直接魔力で支払えばいいか」

「それは駄目よ。討伐隊はいつでも戦える状態にしないと。緊急の依頼も来るし、突然襲われる事もあるんだから」


「そうなのか」



 確かに、討伐隊は魔力で戦うわけだから、もっともか。ここは専門家の言う事を素直に聞いておこう。



「でも私が持っているお金で、出来るだけ調達しましょう」

「うん、すみません」



 というか、アルシア以外は一文無しかよ! はぁ、みんなの荷物は何が入っているだろうな? 

 なんかアルシア以外は、討伐隊として役に立つものは持って来ていないような気がする。

 特にミリちゃんなんて絶対関係の無い物しか持って来てないだろう。

 

 俺の荷物は一応、サバイバルグッズだから役に立つかもしれない。だがしかし、ここの世界の物ではないから、出来るならあんまり使用しない方がいいかもしれない。




 こうして俺達は街を散策して、アルシアは保存用のジュレを買って不足分を補った。その後も他に役に立ちそうな物を探してみたが、予算の関係もあってあまり手に入れられなかった。



 そして気づけば、辺りは大分暗くなってきたので、宿に泊まりたいところだが、宿代が無いから、この街出て近くの林で、寝袋で夜を過ごす事にした。


 位置的には、ここに来る時に通った森ではなく、街を出る事になる。ここから先は俺にとっては未知な場所になるわけだ。


 街を出ると、北海道のような広い平野が広がり、道沿いに小さい林や畑があった。 

 俺達はその道を歩き、街から少しだけ離れた道沿いの林で夕食をとり、夜を明かす事にした。


 街に近い場所だから魔物もいないだろうという話だけど、本当にこんな所で寝るのか……。

 でも問題は寝袋が一つ足りないんだよなぁ。


 俺は寝袋を一つ取り出し広げてみた。

 すると思っていた以上にサイズが大きく、体格の大きい男でも十分だった。



「あ、これなら2人でもいけそうだな。ミルネ、一緒に寝るか?」

「ほう、マユリンの方から誘ってくるかー、ひっひっひー」



 いや、消去法なんだけどね。アルシアは少し大人っぽい雰囲気があるから俺が緊張しそうだし。

 ミリちゃんは何をされるか分からない。だから、ミルネの方がまだ安心だ。それにもう何回も寝ているしね。



「そういうことで、残りはミリちゃんとアルシアで使ってくれ」

「分かったわ」



 今思えば、俺以外の人が一緒に寝るという選択肢もあったな。まぁ、いいか。

 次そうしよう。

 

 アルシアはミリちゃんに寝袋を渡すと、突然ミリちゃんは魔法で寝袋を燃やした。



「へ?」



 俺は急に目の前に起きた状況に理解が追い付かず、唖然としてしまった。

 人間は突然衝撃的なことが起こると、何も反応せず、ただ見つめて立ち尽くすことがある。今回俺に起きたのはそれだ。

 

 そして、我に返った俺は……



「なんで燃やしとんねん!!!」



 と、とっさに出る関西弁でツッコミを入れ、夜の林と平野に響き渡った。



「真由、ミリちゃん、燃やしたり、大きな声でツッコミはやめてね。一応、どこに敵が潜んでるか分からないから」



 アルシアに怒られた。でも、あれ誰でもツッコミ入れるだろ。

お読み頂き、ありがとうございます。


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