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第32話 ミリちゃんの謎の世界観 その②

 結局、目を閉じる事しか出来なかったが、俺は果たして生きているのか?

 目を開けたら、あの世にいるって事はないよな?


 俺は恐る恐る目を開けた。

 すると目の前には、さっきと同じくミリちゃんが、俺のことをじろじろ見てはなぜかうなずく仕草をしている。何かをチェックしているように見えた。


 とりあえず、まだ俺は死んではいないようだ。

 しかも、どこも痛みなどは無いが、依然拘束された状態であった。

 

 ふぅー、良かった、良かった。

 しかし! 一つだけ大きく変わったことがある!


 それは制服だったはずの俺の格好が、ミリちゃんが着ているようなゴスロリに変わっていた。 

 そう、さっき指先を光らせていたあの魔法は、物体を別の物に変えれる『デザイン』という魔法だった。


 このゴスロリのデザインは複雑だから、きっとイメージに時間がかかる上に、魔力の消費量が多いせいで、溜めるのに時間がかかったんだろう。


 このミリちゃんは一体、俺をどうしたいんだ?


 ミリちゃんは、一通り確認が終わったのか、今度はベッドの上に並べていた素材を手に取り、魔法を掛けた。すると、木の端くれみたいなものが、髪飾りのようなリボンに変わった。


 今度はその髪飾りを両手に持って、膝立ちで俺の髪に付けようとしていた。ちょうど俺の目線の先にミリちゃんの胸があった。


 服で分かりにくいが大きくは無いとだけ言っておくか。


 髪か飾りをつけ終わったミリちゃんは、一旦座って、頬に指を指しながら、少し顔を傾けて俺の方をじっと見ていた。その仕草は割かし可愛かったが、まだ気になる所があるのか満足して無さそうだ。



 そして、また髪飾りを外してはデザインを変え、再び付けてるといったことが繰り返された。


 だんだん分かってきたが、ミリちゃんの目的は、よく女の子が着せ替え人形で遊んでいたあれを俺にしているのではないか?

  

 俺で遊ぶな! っと言いたい所だが、手足を完全に拘束させている状況で反抗なんて出来ない。

 ただひたすらされるがままに、終わるの待つしかなかった。


 

 なんだろう? この時間……。



 どれくらいの時間が過ぎただろう……ようやくミリちゃんは、納得したのかうなずいた。

 多分俺は相当可愛くなっているはずだ。



「もう満足してくれたか? そろそろこの拘束を……」

「えへへ」

「え?」

 


 あれ、今までジト目だったミリちゃんの顔が、だんだんとにやけてきた。いや、デレてきたと言った方がいいか。


 今までそんな表情はしてなかっただけに、ちょっと怖いんだが……。



「真由ちゃーん」

「あ、あのミリちゃん?」



 するとミリちゃんは、急に俺に抱きつき、頬ズリを始めた。その勢いでベッドの上に押し倒され、拘束されたままなので、何も抵抗が出来ず、ひたすらもふもふされた。



「お、お、おい、や、やん、うやぁめーろ!」

「えへへへ」



 その後もミリちゃんは、デレデレ顔で、無邪気に俺をもふもふし続けると、次は添い寝して、俺の髪をなでなでし始めた。


 てか、これいつまで続くんだよ! せめて、拘束を解いてくれないかな。でないと変な気持ちになりそうだ……。


 しかし、普通に声を掛けても、どうせ聞いてくれないだろうから、この謎の世界観に合わせて発言しないと駄目だろう。

 

 ちょっと恥ずかしいが、やるしかいない!



「ミリちゃん、真由はおなかすいた~」

「はっ」



 突然の俺の甘えた声に、ミリちゃんは驚いたようだ。これで食堂に行く流れになると思うから、この拘束は解いてくれると期待したのだが……。



「分かった、ちょっと待って」



 すると、ミリちゃんは立ち上がり、俺をそのまま置いて部屋を出て行った。



「おーい! ちょっと!? 放置プレイですか!?」



 俺の作戦は失敗に終わった。まさか取りに行くとは……。

 

 それにしても俺の今の容姿はどうなってるんだろうな。大分可愛くされたような気がするが、鏡が無いから分からない。

 

 それから、この拘束魔法も対処法を見つけないと、もし敵にやられたら理不尽に敗北してしまいそうだな。



 そして、しばらくするとミリちゃんは、ジュレをトレイに乗せて戻って来て、再び俺の目の前で座った。



「真由ちゃん、あーん」

「えええええー」



 そう来たかー。

 ミリちゃんは俺の拘束を解かないまま、スプーンにジュレをすくって、俺の口元まで運んだ。

 

 おいおい、普通に女の子同士で「あーん」するのは、微笑ましい光景かもしれないが、拘束された状態でそれをしたら、なんというか……そういう……アレになってしまう。


 だからと言って拒否したら、何をされるの分からないし、ここは従うしかなさそうだ。



「あーん」



 俺が口を開けると、ミリちゃんは表情を緩めて、楽しそうに俺の口の中に入れた。その時の表情も可愛かったが、あまりこれを続けると、また変な気持ちになりそうだ。

  


「真由ちゃん、ミリにも食べさせて」



 おお! これは拘束を解くチャンスだ!



「いいよ、じゃあこの拘束を解いて」

「分かった」



 意外にあっさりと拘束魔法を解除してくれた。これでようやく自由になれたぞ。

 この解放感もなかなか捨てがたいものがある。



「真由ちゃん、早く」

「はいはい、ほら、あーん」

「あーん」



 すっかり甘えん坊のミリちゃんの小さな口にスプーンで運んであげて、もぐもぐと食べる様子はとても可愛かった。鹿に餌を与えるより、何倍もいい。


 うーん、これは例えが変か……。

 

 それにこれはなんか癒される……。

 はっ! 俺もこの謎の世界観にハマりつつあるのか? 


 

 


 ――そして、部屋に来てからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか? 

 正直、時間の感覚がよく分からないが、ようやく満足してくれたのか、俺を解放してくれた。


 しかし、服装はゴスロリのままで、髪飾りもプレゼントされて、依然俺は可愛いままであった。

 

 このゴスロリを制服に戻すには、魔法効果を解除する魔法を掛けるか、着ないで放置して魔力が尽きるのを待つかしかない。


 身に着けることによって、自然に俺の魔力が供給され、半永久的に使えるらしいからな。

 この世界では、建物も含めて、あらゆる物が魔法でデザインされている。

 

 だから、定期的に魔力を供給してやらないと、元の素材に戻ってしまう。

 でも、普通に生活していれば、自然に触れるので、特別に何かしなくてもいいらしいけどね。


 さて、これから自分の部屋に戻るのだが……。

 こんな格好で寮館内をうろうろしないといけないのか.....。

 部屋に着いたら着いたで、ミルネに笑われそうだな……はぁ。

お読み頂き、ありがとうございます。


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