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28/202

第28話 私はアルシア

 真夜中の森の茂みでも、魔力で発光している草木のおかげで、ギャル2人組が腕を組んで見下ろしているのが見えた。

 そして、講堂で会った時と同じように、その様子を不安そうに見る子がいた。



「ふーん、見れば見るほど可愛いね」



 そう言うと、二人はしゃがみ込み、その内の一人が俺の首元に手をかけ、少し頭を持ち上げた。

 そして、俺の髪を手ぐしのように触り始めた。ミルネの時のような心地よさとは違って、不快でしか無い。



「サラサラで、艶があって綺麗な髪だね。うらやましー」

「ツインテも可愛いしね」



 そう言うと次は俺の顔を触り始めた。



「このもちもちとした肌触り……あーいいね。頬ずりしたい」

「ほんとぷにぷにだよ。幼い顔で可愛い!」



 なんだろう? ミルネやあいみの時にも、似たようなことを言われた時は、照れくさい気持ちになったけど、この二人の場合はただ腹立たしい気持ちになる。

 しかし、怪我のせいで何も抵抗出来ない。



「妹にしたいぐらいだね。だからミリちゃんも気にいるわけだ」



 ミリちゃんって、あの変なSランク子だったか。



「ちっこくて、童顔なのに胸はあるなんて、反則だよね」

「ひゃっ」

「ふふふ、変な声出したよ」



 思わず変な声を出してしまったが、こいつら一体何がしたいんだ? 

 そして、今度はその手で腹の辺りを撫ぜた。



「うっ!」

「ごめん、ごめん、この辺りだよね。ダンロッパさんから受けた傷は」

「この辺りもそうだよ」



 2人はニヤニヤしながら、俺の傷口を触り出した。

 俺はじわじわ来る痛みと、時折にやって来る強い痛みに声を出してしまうが、なんとか耐えていた。



「うわー、痛そう」

「可哀そうに」

「じゃあ、早く終わらせてあげないと」



 そう言うと、二人は拳に魔力を纏わせた。 


 おいおい、嘘だろ! こいつらダンロッパの代わりに、俺に止めを刺しに来たのか!?

 何とかしないと、やばいぞ!

 

 しかし、抵抗する間も無く、2人は傷口に拳に魔力を纏わせ『魔動拳』を打って来た。



 バァーンッ 


「ぐわあーー!!」



 再び傷口が広がり、出血し始めたせいで、俺は今までに無い激痛が襲いかかり、腹を押さえ這いつくばった。

 

 怪我の痛みはした時よりも、時間が経ってから再び同じ所をぶつける方が痛いと言うが、今回はそんな比じゃない。

 


「……」



 流石に2人とも流血と、俺の痛がる姿に動揺した。 

 しかし、地面に這いつくばってる俺を引っ張り上げ、仰向けにして、再び拳に魔力を纏わせた。



「あ、あ、あんたが悪いんだからね」

「そ、そうよ、さっさと終わらせよ」



 あれをもう一発なんて、もう耐える自信が無い……。ここまでか……。



「待って!!!」



 突然俺の前に手を出して、攻撃を制止しようとする女の子が現れた。

 そう、3人組の女の子の内の1人で、後ろで不安そうに見ていた可愛い女の子だ。



「もうやめよ! こんなの間違ってるわよ!」

「アルシア、あんたねダンロッパさんに逆らう気なの!?」

 


 あの女の子は『アルシア』という名前なんだ.....。

 今この状況で俺を守ってくれるアルシアさんは、天使のように思える。



「こんなの正義じゃないわ!」


「あんた、次のSランク候補生でしょう。ダンロッパさんに逆らえばなれないよ!」

「そうだよ! ここはあたしたちがやるから、黙って見てな」



 再び、2人は俺に攻撃をしようとしたが、アルシアは制止を止めなかった。



「アルシア! いい加減にして! 裏切ったらあんたも無事じゃあ済まないよ!」

「それでも駄目! 私は……うん? 何? 魔物の気配を感じる」

「えっ! どこ?」



 突然、アルシアは魔物の気配を感じて、周りを見渡した。


 前回、ミノタウロスに遭遇した時は、魔力が無くとも音で接近してきたのが分かったが、今回は不気味な静けさしかなかった。



「どうせ魔物が居ても、C級でしょう。気にすんなよ」

「いいえ、違うわ。これは……」



 ガサッ



「えっ!?」



 魔物はいつの間にか、背後から現れた。

 警戒しているのか、距離を取って俺達の方をじっと見ていた。


 魔物の姿は、薄暗いのと出血のせいか視界が霞んで見えるせいで、よく分からないが、4足歩行の動物に見えた。それほど大きくはない。



「あれはS級のアジリ!!」

「ヤバいじゃん! 逃げよ! なんでS級がここにいるの!?」



 またか、ここにいるはずの無い魔物……。

 しかも今度はS級……ダンロッパめ、ここで俺を確実に息の根を止めさせる為の保険のつもりか。



「アルシア逃げるよ! こいつは弱ってる獲物から狙うから!」

「真由の止めを刺すのは、このアジリに任しちゃおうよ!」



 2人はアルシアという女の子を置いて、逃げて行った。

 それにしてもなんて事だ。この二人からの攻撃の危機は去っても、今度はS級の魔物か。

 

 

「き、君は逃げなくていいのか?」

「いい! ここであなたを置いて逃げたら一生後悔する!」

「お、俺を助けたらSランクになれないばかりか、君もダンロッパに……」

「構わない! 私はもう迷わない! 正しいと思った事をする! あなたのように」

「えっ!?」



 俺のように? 



「あなた、ミルネという女の子を守る為に、あんな事したんでしょう?」

「知っていたんだ」



 アルシアさんも、ダンロッパのやり方には疑問を持っていても、絶対的なSランクの前では、不本意ながらも従っていたのだろう。



「あ、紹介遅れたね、私はAランクのアルシア。得意魔法は遠距戦」

「お、俺は真由.....ぐはっ、はぁ、はぁ」

「あんまり喋らない方がいいわ。私がアジリを討伐する!」

お読み頂き、ありがとうございます。


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