第23話 最強魔法剣士の誕生?
突然、ミルネが固い棒って言うから驚いたが、どうやら俺が想像したのとは違うようだ。というか当たり前か。
ミルネが言っていたのは、俺が昼間に作っていた剣の素材だ。ブレザーの中にしまっていたのを忘れていた。
渡すなら今だろう。
「ああ、これはミルネに渡そうと思っていたんだけど、貰ってくれるか?」
俺はブレザーの中から、剣の素材をミルネの前に出した瞬間、ミルネは驚きの表情に変わった。すぐに何か分かったようだ。
「マユリンこれって……ホーリーで作った剣の素材!?」
「よく分かったな」
「分かるよ! でも、どうやって手に入れたの?」
「いや、普通に森から切ってきて、削ったんだけど。ミルネが前に持っていたのと同じぐらいの大きさぐらいにね」
「凄いよ……マユリン、普通そんな事出来ないよ」
ミルネは剣の素材を手に取ると、食い入るような眼を注いでいた。とりあえず、気に入って貰えたかな。そう言えば、俺はまだミルネの魔法剣を見たことが無いな。
「ミルネ、それを剣にデザインして見せてくれないか?」
「うん! あたしも試したい!」
そう言うとミルネは、剣をじっと見つめ、魔力を集中し始めた。
俺は魔法に関してはド素人だが、それでも強い魔力が発しているのは分かった。
「剣にデザイン!」
すると、剣から高圧電線がショートしたような、青い光をバチバチと放ち、次の瞬間俺の視界は真っ白になった。
「うわあああああ!!」
気づいた時には、俺は地面に転がっていた。
真っ白になった時に衝撃波が走って、数メートル吹っ飛ばされたようだ。
「ごめん! マユリン大丈夫? つい前の感覚で魔力を込めてしまったー」
「なんだ今のは! って! うぉお! かっこいい!!」
さっきまでは20㎝ほどの木刀が、80㎝ぐらいの大きさになり、青色の光を輝かせる、まさに魔法剣になっていた。
「マユリンこれ凄いよ!」
「確かに今の衝撃は凄かった」
「この剣、魔力の消費がとても少ないよ! だからさっき、必要以上の魔力を出しちゃったよ」
「なるほど、それで有り余った魔力が衝撃波に……ん?」
ちょっと待てよ!
今までミルネの魔力が弱いとか言ってたけど、実はそうじゃなくて、無駄に魔力を消費していただけじゃないのか?
あんな木の枝を剣に変えるだけで、さっきみたいな魔力を消費して、さらに魔法剣で繰り出す技でも無駄に消費したせいで、魔力が弱く見えたんじゃないのか?
「なぁ、本当はミルネ強いんじゃないの?」
「そんなことないよ」
「じゃあ、試しになんかやってみてよ」
「うん」
ミルネは剣を振り上げただけで、周辺の光を発している草木がそれに反応しているように見えた。
そして、地面に向けて振りかざすと、また、さっきのような衝撃波が起こり、俺はまたもや吹っ飛ばされた。
「またかよー!」
「マユリン大丈夫?」
「大丈夫だけど……な! これは!」
10メートルぐらい先まで地面が割れていた。それを見て俺は確信した。
ミルネは強い!
しかも、剣士だから近戦タイプだと思っていたが、これなら遠戦でもいけそうだ。
「マユリン! この剣本当凄いよ! ありがとう!」
「気に入ってもらえて良かった」
こうなってくると一番頑張らないといけないのは俺の方かも。
よし、俺も頑張ろう。
――こうして俺とミルネは学園に戻り、討伐隊の依頼である『魔法弾丸』を届けた。
魔法弾丸を渡すと、遅くなった事を心配していたから、注文の個数が違うことで遅くなったと説明すると、個数の変更はちゃんとしたという事だった。
多分、この人も、あのおばさんもダンロッパに関与してなさそうだ。
そして、今日はいつもより少し遅い就寝となった。
今まで外の方が明るいのは月だと思っていたが、草原や木々の魔力が発光した光りだったんだな。
さてと、寝るか……。
「マユリン、今日はありがとう」
昨日と違ってミルネはニコニコしながらそう言うと、俺を抱き寄せて……。
「マユリン……好き。ちゅ」
「あっ」
ミルネは俺の頬にキスをして、そのまま眠りについた。
キスと言っても、西洋人が挨拶でするような感じのキスに近い。
しかし、ミルネとの仲が深まるにつれ、心が痛む事がある。それは俺の正体を隠してることだ。
異世界から調査に来た事については、多分大丈夫だと思うが、実は男だったという事実を知ってしまったらショックを受けるんじゃないかと思う。
今も、こうして抱き合って寝ているのは、俺がお人形さんみたいに可愛い女の子だからだと思う。
もし、これが身長185の男だったら……。
だからと言って事実を伝えても、混乱させるだけで信じて貰えない気がする。
カリバーも言っていたけど、変身魔法はあるけど魔力を発するし、うまく隠せても四六時中は魔力消費が激しいから、不可能みたいだからな。
うーん、今はまだダンロッパの件もあるし、これ以上ミルネに懸案事項を増やしたくないから、今はまだ黙っておこう。
ミルネすまん。いつか全部話すから……。
俺はミルネの寝顔を見て、心の中でそう叫んだ。
―― 一方その頃、場面変わって、ここはダンロッパの部屋の中の回復室。
ダンロッパはあの戦いのあと、魔力による治療の為にベッドでの生活を強いられていた。そして、そこにモリモンが部屋に入ってきた。
「ダンロッパさん、大変です! あの2人が戻って来ました」
「なんだと?」
ダンロッパは、まだ起き上がれない状態だったので、顔だけ起こした。
「あのミノタウロスから逃れるとはな……」
「い、いえ、あの……ミノタウロスは……倒されてまして……」
「なに!? 馬鹿なっ!うっ」
「ダンロッパさん落ち着いて!」
ダンロッパは驚いて思わず、起き上がりそうになった。
「殺ったのは、やはり真由か?」
「恐らくそう思われます。しかも魔法の痕跡が無いことから……物理攻撃のみで倒したということになります」
「そうか……」
ダンロッパは顔を下げて、天井の方を見上げた。
「なるほど、私が受けた傷も、物理攻撃というわけか」
「そうかもしれませんね。魔力を伴う魔法攻撃のダメージなら、一日か二日で治りますが、魔力を伴わない物理攻撃は一週間はかかりますからね。まだ完治しないところをみると……」
「魔力無しであのパワーは異常だ。どうやったかは不明だが、侮ってはいけないという事は、よーく分かった」
「どうしますか?」
ダンロッパは再び、横になった。
「今度はしっかり対策した上で、私が殺してやろう。君にも協力してもらうよ」
「はい、ダンロッパさん」
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