第26話 卑劣な作戦!再び真由 vs ダンロッパ
この異様な雰囲気の中、講堂に入って来たのはダンロッパ本人だった。しかも、Sランクのモリモンもいた。
という事は、この3人組のAランクの女の子も、講堂内の周囲を取り囲んでる10人ぐらいの女の子も、みんなダンロッパの仲間という事になるのか。
じゃあ、あの可愛い子も敵……。
なんか悲しくなる。
客観的に見れば、こんな幼い美少女1人に、こんな大人数で挑んでくるとは本当に大人げない。
これは俺を確実に逃がさないように取り囲んでいて、そして、もし俺がダンロッパに勝てたとしても、次はこの人数で襲いかかり、確実に俺を敗北させるのだろう。
もしダンロッパの不意を突いて『MPCシステム』のダッシュで逃げようとしても、出口まで距離があり過ぎて、3~4回はダッシュしないと辿り着けない。
それでは、ただの高速移動になってしまうし、俺の行先が簡単に予想できるから対応されて終了だ。
詰んだな……。
「真由よ、私ともう一度正々堂々と勝負しろ」
ダンロッパは出口付近で立ち止まり、俺に決闘を申し込んできた。
そして、今度はみんなに向けて話始めた。
「この真由という女は、Sランクのこの私を侮辱した上に、卑怯な攻撃によって私は負傷してしまった。だから今回は、皆の前で正々堂々と勝負したいのだ」
ダンロッパの言う事は、かなり偏重はしているが間違ってはいない。
ただ、なんでそういう状況になったかという説明がない。そこが重要なのに。
みんなはそこまで深読みしてくれないだろうな。
確かに陰でこそこそ罠を張ってくるよりかは、ある意味正々堂々と言えなくもないが……。しかし……。
「これのどこが正々堂々なんだよ! お前の仲間で取り囲んでいるじゃないか!」
「確かにここにいるのは私とモリモンの討伐隊のメンバーだ。しかしそれは、戦いで講堂を破壊せぬよう、配置しただけだ。安心するがいい」
流れ弾から講堂を守る為か……よく言うぜ。
それにしても、なんでこんな決闘を申し込んで来たんだろう?
この前はあまり公にしたく無さそうだったのにな……。
絶対に何か準備しているに違いない。
「真由よ、そろそろ始めようじゃないか」
「どうせ俺に拒否権は無いんだろ」
さて、どうするか?
1つ分かってる事は、戦うにしろ逃げるにしろ、出口付近にいるダンロッパの所まで近づかないといけない。
まぁ、一発ぶん殴って、即逃げるというのがいいだろう。
ダンロッパが吹っ飛ばされたら、他のメンバーは気を取られるはずだからな。
「よし、行くぞ!」
「来るがよい、真由」
俺は『MPCシステム』で高速移動をして、ダンロッパの所に近づこうとした。が、しかし!
「魔動連破砲!!」
「おっとっとぉ! 危ね!」
ダンロッパは魔力を使った飛び道具『魔動砲』の連続技を、俺に打って来た。
しかも、途切れることも無くマシンガンのように打ってくるから、俺は近づくどころか避けるのに精一杯だった。
こいつ! 何が何でも俺に近寄らせない気だ!
MPCシステムでダッシュで回避し続ければ、いづれ体力が無くなってジーエンドだが、あいつの魔力が先に尽きればチャンスはあるかもしれない。
「どうした真由避けるのに必死か」
「この大人げないやつめ」
「これでも手加減してやってるんだぞ。部下に吸収してもらわないといけないからな」
ダンロッパの魔動砲は、取り囲んだ女の子達が魔法を使って処理していた。
とりあえず、妨害とかはしてこないようだ。
しかし、このままでは俺の体力が先に尽きそうだ。こうなったら俺も飛び道具を使ってみるか。何も飛び道具は魔法じゃなくてもいいからな。
俺はダンロッパの『魔動砲』を避けながらの為、拳にパワーと剛性を少しだけ集中した。そして、足りないパワーを魔力で補った。
そうこの合わせ技が……。
「アグリゲーション!」
俺は講堂の床に拳を振りかざした。
「真由のやつ何をする気だ?」
俺は床を殴って穴を開けた。そして、地面が剥き出しになったお蔭で、そこから石を拾い、それを『MPCシステム』でパワーを集中させ、ダンロッパめがけて投げた。
「止めてみろ! ダンロッパ!」
「あまい!」
俺の攻撃はダンロッパに読まれていたのか、あっさりと魔動砲で対応されてしまった。
しかし、そのお蔭で俺に対する攻撃が止み、一瞬の隙が出来た。
もちろん、その隙を俺は逃さない。というよりそれが狙いでもあったからな。
「よし、これで一気に! 近づいてやるぜ!」
「何!?」
俺はようやくダンロッパの近くまで踏み込むことに成功した。しかし!
「あと一回のダッシュで……うっ、何だ!?」
あと一歩の所で、なぜか身体が動かなくなってしまった。
動かないというよりは、何か魔法のようもので押さえ付けられている感じだ。
しかもダンロッパの魔動砲は、まだ勢いが衰えることもなく続いている。
つまりそれは……。
「そんなのありかよ! 避けられない!!」
「勝負あったな」
「あっ……ぐはっ」
回避が出来なくなった俺に、ダンロッパが放つ魔動砲が、1発、2発、3発、4発、5発.....と俺に命中した。余程俺に恨みがあるんだろう。
その衝撃で、再び元いた位置辺りまで飛ばされ、床に叩きつけられた。
「げほっ、痛てー、だ、駄目だ起き上がれない……」
床は俺の血で赤く染まろうとしていた。どうやら、深手を負ったみたいだ。
ダンロッパは殺すつもりで攻撃している!
しかも、こんな小さい美少女が血だらけで倒れているのに、周りは誰も止めようとしない。
そして、ダンロッパは俺がもう動けないと分かると、魔動砲を打つのやめ、俺の方にゆっくりと歩いてきた。
しかも、右手には魔力を纏わせて、いつでも攻撃出来る状態にして。
このまま放置されても、この出血量だと俺は死んでしまうだろう。しかし、ダンロッパは確実に殺す為、止めを刺しに来ている。
捨て身で『MPCシステム』であと一発だけなら殴れるかもしれないが、これだけ負傷すれば威力も落ちてしまう。
どうする……。
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