第35話 討伐隊隊長に任命!?
なぜか俺だけを放送で呼び出されたので、すぐに応接室へ向かった。すると、応接室の前には、ミルネも放送を聞いて駆けつけて来たみたいだ。
「マユリン……」
「大丈夫、話聞くだけだから」
ミルネは不安そうに、俺のことを心配してくれてるようだ。
またダンロッパの罠かもしれないが、俺にはこの服、ミリちゃんの加護がある。せっかく高い代償を払っているんだから、役に立ってもらおう。
「じゃあ、部屋に入るよ」
「うん.....。終わるまで待ってる」
俺は応接室に入った。
「失礼します。Cランクの真由です」
部屋の中に居たのは、前回の討伐依頼をしてきた40代ぐらいの女性だった。
「おはようございます、真由さん。早速ですが、ダンロッパさんからあなたに討伐隊を結成し、討伐隊隊長に任命するようにと辞令を受けました」
「と、討伐隊隊長だと!?」
討伐隊なんてここの世界では憧れそのものなのに、その隊長に俺がなるだと!?
まぁ、どうせダンロッパの事だから、何か企みはあると思うが。
「私も驚きました。Cランクが隊長になるなんて、この学園始まって以来初めてですからね」
「なぜ、私が……」
「この前の決闘を評価されたみたいですよ」
「決闘ねぇ……」
ダンロッパは一体何を考えているんだ?
「2日後に魔物を討伐する依頼を受けてもらいますので、それまでに討伐隊を結成して欲しいのことです」
「2日後だと!? いくらなんでも急過ぎるだろう!」
明後日には討伐隊として出撃するという事だろう。
つまり、今日と明日でメンバーを集めないといけない。そもそも、Cランクの俺を隊長としてメンバーになりたいやつなんているのか?
「すみません、急な依頼らしくて……。詳細は明日の夕方にここで教えますので、真由さんは出来る限りメンバーを集めて下さい」
「はぁ……分かりました」
この人も困惑気味みたいだし、そもそもこんな指示をしてきたのはダンロッパだし、ここで不満を言っても仕方がない。
俺は部屋を出て、廊下で待っているミルネに今回の件を全て話した。
するとミルネは青ざめた表情でこう言った。
「マユリン.....それは……死刑にするって言っているようなものだよ」
「そうなのか? 魔物なら前倒したし、なんとかならないかな?」
「マユリンが倒したのは、魔物管理局で管理されている魔物。野生の魔物はもっと強いよ。だからチームで連携して倒すのに……」
ミルネは言葉を詰まらせ、視線を落とした。けど俺には何を言いたかったのかは予想がつく。
Cランクの俺ではメンバーなんか集まらない。
ミルネは顔を上げ、俺の方を真剣な眼差しで話し始めた。
「あたしなんかいても、大した戦力にならないかもしれないけど……あたしも行くよ」
「いいのか? い、いやでも、ミルネをこんな危険な事に巻き込むのは……」
「先に巻き込んだのはあたしだよ」
その目を見れば、ミルネの決意は固い事は分かる。俺もミルネが協力してくれるなら正直助かる。
それに俺の場合、入学前に言っていた学費と生活補助の前提として、討伐隊の依頼を受けなければならないから、断る事は出来ない。
くそ―! 経済的にダメージを与える目的でもあるのか!?
「ありがとう、ミルネ正直助かるよ」
そう俺が言うと、ミルネは首をゆっくり横に振った。
「お礼を言うのはあたしの方だよ。ありがとう、マユリン。それにマユリンの討伐隊なら、喜んでメンバーになりたいよ」
「ミルネ……よし! やろう! どうせやるなら依頼を成功させて、見返してやろうぜ!」
「おーう!」
状況的に見れば、危険な所に放り出されるわけだから、ピンチである事には間違いないが、依頼を成功させ、討伐隊として確固たる地位を築けば、これはチャンスでもある。
この世界では討伐隊の地位は高いからなぁ。
「そうと決まれば、明日までにメンバーを増やさないとな。アルシアはなってくれないかな?」
「うーん、アル姉はもうダンロッパさんの『ロイヤルクラウン』に所属しているから、無理だと思う」
「うぅぅ、それは残念だ……」
まぁ、それ以前にこんな泥船に乗ってくれるかという疑問があるけど。
「とりあえず、募集活動でもしようか?」
「そうだね。もしかしたらマユリンの可愛さに来てくれる子がいるかもしれないしね」
「そういう不純な動機はお断り!」
俺とミルネは、授業の日程が書いてある掲示板に向かった。そして、休み時間に人が集まってきたところで、募集を呼びかけた。
しかし、結果は散々で、笑われるだけで誰一人として話すら聞いてもらえなかった。それどころか、Aランクの人に「あなた達、討伐隊を愚弄しているんですか!」と怒られる始末であった。
どうやら俺が討伐隊の隊長に任命されたことを知らされていないようだ。もし、みんなが知っていたら、募集も少しは容易になっていたはずなのに、これもダンロッパの嫌がらせなのか?
結局、その日は募集活動も限定的にしか出来ず、一人も集まらないまま夜になってしまい、余儀なく俺とミルネは寮の部屋に戻ることになってしまった。
「マユリン駄目だったね」
「うん、予想はしていたけど、いざ現実になると悲しいな……」
「まだ、明日もあるし、頑張ろうよ」
「そうだな、今度は客引きみたいにやってみようかな」
コンコン
「うん、誰だ?」
突然部屋をノックする者が現れた。一体誰だろう? 少なくともミリちゃんではない。ミリちゃんならいきなりドアを開けるからな。
「マユリン、誰か来たよ」
「うん、とりあえず出てみるか」
俺はドアを開けた。するとそこに居たのは……。
「こんばんは、真由」
アルシアだった。
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