第25話 討伐隊ストレングス
俺は討伐隊『ストレングス』の出陣式に参加する為、講堂に向かった。
前回、ダンロッパの出迎えの時と同じ所で、続々と人が講堂に入って来る。
並び方も前回同様で、舞台の両サイドにSランク用の椅子があり、舞台前は真ん中の通路を挟んでAランク用の椅子があって、あとは立ち見となっている。
俺もまた前回と同じ場所に移動すると、ミルネもやって来た。
「マユリン、太助さんの出陣式は覚悟がいるよ」
「覚悟?」
「始まれば分かるよ」
ミルネはそう言うと、両手で耳を当てた。
周囲をよく見ると、同じように耳を塞いでる女子が結構いたが、男子は何故か軽く準備運動をしていた。
一体、これから何が始まるんだ!?
しばらくすると、へーラス先生が生徒達に呼びかけた。
「へぇー、これからSランクの太助さん率いる討伐隊『ストレングス』の出陣式を行います」
すると、男子の声援で構内が響めいた。男子には人気があるようだ。
「へぇー、今回はSランクの魔法使いは参加されませんので、へぇー、このままSランクの太助さんと討伐隊『ストレングス』に入場してもらいます。へぇー、今回の依頼はS級の魔物の討伐と魔王軍の監視です」
他のSランクは誰も来ないのか!? 何か裏があるとかじゃないよな……。
ドーーーーーーーン!!!
いきなり爆発音みたいな大きな音が鳴った。
何だ!! 何が起こった!?
すると、周りの男子達が足踏みしながら、何か叫び始めた。
「ゴッスン! ゴッスン! ゴッスン! ゴッスン! ゴッスン! ゴッスン! ドォーン!! ドォーン!!」
何これ?
俺は訳が分からず、ただ周囲を様子を伺った。
しばらくすると、入口から太助と思われる者が、両手を大きく上げ、何か雄叫びを上げてそうな感じで入場して来た。
その後ろには主力メンバーと思われる厳つい女が3人と、その後ろに少し控え気味な女子2人と男子2人がいた。
この男女はBランクのサポータかな?
それにしてもうるさい。ミルネが耳を塞ぎたくなるのが分かる。そして、ようやくメンバー全員が舞台の上に着いた。
ドーーーーーーーン!!!
どっから音してるんだよ!
再び大きな音で、さっきまでの「ゴッスン! ゴッスン!」が鳴り止み、静かになった。
やっと静かになった。少し耳がキーンとしている。
このパフォーマンスのせいで、他のSランクの人は欠席したんじゃないだろうな。
ドーーーーーーーン!!!
びっくりした。もういいわ! さっさと行けよ!
再び「ゴッスン! ゴッスン!」コールが始まり、主力メンバーと思われる、厳つい女3人が、そのリズムに合わせて、よく分からない踊りを始めた。
そして「ドォーン!! ドォーン!!」のところでこちらにドヤ顔をいちいち決めてくるのが、少しイラっと来る。
そんな状況の中で太助が演説を始めたが、周りが騒がし過ぎて、何を言ってるのか全然分からない。
さらにもの凄く熱心に拳を振り回し、語り始めたが全く聞こえない。
そして、ボディービルダーのようなポーズを取り、叫ぶように語り始めたが、何一つ聞き取れなかった。
こいつアホだ。
ドーーーーーーーン!!!
また大きな音が鳴り、静かになった。
「では、行ってくるでゴッスン!」
太助がそう言うと、早々と退散した。
帰りはゴッスンコールやらんのかい! っとツッコミたくなったが……どうでもいいや。
まぁ、この世界でリズム感があったという事だけは、評価出来るのかな。
「へぇー、熱意ある貴重なお話をありがとうございました」
いや、絶対聞こえてないだろ!
「それでは出陣式を終わりたいと思います。へぇー、Aランクから退場して下さい」
結局この式の意味があったのか分からないが、討伐隊が出撃する時もみんなで送り出すんだろう。
俺も戻るか……。
「ミルネ、戻ろうか」
「ふぅ、やっと終わった。あたしあの音苦手」
「確かにあれは覚悟がいるな」
みんながぞろぞろと講堂から退出する中、俺とミルネも出ようとしたその時だった。
「あんたがCランクの真由だね?」
こう話しかけてきたのは、3人組の女の子のグループの1人だった。
もちろん、俺と面識は無い。
すると、ミルネが小声で俺に話しかけた。
(マユリン、誰? あの3人はAランクだよ)
(まじか……)
俺に話しかけてきた女の子は、ちょっとギャルみたいな感じの2人組で、その後ろに、一歩下がった所にいる女の子は少し雰囲気が違う。
その女の子は真面目そうな感じで可愛いかった。しかし、興味が無いのか、乗る気じゃないのか、視線を逸らしていた。
まぁ、3人とも俺とミルネより年上だろう。
「えーと、真由ですけど。何か御用でも?」
「あんたはこのまま残って。そっちの子はさっさと出て行きな」
「一体何を?」
「ちょっと話がある」
どうやら俺だけに用事があるみたいだ。またダンロッパの罠ってことはないだろな?
もしそうだとしたら、一番恨みを買っている俺に仕掛けるはずだから、ミルネはここにいるより、外でみんなといる方が安全かもしれない。
「ミルネ、話があるみたいだから、先に行ってくれ。授業にでも出てみんなといるようにね」
「マユリン……」
「大丈夫、俺の事は心配するな。すぐ戻るから」
「うん、でも気を付けてね」
そう言うとミルネは、俺の方を何度も振り向きながら退出した。ミルネもダンロッパの罠を警戒したんだろう。
そしてあれだけ講堂にいた人は、みんな外へ出てしまい、残されたのは俺と3人組の女の子だけになった。
と、思ったら、最後の生徒が退出せずに、講堂内の周囲を等間隔で、10人程の女の子で取り囲んでいた。
なんだこいつらは……。
一体何が始まるんだ?
「なぁ、話って何だ? 何をする気だ?」
「……」
3人組の女の子は何も答えず、入口の方に目線をやった。
俺もそれに合わせるように入口の方見ると、誰かが入って来た。
「話があるのはこの私だよ。真由」
「なにー!? ダンロッパ!?」
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