第196話 カリバーのサプライズ!?
アルシアは手を挙げた。
「私のデス魔法で、二度と魔法を使えなくするのはどうかしら?」
「それはいいね。それでいこう」
「おいおいおいおい、みんなに聞くんじゃなかったのか?」
「そうだったね。みんなこれでいいかい? 反対の者はいるかい?」
誰も手を挙げないな。でも、俺も賛成だ。
あのダンロッパならまた悪いことしそうだし、それに魔力がゼロにされるのは、この世界では死刑みたいなものだしね。
「じゃあ、決まりだね。これで解散! 僕はこれから大事な用があるから失礼するよ」
「おい!」
カリバーは、慌て気味で外に出て行った。ここ数日は戻れなかったから、ゲームが出来なくてもう限界だったんだろう。
そして、マリさんに抱き着いたミリちゃんがセットで、部屋を出て行った。最近、ミリちゃんはお姉ちゃんにべったりだ。今まで甘えられなかった分、めいいっぱい甘えているという感じだ。
まぁ、少し寂しい気もするが、おかげで、ここ数日は理不尽な目に遭わなくて済んだ。
そして、みんなが退出し始めた時、俺はアルシアに駆け寄った。
「アルシア、代表を断ったけど良かったのか?」
「うん、いいの。他にやりたいことが見つかったから」
「それは?」
「えーと、今は内緒」
答えてくれなさそうだけど、いつかは教えてくれるということか。まぁ、そのうち向こうから教えてくれるだろう。
――こうして会議も終わり、この後は建物の修復に駆り出され、一日が終わった。
今はもう夜で、俺とミルネは寮に戻って寝る準備をしているところだ。
「ようやく明日からゆっくり出来るな。今日までバタバタだったもんな」
「あたしはもう疲れたよ。もう寝よう」
「そうだな」
俺とミルネはベッドで横になった。
「それにしても、こうやって一緒に寝ると学園を出る前の頃を思い出すな。あの時はダンロッパの闇を粛正するだけだったのに、それが魔王軍まで倒してしまって、さらに、ミルネは代表になってしまったからな」
「えへへ、あたしも偉くなってしまったよ。でも、あたしは、マユリンがここに来る前は男になっていた事の方が驚いたよ」
「それは確かに……って、ちょっとニュアンスが違うぞ。男になっていたんじゃんくて、元々、男だからね」
「別にどっちでもいいよ」
「良くなーい!」
ミリちゃんもそういうニュアンスなんだよな。俺、そんな誤解するような説明したかな?
「そう言えば、ミリちゃん全然来ないね。あいつのことだから、ドアを蹴破って拉致に来ると思っていたんだけど」
「今はマリ姉と一緒だもんね。マユリン、ミリちゃんが恋しいんでしょう?」
「違うわ! 逆に何も無いと、それはそれで不気味で怖いんだよ」
そう、例えばマリさんと何か悪巧みしていそうで怖い。
「でも、大丈夫だよ。マリ姉がマユリンを妹にしたいって言ってたから」
「どこが、大丈夫なんだよ!」
あの姉妹、本気でやりそうだから怖いわ。
「あたしはアル姉の妹になりたいな」
「そんなことしたら、ややこしくなるわ!」
「アル姉も一緒に寝てくれたらいいのにね」
「狭いわ!」
狭いのもあるけど、ちょっと今は照れるな。
アルシアに告白されて、まだ返事はしていないから、気まずさはあるかもしれない。
俺もちゃんと返事をしようと思っているが、真由じゃなくて浩二としてしたいからな。
うーん、戻る方法はもう一回無垢郎から貰ったドリンクを飲めば、魔法解除効果で戻るらしいが、ハードルは高い。
そんなことをすると、ミリちゃんが怒り狂うだろう。
何とかしてミリちゃんから許可を貰わないとな。はぁー。
――こうして、数日が経過して、祝賀会の日がやって来た。
魔王軍討伐の祝賀会は、あの女将がやっているボルボン魔水浴場がある旅館だ。
今回の参加者はSランクとアルルン、あとはAランク数人で、Bランクは裏方で働いてくれるみたいだ。
ただ、学園を留守にするわけにはいかないので、ネスタリア学園にケイトさん、ベルリア学園に剣士のフェルティングスさんが残っている。
祝賀会と言っても、みんなで夕食を取るみたいで、バイキング形式らしい。
どんな料理が出てくるのか楽しみだ!
というのは嘘で、どうせゼリーみたいなジュレばっかりだろう……。
せめて、カリバーが土産でもあればいいんだが……。
しかし、会場にはカリバーのテレポートで行く予定で、もうみんな集まっているのにカリバーがまだ東京から帰って来ない。
まさか、ゲームが止めらなくなったんじゃあ、ないだろうな?
「カリバーさん、大丈夫かしら?」
「どうだろう? ゲームで遅れているなら、怪しいな」
もしもの時は、ミリちゃんか、マリさんに頼みたいところだが、魔力を使い果たしてしまうのは避けたい。だから、2回出来るカリバーがちょうど良かったんだが。
暫く沈黙が続いたが、これを破ったのはアルシアだった。
「今、ベルリア学園から連絡あったわ。向こうは全員揃ったみたい」
「マユリン、どうするの?」
「ここは、ミリちゃんか、マリさんにお願いするしか……」
「いいわよ。私がテレポートしてあげる。でも、魔力を使い果たすから、真由ちゃんが介抱してね」
「ミリもして欲しい」
「なっ」
なんか俺が変な苦労しそうなパターンになりそうだ。くそー! カリバーめ!
俺が諦めようとした時、突然周りが白い光に包まれた。
「こ、これはやっと来たか!?」
そして、光が消えると目の前にカリバーが大きな箱を持って現れた。
「遅くなってごめんね。大事な用があって遅くなってしまったよ」
「ふーん、大事な用ね……それで、その箱は? もしかして……」
「流石、真由君は察しがいいね」
ということは、お土産を一杯持って来てくれたのか?
「みんなも驚くよ」
「じらすなよ。何を買って来てくれたんだ?」
「じゃあ、ミリちゃんに開けてもらおうかな?」
「分かった。ふっ」
「やっぱり、真由君が開けた方がいいね」
「俺もそう思った」
ミリちゃんに開けさせたら、中身まで破壊しそうだからな。それにしても、わざわざミリちゃんに渡さなくとも、自分で開ければいいのに、何かあるのか?
それにしても、この箱なんか見たことがあるような気がするぞ。
何だっけ?
軽くて大きな箱……。
ま、まさか!?
俺は、はやる気持ちを押さえて箱を開けた。
すると、中に入っていたのは……。
中にはなんと! 可愛い兎のヌイグルミが入っているではありませんか!
「も、もしかして、ポンタ!?」
お読み頂き、ありがとうございます。
完結まであと5話(201話)になります!