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24/202

第24話  技名をつけよう

 ミノタウロスを倒したあの日から5日が過ぎた。

 その間、ダンロッパによる罠や嫌がらせといったことは無く、平穏な日々を過ごす事が出来た。


 ミルネは以前の様に元気を取り戻し(いや、それ以上かもしれない)授業に取り組んでいる。

 どうやら魔法実技の授業も、余裕でクリア出来るようになったみたいで、寝る前に俺に嬉しそうに語ってくれた。


 それで俺はというと、言うまでも無く、基本的な魔法の勉強と実技に取り組んでいる。

 

 日常生活に必要な魔法は大体出来るようになった、というか簡単だった。しかし、魔法戦士で使うような魔法には苦戦している。


 基本的なものはそんなに難しくないが、俺の魔力がしょぼいせいで、魔力が尽きるのが早く、練習も限られてしまうのだ。


 魔法戦士で使う攻撃魔法は大きく分けて3つある。この3つを『魔動三原則』と呼んでいる。

 

 まず一つ目は『魔動拳』と言われる、自身の身体に魔力を纏わせ、直接殴ったりする格闘タイプの近戦魔法だ。

 

 二つ目は『魔動転化』と言われる、物に魔力を纏わせて攻撃することが出来る魔法で、剣等で戦う近戦魔法だ。


 だがこの魔法は物を飛ばすことで、遠戦も可能みたいで、ミルネもこのタイプの魔法を使った剣士だ。

 

 そして三つ目は『魔動砲』と言われる、魔力そのものをビームや弾丸みたいに飛ばして攻撃する遠戦魔法だ。


 あとは、火、雷、氷があるが、これも魔力に何かしら変化させていると思うが、適当にやってたまに成功する感じで、まだ出来ていない。


 まだ他にもあるみたいだが、これらを組み合わせてより大きな魔法や、特殊な魔法を繰り出す事も出来る。また、これを短い時間で出せる事も重要で、Sランクはこれらを含めて優れているというわけだ。


 まぁ、俺には到底届かない世界の話だけどね。


 それから、この学園とライバル校であるベルリア学園は総合魔法だから、どれも一定のレベルに達しないといけないから、全部出来るようにならないといけない。


 しかし、実際は得意な方に偏るらしいけど。


 でも俺はそんな余裕はなく、一番簡単と言われている『魔動拳』を習得する事に専念している。それに『MPCシステム』と『魔動拳』は相性が抜群なのだ。


 例えば『MPCシステム』でパワーを集中して、さらに魔力を纏わせると、攻撃力はさらに上がるわけで、魔力がしょぼくても、それなりの攻撃になるということだ。


 それで、これは俺だけが出来る技なので、技名もちゃんと付けようと考えている。


 今まで『MPCシステム』を使う時『集中』とか言うことはあるけど、あれは単純にスポーツで「集中! 集中!」と自分に言い聞かせるのと同じで、MPCの練習時代の掛け声を、そのまま言っているだけで技名でも何でもない。

 

 もし、ガチの喧嘩に「喰らえ! アッパーカット!!」とか技名を言う人はいないと同じだ。


 でもせっかく、ファンタジーな世界に来たんだから、技名もちゃんとしておこうと思う。


 それで名前は……パワーも剛性も魔力も一カ所に集約するということで『アグリゲーション』と呼ぼうと思っている。そして、こいつを実践してどんどん進化させて、ダンロッパみたいな強敵に対応させていこうと思う。


 まだ他にも魔法はあるけど、まずは魔動拳をマスターして、あとは飛び道具の魔法が使えたらいいかなっと考えている。




 さてと、もう遅い時間だから寮に戻るのだが、今日はミルネに「暗くなってから帰って来て!」と言われている。

 

 一体何があるのだろう?

 全く予想が付かない……。 

 まぁ、行けば分かるか……。



 俺は寮に戻り、部屋の前まで来た。

 

 なんか怖いな……。


 何が怖いかと言うと、ミルネが魔法を使って驚かそうとして失敗し、俺が吹っ飛ばされてしまうようなオチになりそうな気がしてならない。


 最近は授業で魔力を使っても余裕で余るみたいで、こういうサプライズに気合入れ過ぎて、必要以上の魔力を使って――



 ガチャ バーーーン!



