第198話 真由はお嫁にいけない!?
薄暗い廊下から姿を現したのはアルシアだった。
「アルシアも眠れなかったのか?」
「うーん、少し違うかな。真由と二人でお話をしたくて、ミリちゃんにお願いしたの」
「え!? ミリちゃん!? もしかして、あれ自動的に落ちて来るシステムだったのか!?」
「ごめんね。私もあんな形になるとは思わなかったの」
これは予想だが、アルシアが寝る前にそういう話をしたら、「分かった」とだけ言って説明しなかったと思う。
「もしかして、ミリちゃんが落ちて来るまでずっと起きていたの?」
「うん、まぁ」
「だったら、俺に直接言って……いや、そうか」
直接言ったところで、俺が脱出に失敗したら終わりだし、ミリちゃんに許可を貰う方が確実ということか。
「じゃあ、外で話を聞くよ」
「うん」
俺とアルシアは外に出た。外は涼しくて、散歩するにはちょうどいい感じだ。
「それで話したいことって何?」
もしかして、告白の返事かな? 俺は真由のままでは返事したくたくないんだけど……。
「明日ね、みんな東京に行くでしょう」
「うん」
「でも、行くのは私と真由とカリバーさんだけなの」
「え!? ミルネもミリちゃんも行かないの?」
何であの二人は行かないんだ?
「ミルネはネスタリア学園の代表になったから、落ち着くまでは席を空けるのは無理だったみたい」
「じゃあ、ミリちゃんはマリさんと離れたくないとか?」
「違うの。私がミリちゃんにお願いしたら、そうなったの」
「うーん、どういうことだ?」
ミリちゃんに来て欲しくなかったのか?
「私、ミリちゃんに真由を男に戻していいか、お願いしたの」
「えぇーーーー!!! それは無理じゃあね?」
「最初は断られたけど、この一週間頑張ってお願いしたら、ようやく許可を貰えたわ」
「それはお疲れだったね。それでミリちゃんは行かないのか……ということは、俺は男に戻れるのかー?!」
一番高いハードルがクリア出来たぞ!!
「アルシア、ありがとう!! これで全てが解決しそうだ」
「え、うん。それで、私も真由にお願い事があるんだけど……」
「お願い事? いいよ、何でも言って。そう言えば、ミルネとミリちゃんにお願い事を聞いたけど、まだアルシアから聞いていなかったね」
「うん、男に戻れたら、私とデ、デートしてくれないかな?」
アルシアの顔は真っ赤にしながら、俺をデートに誘ってくれた。もちろん、そんな誘い断るわけない。
「ありがとう。俺も楽しみにしているよ」
「真由、ありがとう。私とても嬉しいわ。話はそれだけよ、私戻るね」
「え? もう戻るの?」
少し散歩したかったんだが。
「ごめんなさい。真由……埋め合わせはするわ」
「いや、別にそんなに謝らなくても」
アルシアは逃げるように中に入って行った。
なんか様子が変だったけど、照れているのかな? まぁ、いいか。
アルシアが戻るなら、なんか散歩する気分では無くなったなぁ。戻るか。
俺が旅館の中に入ると、ちょうど女将がやって来た。
「これは真由様、どうかなされましたか?」
「いや、ちょっと目が覚めてしまったから、ブラついていただけだよ。女将さんまだ起きているんですね」
「おほほほほほ、もちろんです。両学園のSランク様がお集まりになられてますので、警備も万全にしております」
「大変ですね」
戦いは終わっても、まだ残党がいるかもしれないし、警戒は必要だろう。
「真由様、もし良ければ、魔水浴をされてはいかかですか? 今は誰もいませんので、ごゆっくり出来るかと存じます」
「魔水浴か……」
魔水浴って、魔力水に浸かって、魔力の回復効果があるというやつだろう。実際、温泉いたいなものだから、最後に入っておくのもありかな。
この時間なら、ミリちゃんもミルネも寝ているだろうし、前みたいに襲われることはないだろう。
これは穴場かもしれない。
「じゃあ、お言葉に甘えて入らせて頂きます」
「では、こちらにどうぞ」
俺は女将の案内で魔水浴の脱衣所までやって来た。
でも、よく考えたら俺はもう、美少女でいられなくなるんだよな。
もうこの身体ともお別れになってしまう。
考えてみれば、短いスカートの制服着たり、メイド服着せられたり、スク水着せられたり、拘束されたり、美少女に襲われたり……なんか、ろくな経験していないような気がするが、それももう終わりだ。
そんな事も男に戻ればもうないだろう。
よし、最後ぐらい真由の身体をじっくりと堪能して、お別れしよう。
俺は全裸になり、真由の身体を堪能して、魔水浴場に向かった。
もうこれは露天風呂だな。幾つか湯船はあるが、どうせなら一番大きい所に行こう。
「はぁーー、やっぱり、温泉は気持ちいいは」
こんなに安心して湯に浸かれるのは久しぶりだな。やっぱり、温泉はこうでなくては。
「ふぅーー、最高だね」
しかし、この極楽も長く続かなかった。
バァーーーン!!
「うわぁー!! 何だ!?」
俺は驚いて、咄嗟にタオルを取って身体を隠した。
「一体、何の音だ!?」
俺が音がした入り口付近を見ると……。
「あのシルエットはミリちゃん!? 他にもぞろぞろと中に入って来るぞ!」
あの音はミリちゃんが扉を開ける音だったのか。
でも、5人? いや、7人? いや、もっと? ミリちゃんを先頭に他の女の子達も一緒に入って来た。しかも、裸だ!
「真由ちゃん、ミリも一緒に入る」
「マユリン一人でずるいよ!」
「アルルンも一緒に入りたいわけですね!」
「ミリちゃんの次は私だからね」
「ミリちゃんの次って、どういうこと? マリさん!」
どんどん俺の周りに、増えていく。アルルンやマリさんだけでなく、メルリさんやオリンさん、 ゴレイアーさんまでいる。後は、タオルを巻いてAランクの子が周りを警備している。
「真由、あたいらも便乗してもいいか?」
「なんかごめんなさいね」
「いやー、普通に入るだけならいいですけど。まさかゴレイアーさんまで来るとは」
「私も失礼させていただきます」
まさか全員来るとは思わなかったが、逆にこの方が安全なのかな?
「駄目、真由ちゃんはミリのもの。ウ~ウ~」
「げっ」
ミリちゃんの無敵モードが発動された!
でも、ここでもこれは有効みたいだが。
「駄目よ、可愛い妹達! お姉ちゃんがまとめて面倒みてあげるわ」
「うわわー」
マリさんは両手を広げて、ミリちゃんごと抱き寄せた。
「あっ! ずるいよ! あたしもマユリン抱きしめる!」
「い一しっしっし! アルルンはスライム形状になって真由をものにするわけですね!」
「馬鹿、スライム状は、なんかやらしくなるから、やめろ!!」
ヤバい、段々カオスになって来たぞ。こういう時はアルシアに止めてもらうのが一番だが……。
アルシアがいない……。
「おー、なんか楽しそうだな。あたいらも混ぜてよ! オリンも一緒に!」
「ちょ、こらメルリー!」
「仕方ありません。私も混ぜてもらいます」
もう何がどうなっているのか分からない。
ただ一つ言えるのは、真由はお嫁にいけるのか!?
もうこれで最後にしてもらいたい!
「こらー!! そこは駄目!!」
お読み頂き、ありがとうございます。
気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!