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第37話 割引出来ぬ高い代償

 俺とミルネはアルシアと別れ、S,Aランクの寮館の最上階にある、ミリちゃんの部屋の前までやって来た。

 正直ここに来ると、また理不尽な目に遭いそうで気は乗らないのだが仕方がない。



「うーん、何か変に緊張するな……」

「マユリンなら大丈夫だよ」



 俺はドアの前に立ち、ノックをしようとした瞬間!



 バァーン!! ゴーン!(俺のおでこにドアがぶつかる音)



「あいたー!!」



 ドン!!(ドアに吹っ飛ばされ、床に叩きつけられる音)



「大丈夫!? マユリン」



 俺がドアの前にいるのを知ってか知らずか、ミリちゃんが爆発したような勢いでドアを開けた。



「痛たたた……。ふーう、ドアはもっと静かに開けなさい!!」



 俺の目の前に、ドアノブを握ったままのミリちゃんがいた。またいつものようにジトっとした目で俺を見ていた。



「真由ちゃん、どうしたの? ミリに用事?」



 いやー、まずは倒れてる俺に気を使ってくれ……まぁ、今更そんなことを求めても仕方がないが。



「ちょっとミリちゃんにお願いがあって来たんだけど」

「ミリにお願い?」



 俺はダンロッパとのいざこざは話さず、単純に討伐隊の編成と隊長に任命された件を話した。

 

 ダンロッパの件は、ミリちゃんが経緯を聞いてきたら、答えればいいと思ったからだ。多分、そういう話は興味無さそうだし。



「真由ちゃん、それは無理」

「そうか。邪魔したな。おやすみ」

「マユリン!」



 何されるか分からないから、あんまり関わりたくないんだよね。それに即答だから、これ以上誘ってもOKしてくれないと思うぞ。

 

 でも、それじゃあミルネが納得しないから、理由だけでみ聞いておくか。

 


「ミリちゃん、もし理由があるなら教えてくれるかな? 俺が隊長だからか?」

「違う。ミリはもう戦わない。だから、討伐隊には入らない」



 うーん、答えになっているのかよく分からないが「もう戦わない」ということは、過去に戦って嫌な事でもあったんだろう。

 もしかしてトラウマがあるのかもしれない。

 

 これ以上、聞くのは辞めといた方がいいかもしれないな。ここはやっぱり撤収した方が良さそうだ。



「何か理由がありそうだから、諦めて帰ろう」 

「ミリちゃん!! メンバーになってくれたら!! 寝る時マユリン抱き放題だよ!!」

「!!!」

「お前、いきなり何言い出すねーん!!」



 俺は、突然のミルネの不純な特典内容の提案に思わず、関西弁で突っ込んでしまった。一体何を考えているんだミルネは!

 

 でも、ミリちゃん少し悩んでいるように見えるぞ! トラウマがあるんじゃなかったのか!?



「マユリン抱いて寝ると、暖かくて柔らくて、モフモフだよ!!」

「こら! 抱き付くな!!」

「モフモフ……いや、でも……」



 あれ? 内容はともかく、このまま押したら行けそうな気がするぞ。不本意だが。



「マユリン、あともうひと押しだよ! じゃあ、これならどうかな?」

「待て待て待て!!」



 確かにもうひと押しだけど、これ以上高い代償を払いたくない!!

 何か無いか? 俺とは関係の無い物で、こいつが喜びそうな物……。

 

 喜びそうな物…….物?

 そうだ! 物を上げればいいんだ!!

 

 確か、無垢朗が俺にくれた、兎のヌイグルミあったよな! 確か名前はポンタ。

 あれをプレゼントしたら、喜びそうな気がする。無垢朗もミリちゃんみたいな美少女に持ってもらえたら、喜ぶだろうし。



「2人とも、ちょっと待ってて! いい物があるから!」 



 俺は急いで部屋に取りに戻り、ヌイグルミを持って再びミリちゃんの部屋に着いた。そして、ヌイグルミを俺の身体の後ろに隠して、ミリちゃんに近づいた。



「はぁ、はぁ、お待たせ。メンバーになってくれたら、この兎のヌイグルミ『ポンタ』をプレゼントするよ」



 俺はそう言って、ミリちゃんの前にヌイグルミを見せた。すると、目の色を変えて、興味津々に両手でヌイグルミに向かって、手を差し伸べた。



「こ、これは……」



 ミリちゃんはヌイグルミを手にして、言葉が出ないのか、固まっているような感じだった。

 この世界にこんなヌイグルミは無さそうだし、あったとしてもこんなにきめ細かく作られていて、モフモフではないだろう。

 


「マユリン! 何それ!? 可愛い!!」



 うーん、もう一人興味津々なのがいたな。



「さて、ミリちゃんどうする?」

「欲しい……でも……欲しい」

「どうしても無理なら、そのヌイグルミは返してもらうけど」

「駄目!! 分かった。なる」



 俺はヌイグルミを取り戻そうと素振りをした瞬間、ミリちゃんはヌイグルミを抱きしめ、メンバーになると言った。

 

 この素振りは俺の煽りだったんだが、上手くいったようだ。でも、例え断ったとしても、ヌイグルミは上げるつもりだったけどね。



「マユリン! やったよ!!」

「ああ、これはミルネの功績だな」

「えへへ、そんなことないよ」



 なんかスゲー喜んでるな。



「じゃあミリちゃん、これからよろしくな」

「うん」



 そういうとミリちゃんはポンタを抱いて、部屋の中に入って行った。余程気に入ったんだろう、それに良く似合っている。これで俺も拉致られずに済めばいいんだが。

 

 それにしても、最初あんなヌイグルミが役に立つなんて、考えもしなかったけど……役に立ったな。ありがとう無垢朗。

  

 でも、なんだかんだ言って、結構凄い討伐隊が編成出来たんじゃないか。Sランクのミリちゃん、経験者で次期Sランク候補のアルシア、伸び代が期待できる急上昇中のBランクのミルネ、可愛いさだけなら最強! Cランクの隊長、俺……。



 うーん、隊長の俺が一番しょぼいような気がする……。


 頑張れ俺!

お読み頂き、ありがとうございます。


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