「マユリン帰ってるなら早く入ってよ!!」


 

 俺がドアの前で、入るのを躊躇していたら、急にドアが開いてミルネに怒られた。

 

 なんでドアの前にいるって分かったのだろう? やっぱり魔法か? まさか、階段から俺が来るのを待ってたってことはないだろうな……。



「いや、どういう感じで入ればいいか考えてたんだよ……」

「普通に入ればいいじゃん。それより早く」



 ミルネは俺の背中を押して、部屋の中へと押し込んだ。

 すると、なんということでしょう!

 

 外は肌寒いのに部屋の中は暖かいではありませんか。

 しかも明かりがあるおかげで、今まで真っ暗だった部屋がこんなに明るくなりました。



「おお! 夜なのに明るい! 暖かい! これはミルネの魔法か! 凄いな」

「えっへん」



 もしこれが、異世界に来た時だったら、何一つ感動しなかっただろう。

 それだけ東京の時の生活が快適だったということだな。


 でも視点を変えれば東京の生活も、もっと幸せを感じることが出来たんじゃないかな? 

 

 しかし、魔法で何でも出来るせいで、魔力の個人差で優劣が生まれてしまう。さらに、魔力が無ければこの世界はほとんど何も出来ない。


 だから魔法の世界での視点だったら、魔力が無くともこっちの生活に憧れるのじゃないか。



「マユリン?」

「あ、すまん、考え事をしていた……いやーこれで快適な寮生活が送れそうだな」

「でしょう。あたしに任せなさい」

「でも、もうこれで抱き合って寝なくても大丈夫だな」

「……」



 さっきまでニコニコしていたミルネの表情は、俺の放った一言で一気にむすっとした顔になった。

 すると、突然、なぜか部屋の温度が急激に下がった。



「寒い! 急に寒くなったぞ! おい!」

「ごめんなさあーい。魔力が尽きましたー」

「嘘つけ! 熱された空気が、こんな急には冷えないだろ!」



 まぁ、俺も美少女を抱いて寝るのが嫌なわけではない。最近、自分の正体を知った時の事を考えるようになってきたから、どうしても気が引けるのだ。




 ――そして翌日。



 いつものようにミルネを教室に見送った後、俺は先生の授業を受けていた。

 

 いつもなら、図書館で勉強して、校舎の裏で魔法の練習をするのだが、コーレス先生の授業だけはいつも出席していた。 なぜかと言うと、コーレス先生は講義の中で、実態の様子や裏事情を話してくれるからだ。

 

 一応俺はこの世界の調査に来ているわけだから、これが結構為になる。

 まぁ、相変わらず「これこれ」うるさいけどね。



「今日はね、魔力経済のお話をしていきたいかなっと思ってます」



 なんだよ「魔力経済」って!? マクロ経済か。



「現在の貨幣は『魔力コイン』で取引されますけど、あのコインに魔力を注入するには、人か、コイン同士で移転するしかありませんね。だから、魔力の強い人は、それだけでお金持ちになれるんですねーこれ」



 魔力持ちが羨ましい。



「しかし、魔物の家畜化で魔力の生産技術の向上したことから、魔力の価値がどんどん下がっているんですね、これー」



 魔力の価値が下がるということは、物価が上がるということだよな。



「ここだけの話ですけどね、それ以来ね、魔力生産を大きく向上させる研究や、魔力コインを他の物から注入する研究は、どこからか圧力がかかって潰れてしまうんですねーこれ。この研究で困る人は誰かを考えればすぐ分かるんですけどねーこれ」



 そう、こういう裏話が聞けるから、俺は授業に出てしまうんだが。



 カーン



 その時、放送が流れる時のチャイムが鳴った。


(ただ今から、Sランクの太助さん率いる討伐隊『ストレングス』の討伐隊の出陣式を行います。皆さんは講堂に集まって下さい)



「それでは授業ここまでにしますので、皆さん講堂に行って下さいね、これー」



 

 討伐隊の出陣式ね……そんな事よりこの式にダンロッパが来るかどうかが気になるところだ。

お読み頂き、ありがとうございます。


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