第34話 ゴスロリは最強のお守り!?
女の子達に襲われる中、両手で顔と胸を守るだけで精一杯だった。しかし、そんな時に注意をしてくれた女の子が現れた。
俺はゆっくり手を下して、彼女の方を見上げた。
「真由大丈夫? ほら、つかまって」
心配そうに手を差し伸べてくれたのは、アルシアだった。
アルシアのお蔭で、他の女の子達も我に返ったのか、一言謝ってその場を去ってくれた。
「ありがとう。助かったよ」
「あの子たちには後でちゃんと言い聞かせておくわ」
アルシアが来てくれなかったら、ちょっとした事件なってもおかしくなかったぞ。
この真由が本物の女の子だったら、きっと心に深い傷を負って泣いていただろう。
「それにしても真由、凄く可愛くなったね。ミリちゃんに気に入られたのね」
「そうだよ! これのせいで、酷い目にあった! やっぱり制服に戻そうかな」
「そんな恐ろしい事したら駄目よ!」
「また恐ろしい事!?」
うぅぅ、アルシアにそれを言われると、俺の妄想が現実味を増していくぞ、おい。
ミリちゃんとは一体何者なんだよ!
「真由、服が汚れているわ」
アルシアは俺の服を魔法のクリーンで、汚れを取った上に、髪飾りの位置も手直ししてくれた。
「結局俺はこの服で、生活しないといけないのか……はぁ」
「でもね、この服がダンロッパさんから真由を守ってくれるはずよ」
「えっ!?」
「流石にミリちゃんのお気に入りには手が出せないと思うの」
「うーん、それは素直に喜んでいいのかな……」
あのダンロッパでさえ、手が出せないミリちゃんとは……。
そんなよく分からん性格の子に気に入られるのも、それはそれで厄介だと思うのだが。しかし、それでもダンロッパが素直に諦めるとは思えない。
それにしても、アルシアはダンロッパをさん付けするんだな。あんなクソ野郎でも、Sランクには敬意を払っているのか?
まぁ、単にクソ野郎呼ばわりしていたら、誰かに聞かれるリスクがあるからかもしれないが。
「あんまり、ゆっくりしていたら授業に遅れるわ」
「ああ、そうだった」
「私が教室まで一緒に行ってあげるね」
「あ、ありがとう」
――そして、ちょうどその頃、場面変わって、まだ治療中のダンロッパがモリモンと部屋で会話をしていた。
「ダンロッパさん! 大変です! 真由の格好がミリみたいなっていまして、どうやらミリに気に入られたようで……」
「なんだとー!!」
ダンロッパはベッドから起き上がり、悔しがるように壁を叩いた。
「ミリのやつ、手を出すな……とでも言うのか……クソ!! あの優秀なアルシアも討伐隊を辞めるとほざくし! クソ!! 真由め! クソー!」
「落ち着いて下さい、ダンロッパさん! 身体に障ります」
「うるさい! こうなったら……」
「だ、駄目ですよ! ミリを敵にまわすようなことは!」
「ふん、分かってる! ミリの恐ろしさは!」
「では、何をしようと?」
ダンロッパは深く深呼吸をして、冷静さを取り戻した。
「こうなったら、学園を追い出してやるか。それからゆっくり始末してやる」
「追放は不味いですよ。ミリが怒ると思います」
「いや、大丈夫だ。私をここまで追い詰めたんだ。ちゃんと評価するだけだよ」
「え? 評価ですか?」
「ふっふっふ、そうだよモリモン君」
ダンロッパは不敵な笑みを浮かべた。
――――場面が変わって、ここはミリの部屋。
俺は突然やって来たミリちゃんに拉致られ、ミリちゃんの部屋のベッドの上に座らされている。
今度はネックレスをプレゼントしてくれるみたいだ。しかし、なかなかデザインが決まらないみたいで、俺に取り付けてはほっぺの下を指で押さえて首をかしげ、またデザインし直すという一連の工程を繰り返すのだ。
ただミリちゃんがネックレスを俺に付けようとする時、顔を近づけ、首の後ろに手を回す時は、少し緊張してしまう。
そして、ようやく納得したのか、俺を見ながらうなずいた。
しかし、ミリちゃんがこのまま黙って返してくれるわけが無く、デレた顔で俺に飛びついて、押し倒され、もふもふされるのであった。
そう、ミリちゃんが満足するまで、俺に出来ることは何もない。だって、抵抗したら魔法で拘束されるのがオチだからな。
それに、ミルネやアルシアがミリちゃんに逆らうと「恐ろしい事になる」というのも、脳裏をよぎる。
そして、ようやく俺は解放されて、部屋の前まで戻った。
なんか変な緊張感で疲れる。もう夜も遅いし、ミルネは爆睡しているかな? 俺はゆっくりとドアを開け、部屋に入った。
ん? なんか少し肌寒いぞ。
うーん、外の方はそんなに寒くないのになぜだろう……。
しかし! 答えは簡単! ミルネが寝る前になると魔法で部屋の温度を下げているからだ。
以前に俺が「もうこれで抱き合って寝なくても大丈夫だな」と言った時から、毎回室温を下げてるからな。
そんなに真由の抱き心地が良いのだろうか?
さてと、ミルネはもう寝てるようだし、俺も寝るとするか。俺はゴスロリからジャージに着替え、布団を捲った。
「げっ!!」
布団を捲ると、ミルネがベッドを独占するような形で、寒いのか少し震えながら寝ていた。
何やってんだ? これで風邪引いたらアホだな。
「しょうがないな……」
俺はミルネを少しだけ移動させ、俺が着ていたジャージの上着を、ミルネに着せようとした。
が! しかし!
突然、ミルネは目を覚まし、俺を抱きしめ、太ももで完全に俺を押さえた。所謂『太もも絞め』というやつだ。
「そんなことしなくても大丈夫だよ。マユリン」
「げっ、やめろ!」
そういうとミルネは俺を横に倒し、もふもふし始めた。
「マユリンって柔らかい……」
「お、おい、さっき散々やられたんだから! やめろ!」
「ふーん、ミリちゃんはよくて、あたしは駄目なんだ」
「どっちも駄目です!」
俺がそう言うと、なぜか部屋の温度が急激に下がり、冬ぐらいの気温になった。
「何をする! さ、さ、寒いぞ! おい!」
「ふっふっふー、お互い協力しないと凍死するよ。マユリン」
「これで凍死したら、馬鹿丸出しだろ!」
「そうならないように温め合おうね」
ミリちゃんが来るようになってから、ミルネの行動がエスカレートしているような気がする。ミリちゃんが俺を可愛くしたせいなのか?
でも、ミルネとミリちゃんが手を組んだら、俺ヤバい事になりそうだ。まぁ、ミルネもミリちゃんに一線を引いてるみたいだし、大丈夫か。
ふーう、寝よ。
――そして、それから数日経った頃。
俺はいつものように授業を受けに教室に向かっていた。ここ最近、ダンロッパ絡みの事件も無く、平和に過ごす事が……いや、ミリちゃんに理不尽に呼び出され、たまに拘束され、どんどん俺を可愛くする以外は……。
そして、いつものように授業を受けようと、教室に入った時に放送が入った。
(Cランクの真由さん、応接室に来てください)
なにー!? 今度は俺だけか!?
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