第192話 戦いは終わったけど
黒魔パーティクルは消滅し、魔王フィルリアルを倒すことが出来た。
俺もアルシアも魔力を使い果たして、フラフラになってしまったが、お互い抱いて支え合っている。
一応抱き合うことで、お互いの魔力を刺激することで活性化し、回復が早くなる。
だから、合理的な行為かもしれないが……。
それだけじゃない気がする。
なんか恋人同士のように抱き合うと言うか……うーん、俺も悪くないと言うか……
もう少しこのままでもいいかな……。
「2人とも凄いよ! 魔王フィルリアルを倒してしまうなんて!」
カリバーが近くにいることを忘れていた。ここは少し空気を読んでもらいたいね。
いや、それはそれで不味いか。
「結菜ちゃんはもう大丈夫なのか?」
「うん、怪我をしているわけじゃないからね。衰弱しているだけだったから、とりあえずは僕の魔力で何とかしたよ。でも、まだ休ませた方がいいね」
「おお! それは良かった! ありがとう」
「僕は、これから結菜ちゃんをこっちの陣営まで運ぶけど、君たちはどうする?」
うーん、まだ魔王軍は残っているなぁ。それより、ミルネが様子を見に行ったけど、ミリちゃんの方が気になる。
もしかしたら、まだ下らないことで時間を潰しているかもしれないが。
まぁ、ポンタがいるからアホなことはしていないと思うが、俺達も様子を見に行った方がいいだろう。
「アルシア、動けるか?」
「うん、大丈夫。けど、ちょっと支えが欲しいかな……」
「分かった。俺もそう思っていた」
「君たち仲いいね。これが百合というやつだね」
「違うー!!」
カリバーも無垢郎の悪影響を受けているんじゃないか?
「と、とにかく、俺達は城内にいるミリちゃんの様子を見に行ってくる。カリバーは結菜ちゃんを預けたら、みんなに魔王は倒したと報告してくれないか? みんなの士気は上がるだろうし、逆に魔王軍は乱れるんじゃないか?」
「分かった。そうするよ。僕も加勢するし」
「じゃあ、お願いするよ。俺達もラビットちゃん全員連れて、掃討作戦を行うよ」
カリバーが結菜ちゃんを連れて行くのを見届けると、俺達も魔王城へ移動を開始した。
抱き合った効果があったのか、歩けるぐらいには回復していた。
「アルシア、大丈夫か?」
「うん、真由がいるから大丈夫」
「そうか……」
なんかさっきからアルシアが甘えているように見えるな。
見た目だけなら、俺の方がガキだから、逆になりそうだけど、アルシアはもう外観を気にしていないように思える。
俺を浩二として、見てくれているのかな?
そして、俺達は城内まで辿り着いた。
場所的にそんなに離れていなかったのもあるが、魔王軍と遭遇することは無かった。多分、大分数が減ったんじゃないか?
それとも、魔王を倒したから、周辺に居たやつは逃げたかもしれないな。
「外から中を確認しよう。もし、まだ戦闘中なら俺達は足手まといになるかもしれない」
「そうね。でも、大きな魔力も変化も感じないわね」
「うーん、音もしないからもう終わったかもしれないな。中に入るか?」
「うん」
ゆっくりと、俺達はゆっくりと大きい扉を開けた。
「やっぱり、戦いは終わってそうだな……」
「真由、あそこにミリちゃんとミルネがいるわ。横になっているのがマリさんかしら?」
「そうだけど、なんか様子が変だな」
ここから見ると、ミルネとミリちゃんが泣いているように見える。
もしかして、マリさんは助からなかったのか?
「アルシア、行こう」
「ええ」
俺達が二人の元に駆け寄ると、初めて俺達の存在に気付いたのか、泣き崩れた顔で見上げた。
「どうしたの!? マリさんに何かあったの!?」
「二人とも、どうして泣いているの!?」
俺とアルシアは尋ねると、ミリちゃんは両手に何か持っていて、それを俺達に見せた。
「こ、これって、もしかして、ポンタ!?」
「ひどい……ポンタ……」
ポンタで間違いないが、無残にも引き裂かれていた。どう見ても半分以上は無い。
これは過半数が破損するともう魔法で修復するのは不可能だ。
「マユリン……これ……。何とかならないかな……」
「うーん」
ミルネが見せたのは、残りのポンタの破損した部分を集めたものだった。
「何とも言えないけど、無垢郎なら何とかしてくれるかもしれない。だって、絶対不可能と言われたていたアルシアの魔力を復活させたんだからな」
「そ、そうよ。無垢郎さんなら私みたいに奇跡を起こしてくれるわ」
そう、過半数を越えたら修復出来ないのは、魔力で治すから不可能であって、魔力を使わずに治せれば何とかなると考えているんだが……どうだろうか……。
「ミルネもミリちゃんも、みんなでお願いしよう。だからもう泣かないで」
「うん、分かった。無垢郎にお願いする」
「あたしもお願いする」
「無垢郎さんならきっと、治せるわ」
俺もそう思うんだよな。だから、ポンタが死んだと思っていない。
もし、無理だったとしても、このメンバーでお願いされたら、あいつはとんでもない力を発揮して可能にしてくれるだろう。
「じゃあ、泣くのは止めよう。ポンタはまだ死んじゃあいない」
「分かったよマユリン」
「ミリはもう泣かない」
「そうだね」
ポンタはミリちゃんが大事に持ってもらうことにした。
「ところで、マリさんは大丈夫なんだよね?」
「うん、眠っているだけ」
「それは良かった」
マリさんって、綺麗な銀髪で、ミリちゃんの面影があって可愛いんだよね。でも、年齢的には俺に近いような気がする。
「…………ん? ここは?」
「あっ」
ちょうどその時、マリさんが目を覚ました。
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