第33話 ゴスロリ真由は女子達の人気者!
俺はようやく部屋の前に着いたわけだが、ここに来るまで結構大変だった。
色んな女の子達に呼び止められ、みんな「かわいい、かわいい」と言ってくれた。
中にはゴスロリのデザインに興味を持った子がいて、あちこち触られたり、スカートもめくられた。
これは完全にセクハラだろ。
その時に女の子から聞いたんだが、ミリちゃんは人気が高いけど、Sランク故に近寄りがたい存在で、なかなか気軽に声も掛けられないらしい。
だから、ミリちゃんと同じような容姿をしているCランクの俺には何の遠慮もなく、やり放題というわけだ。
少しは遠慮しろ! おい!
とにかく明日は元の制服で行こう。少し歩いただけで、これでは身が持たないぞ。
しかし、もう一人興味深々な女の子がいるのを忘れてはいけない。
「マユリン!!! 何それー!! かわいい!!」
「待て! 待て!」
部屋に入るや否や、ミルネが飛びついて来た。予想はしていたけど。
「お願いマユリン! 一回だけもふもふさせて!」
「うわ!! やめろ! まだ承諾してないぞ! おい!」
「えへへへ、たまりませんな~」
駄目と言えば言う事を聞くミルネでも、我慢出来なかったようだ。
そんなに可愛い事になっているのか?
鏡が無いから確認出来ないけど、俺もどうなっているのか見てみたいな。
「な、なぁ、ミルネちょっと一回離れてくれ」
「えへへ、どうしたのマユリン?」
「自分がどんな状態なのか見たいんだけど、見る方法無いかな?」
「普通に魔法の『プロジェクション』を使えばいいじゃん」
なんだそれは?
やっぱり魔法じゃないと駄目か。諦めよう。
「あ! 分身の魔法を掛けてあげるよ!」
「分身?」
「最近習った魔法だよ。立体的になるから分かりやすいよ」
「それはいいね。是非、お願いします」
「じゃあ行くよ! マユリンの分身! アバタ―!」
ミルネは俺を全体的に指先で描くように動かした。しかし、どこにも分身はいなかった。失敗したか?
「マユリン、後ろに下がってみて」
「後ろにか」
俺は言われた通り後ろに下がった。すると、幽体離脱したように、俺の後ろ姿が目の前に現れた。というより、後姿の女の子が現れたという感じか。
「うおぉー! なんじゃこりゃ!? 誰この美少女は!?」
「マユリンだよ」
鏡があっても、あんまり後ろ姿を見る機会が無かったから、自分だという認識があまり無かった。
しかし、こうして見ると、このスカートも短いな……。
「マユリン、前も見てよ」
「うん」
そう言えば、こっちに来てから自分の顔を見ることが無かったよな。だから、真由の顔を見るのは久しぶりだな。
俺は前に回って、俺の分身である真由の顔を見た。
「俺!!! かわえぇぇぇ!!」
「うん、マユリンは可愛いよ」
思わず叫んでしまったが、これはヤバいな。本当、ミリちゃんは俺を可愛くしてくれたんだな。
俺のツインテとあいみがくれたリボンが、この髪飾りとよく合ってる。
これなら他の女の子も騒ぐわけだ。
「マユリンかわいいなー! 羨まし過ぎるよ」
「流石にこれで授業に出るのは不味いから、制服に戻さないとな」
「駄目だよ、マユリン」
「え?」
ミルネの驚き方がなんか冷静だったので、俺もつい「え?」と言ってしまった。
ミルネなら「えーーー、そのままにしておこうよ」とか言いそうなのに。
「なんで? もし制服で行ったらどうなるの?」
「そんな恐ろしいこと考えたこと無いよ」
「恐ろしいだと……」
その「恐ろしい」という言葉を聞いた瞬間、俺の脳裏にジト目をしたミリちゃんの顔が浮かんだ。
そして、俺をぎちぎちに拘束してこう言うのだ「ミリがデザインした服はどうしたの?」って。
い、いやー、こ、これは確かに恐ろしいかもしれない。
「マユリンの制服は今日からこれだよ」
「うぅぅぅ……」
「いいなー、マユリン」
「うぅぅぅ……」
これから本当にこの恰好で過ごさないといけないのか!?
――そして、翌日……。
いよいよ、俺はこの恰好で授業に行かなくてはならない時が来てしまった。掲示板を見に行く所までは、ミルネと一緒に疾走し、何とか絡まれずに済んだ。
「マユリン、なんとかここまで来れたね」
「はぁ、はぁ.....疲れる。ありがとう。あとは教室までだから、もう大丈夫だと思う」
「じゃあ、あたしは行くよ。気を付けてね」
ここまでミルネと駆け足で来てしまったが、立ち止まると絡まれそうな雰囲気だったからな。とにかく男も女も視線が熱かった。
早く今日の授業を選んで、ここを立ち去った方がいいだろう。
今日は……お!! 魔法防御というのがあるぞ。これにしよう。ちなみに拘束魔法系の授業は無さそうだ。ミリちゃん対策で必要なんだが……。
おっと、決めたらさっさと離れないと。
「ねぇ、その服ミリちゃんがデザインしたんでしょう? ちょっと見せてくれないかな?」
俺の行動が一歩遅かったー!!
近くにいた女の子が話しかけてきた。
「そうだけど……今、ちょっと急いでるんで……」
俺は足早にこの場を去ろうとしたが、時すでに遅かった。
いつの間にか、俺の周りには女の子達に囲まれていて、最初の一人が話しかけた事によって、他の女子達も追随する形で一斉に絡んできた。
「うわー、なんかミリちゃんみたいでかわいいぃぃ」
「なんかこれ触り心地もいいよ」
「あ、本当だ」
「おい! やめろ!」
やばい、こんなに囲まれたら逃げられない。
「この子本当可愛いよね。良く似合ってる」
「もっと見せて!」
「お、おい、う、うわー!」
ドスーン!
どんどんヒートアップしていく女の子達によって、俺は押し倒された。
「や、やめろー!! 触るな! スカートをめくるな!」
もうこうなってしまうと、やりたい放題だ!! 彼女たちの瞳からハートマークが見えてきそうだ。
俺が男の身体だったら、この状況はハーレムなのかもしれない。しかし、こんな幼気な女の子の身体では何かが違う。
何かに取り憑かれたような彼女たちの行動は、どんどんエスカレートしていった。
「い、いや、そ、そこは、やめろ!!」
駄目だ! 収拾が付かなくなってきた。これはもうセクハラというより、強姦の域まで来ているぞ!
これはヤバいぞ! なんとかしないと!
と、その時、一人の女の子が現れた。
「あなた達何やっているの! 嫌がってるでしょう!」
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