第193話 ミリちゃん姉妹の掃討作戦
マリさんが目を覚まし、上半身を起こすと、それに気付いたミリちゃんが飛びつくように抱きしめた。
「あらあら、ミリちゃんの甘えん坊」
どうやら、記憶は戻っているようだな。
「真由ちゃんも、おいで」
ん? なんで俺が? マリさんは俺を手招きしている。
「俺は別に……」
「駄目、真由ちゃんも」
「げっ」
ミリちゃんは俺の腕を掴み、強引にマリさんの元に引き寄せた。
いやいや、ここは姉妹の再開を喜ぶところだろ! なんで俺まで?
「可愛い、可愛い私の妹たち」
「違うわ!!」
こんな時にこういう冗談はやめて欲しいけど、なんか本気で言っているような感じがするが……。
「俺は妹ではありません!!」
「あら、そうだったの? ごめんなさいね。まだ記憶がフワフワしているの」
「真由ちゃんは、ミリのもの」
「ミリちゃんのものだったら、似たようなものね」
「どういう理屈だよ!」
どうやら、本当に妹と誤認していたみたいだな。でも、記憶操作の魔法を長年掛けられていたんだから、混乱しても仕方が無いかもしれない。
でも、なんで俺が妹になっていたのかな?
初めて会った時は、可愛いから俺を持って帰ろうとしていたけど。
「真由、まだ戦いは終わってないわ。早くみんなを手助けに行きましょう」
「うん、そうだな」
「あたしはもうちょっと見ていたかったよ」
なんかアルシアが少し不機嫌のような気がする。でも、おかげでここから脱出出来そうだ。
そして、マリさんはミリちゃんに連れながら、魔王城の外に出た。
「なんかさっきと戦況は大分変っているな」
「きっと、カリバーさんが参戦したからじゃないかしら」
見た感じ、カリバーが加わって、幹部戦の戦況が一気に変わったんだろう。一人幹部を倒せば、他の幹部に対応出来るからな。
だから、手助けしなくても終わりそうだが、魔王軍のオーガとゴブリンが数が、まだ多くいるから厄介だな。
「幹部達は何とかなりそうだから、魔王軍を俺達で何とかしようか?」
「私とミリちゃんに任せて」
「マリさん、もう大丈夫なんですか?」
「ええ、もう大分落ち着いたから」
マリさんとミリちゃんが、何とかしてくれるみたいだけど、大丈夫かな?
体調も心配だけど、やり過ぎる心配もある。
「ミリちゃん行くわよ」
「分かった」
何の説明もしていないけど、ミリちゃんには分かるようだ。
「結構数が多いね。けど、オーガ程度なら捉えるのは簡単。魔動引力!」
すると、オーガやゴブリンだけをゆっくりと、宙に浮かせこちら側に引き寄せて行った。
この技は、以前にバーの時に俺にやったやつだ。
相手の魔力を捉えれば、こっちに引き寄せることが出来る技だが、こんな数でもいけるのか!?
「マユリン、凄いよ! 一杯来るよ」
「そうだな、まとめて魔王軍がこっちに来ているな……って、おい! こんなにいっぺんにヤバくねーかー!?」
「大丈夫、ふんっ」
俺の心配は無駄になりそうだ。
ミリちゃんの一言ですべて解決しそうだ。
バァーーーン!!
「ミリちゃん、偉いねー。ヨシヨシ」
こういう時、いつもミリちゃんは褒めて欲しいそうに訴えてくるから、褒めるのを忘れてはいけない。
「真由ちゃん、私には褒めてくれないの?」
「い、いや、マリさんはそういう……」
「……」
「はい、喜んで!」
俺はマリさんのジト目に、身の危険を感じたので、すぐに頭を撫でた。
流石、姉妹というか。ミリちゃんの性格はマリさんの影響をかなり受けてそうだ。
――こうして魔王軍は掃討され、幹部達も敗れ、魔王軍との戦いに勝つことが出来た。そして、負傷者があの女将が率いるマジックテックが対応して、周辺の魔王軍の残党をストレングスが掃討することになった。
このまま祝杯を上げたいところだが、まだ倒さなければならない者がいることを思い出さなければいけない。
そう、ダンロッパだ。
恐らく、ダンロッパはこの状況を部下を通じて把握しているに違いない。
あいつの作戦は、この魔王軍との戦いが拮抗すると見込んで、専属魔法団と組み、戦いが終わった直後に勝者を倒すことで、自分が勝者なる予定だったはずだ。
でも、魔王軍と戦う前に専属魔法団がやられてしまった。されに、魔王軍との戦いも激しいものであったが、ダンロッパ一味なら今いるメンバーで十分に討伐出来る。
これはダンロッパにとって誤算だっただろう。
だから、逆にダンロッパを討伐するなら今がチャンスだ。ダンロッパの居場所ならフェルティングスさんによって分かる。あいつは頭が切れるから、早めに仕掛ける方がいいだろう。
俺はまだ戦えるメンバーをライムさんに頼んで、集めて貰った。元々、そういう取り決めだったから、すんなりと俺の提案を受けてくれた。
そして、集まったメンバーは、ライムさん、メルリさん、カリバーさんと5人のAランクの人達だ。
これだけのメンバーが居れば十分過ぎるだろう。
今頃、ダンロッパとモリモンが部下達と、どこかに潜んでいるだろう。
場所はここからは遠くないはずだ。
そして、専属魔法団を討伐した時に、恐らくモリモンがテレポートして逃げたはずだから、魔力はそんなに無いはずだから、絶好のチャンスだ。
いよいよ、あいつの闇を粛正する時が来たな。
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