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第42話 可愛い傘をさす隊長

 俺達は、まず最初にネスタリア街にある『素材屋パンダライフ』で物資を取に行くため、ネスタリア街に通じる森の中の道を進んだ。

 この前、ミルネと行った所と同じ場所だ。

 

 俺は一応隊長だから、一番先頭を歩いているんだが、左後ろからミルネと、右後ろからミリちゃんが俺を不思議そうに見ていた。

 あんまり振り返ると絡まれそうなので、じっくり見たわけじゃないが。


 多分、傘を見ているんだろう。この世界に傘なんて無いんだろうな。

 

 すると、ミリちゃんがすぐ横まで来て、ヌイグルミのポンタを抱きながら、傘の下から俺を覗きこむように見てきた。

 

 俺は絡まれたくないので、反射的に傘を傾けてミリちゃんの視界を遮ったが、ミリちゃんはさらに頭を下げて、ジト目で俺を見ていた。


 何だよ、そのジト目が何されるか分からないという意味で怖えよ。


 すると、今度は反対側からミルネが俺の方を覗き込んできた。


 ヤバいな。そろそろこの2人は何かしてきそうだな。

 俺は絡まれたくないので、しばらく2人の視線を浴びながら、特にこれといったこともせず、ただ歩き続けた。


 そして、この状況に最初に行動を起こしたのはミルネだった。



「マユリン、何それ!?」

「傘ですけど.....」

「真由ちゃん、ミリに貸して」

「あたしにも貸して!」

「お、おい!」



 ついにこの2人は動き出し、俺の傘の取り合いになった。まぁ、予想はしていたけど.....。



「おい、2人とも落ち着け! 濡れるだろ!」



 この2人の目的は分かる。魔法で棒か何かを使って、傘にデザインするつもりだろう。

 しかし、傘は難しいような気がするが……。


 しばらくすると、突然ミリちゃんは何も言わず、道から外れて茂みの中に入って行った。



「おい、いきなり何処に行くね~ん!」

「ミリちゃん、あんまり遠くに行かないでね」



 アルシアが注意したけど、ミリちゃんは何かに夢中になると周りが見えなくなるタイプだろう。



「マユリン、これ難しいよ」



 どうやらミルネは、傘のデザインのイメージが出来ないようで諦めたみたいだ。

 という事は、ミリちゃんはイメージが出来て、傘になる素材を探しに行ったのか?


 結局俺たちは、いつ戻ってくるか分からないミリちゃんを雨が降るの中、余儀なく待たされた。

 



 しばらくすると、茂みの奥からミリちゃんが傘を差して現れた。

 傘はピンク色で、しっかりと傘を再現していた。

 

 そのせいか、ミリちゃんは得意げな表情で俺の所に寄って来た。そして、何かを訴えるような目で俺の方を見た。

 

 もしかして、褒めて欲しいのかなぁ。



「ミリちゃん、上手く出来ているよ」


 

 ミリちゃんは少し照れてたように見えた。そして、俺の服の袖を引っ張りどこかに連れて行こうとした。



「お、おい、また何処に行くんだ!?」

「いいから来て」



 まぁ、何処に行くと言う程でも無かった。すぐ道沿いの大きな木の下だ。当然、俺はミリちゃんが何をしたいのか、全く分からなかった。


 すると、突然ミリちゃんは魔動拳で、その木を殴った。



「えぇぇぇ!! なに!?」



 ミリちゃんが殴った衝撃で、木の枝や葉に着いた水滴が、一挙に落ちてきて、ゲリラ豪雨のような状態になった。



「真由ちゃん、楽しい」

「お前は、子どもにしか見えない森の主か!!」



 どうやら、傘に落ちる水滴音に興味を持ったみたいだ。

 

 

「ミリちゃんいいなぁ、あたしはデザイン出来なかったよ……」



 うーん、ミルネが残念そうな顔しているな。そんなに傘がいいのか? しょうがない。



「ほらミルネ、俺の傘の中に入れよ」

「いいの!? マユリン!!」

「いいよ、相合傘というやつだ」

「やったー!!」

「おい! そんなにくっつくなよ!」



 ただの相合傘にこんなに喜ぶとは思わなかった。

 その理由が傘なのか? それとも単に俺とくっつくのが良かったのかは分からないけど、ただもう一人がその光景を見て、ジト目で俺を見つめてるやつがいた。



「真由ちゃん、ミリも」

「お、おい! 3人は流石に無理だろう!」



 ミリちゃんは自分の傘を閉じて、俺の傘の中に強引に入って来た。そのせいで、傘が左右に揺れ、俺を巻き込んで、ミルネVSミリちゃんという構図になった。



「2人とも落ち着け! みんなびしょ濡れになるぞ!」

「真由ちゃん、大丈夫」

「え?」



 そう言うとミリちゃんは、雨を避ける魔法を広域に展開した。そのお蔭で、俺の半径5メートルぐらいに透明のシールドみたいなものが現れ、雨が弾かれた。



「真由ちゃん、これでびしょ濡れにならない」

「いや、傘いらねーだろ!!」

「マユリン良かったね」



 結局こうなるのか。

 この傘の下りにアルシアだけは、あまり入って来なかったが、どう思ってるんだろう。

 

 俺は、後ろを振り返り、後方を歩くアルシアを見た。

 うーん、アルシアの表情はにこにこしていたが、顔の立て線も同時に見えてきそうだ。


 アルシアは討伐隊の経験者だから、こんなアホみたいな騒動に飽きれるだろうな。

 すまん、こんな討伐隊で。





  

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