第40話 歓迎されない出陣式
今日は昨日結成された討伐隊『ラビットちゃん』の出陣式が行われるので、俺とミルネは準備をして、講堂に行き、講堂の別室でみんなと集合した。
しかし、討伐隊としてデビューする日なのに、あいにくの天気だ。ここに来てあんまり天気が悪い日が無かったから、誰か雨女がいるのかな。
さて、これから軽く打ち合わせをして式に参加するわけだが、ミルネとミリちゃんはいつも通りなんだがアルシアだけは少し浮かない表情をしていた。
「どうしたアルシア? 浮かない顔をして」
「うん、この出陣式はみんなから歓迎されないから……嫌な気持ちになるかもしれないと思って」
「またダンロッパの嫌がらせか? でも、それは想定内だから気にしなくていいんじゃない?」
「それもあるけど、Cランクが討伐隊長になることを快く思わない人も多いはずだから」
まぁ、アルシアの言いたい事は分かる。諸事情を知らない人からすれば、皆が憧れる討伐隊に参加出来るだけでなく、討伐隊長にCランクの俺が任命されたわけだから、妬まれても可笑しくないだろう。
どこの世界にも妬みはあるから、仕方がないのかもしれない。
カーン
やっぱり、呼び出し音はピンポンパンポーンがいいな。
(ただ今から、Sランクのミリちゃんが参加される討伐隊『ラビットちゃん』の出陣式を行いますので、講堂に集まって下さい。一応、討伐隊長はCランクの真由です)
「おい! 一応ってなんだよ!」
「マユリン可愛いから、隊長に見えないんだよ」
「い、いやそれフォローになって無いから。それより、みんなこのままの格好で行くのか?」
俺とミリちゃんは、とても可愛いらしいゴスロリの格好で、ミルネとアルシアは普段通りの学制服だ。本当にこれから討伐しに行くのか? というような格好なんだが……。
「マユリン、制服に戻そうとしても駄目だよ」
「真由ちゃん、駄目」
「い、いやそういう意味で言ったんじゃ……」
どうやら、討伐隊だからと言って特別な格好をするわけではないようだ。
もっと、格好いい鎧や、魔法使いらしい格好をすると思っていたのに。
そして、しばらくすると式の準備が整ったみたいで、スタンバイするようにと声がかかった。
一旦、俺達は裏口から外に出て、入口の方に向かった。
いよいよこの扉を開ければ、入場することになるわけだが、まだ中からへーラス先生の話し声が聞こえるからもう少し待ちそうだ。
相変わらず「へぇーへぇー」言ってるな。
しばらくすると、少し扉が開き、中から「そろそろ入場しますので、いいですか?」という声が聞こえた。俺は「はい」とだけ返事をした。
「よし、準備はいい?」
俺はミルネ、アルシア、ミリちゃんの方を見てそう言うと、みんな軽くうなずき、そして扉が開いた。
予想通り、扉が開いた瞬間から、ブーイングと多方面から野次が飛んで来た。
野次の内容は個別にはっきりと分かれていた。
まず、ミルネには無関心で、アルシアには「なぜ辞めたの? 戻って来て!」と惜しむ声が多く、ミリちゃんは「可愛い」という声が多かった。
うーん、これだけだったら野次とは言えないが、俺に対する野次は凄く酷いものだった。その中でも一番多かったのは「辞退しろ!! Cランクのくせに! 恥を知れ!」で、Cランクが隊長になった不満の表れかもしれない。
あとは「死ね!!」とか「魔物に食われろ!」などのただの悪口だった。まぁ、どこの世界にもいるんだな。
こんな状況の中、誰も歓迎していない出陣式が、へーラス先生の司会の元で進行していった。
「へぇー、討伐隊『ラビットちゃん』は、へぇー、あのSランクのミリさんが参加されております。へぇー、今後はミリさんを中心に討伐隊の編成が、へぇー、期待されています」
へーラス先生がそう言うと講堂内は拍手と声援が巻き起こった。明らかにミリちゃんだけ特別扱いだ。
しかし、当のミリちゃんは不機嫌そうに「ミリさんじゃなくてミリちゃん」とだけ言った。
やはりそこは譲れないみたいだ。
それにしても、アルシアもダンロッパの討伐隊を辞めて、俺の討伐隊に入ったことで恨みを買ってなければいいが……。
「へぇー、それでは隊長でCランクの真由さんに挨拶をお願いします」
へーラス先生が、俺の紹介や経緯などの説明も無しに、俺にスピーチを求めてきた。
すると、これまでに無いブーイングと野次で講堂内が騒がしくなり、その様子を見ながら、ダンロッパとモリモンはSランク専用の席から、嘲笑しているのが見えた。
クソー、ダンロッパめ……。
俺は今にも物が飛んできそうな雰囲気の中、スピーチ台の方に向かった。
しかし、ブーイングと野次は一向に収まる気配がない。しかも、先生方は注意をしない。
ここは強引でもでかい声を出して、スピーチをするしかない。もちろん、一言挨拶してさっさと退場してもいいんだが、少し腹が立つから俺のスピーチでダンロッパに一泡吹かせてやろうと思う。
ダンロッパからすれば、ミリちゃんから怒りを買うことなく、学園を追放したつもりだろう。
しかし! ダンロッパは大きなミスを犯している!
このミスを利用すれば、このブーイングの嵐をダンロッパに妨害されず、声援に変えることが出来るのだ。
しかもその声援はダンロッパにも送られるが、それは不愉快なものでしかない。
ひっひっひー。
俺はスピーチ台にあるマイクらしき物に向かって、大声で喋った。
「私は!!! この度……って、あれっ? スイッチ入ってない?」
俺は大声で喋ったのだが、全く拡声されなかった。そのせいで、講堂内からブーイングから笑い声に変わっていった。
なんだよこれ? マイクじゃないのか? これも魔法を使うのか?
すると、アルシアが指をマイクの方に指しながら「魔力、魔力」と俺に指示を出してくれた。
ううぅ……。
せっかく、いい感じにいこうと思ったのに。でも、笑いが起こったのは好都合だ。
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