第191話 最後の戦い!
アルシアの思わぬ行動で我に帰ることが出来たおかげで、MPCでアドレナリン全開のフルパワー状態で自我が保てた。
つまり、最強モードだ。
でも、気分がいいから調子に乗りそう。
「ザイロン! 時間が無いからすぐに終わりにしてやる! 言い残すことがあるなら、今言っておけよ!」
「調子に乗りすぎじゃろ! わしだって、魔王フィルリアル様の魔力を全身に纏っておる。思い知らせてうやろう」
ザイロンは両手の拳を握ると、距離が結構あるのに連続でパンチを打って来た。魔力が常時魔力を纏っている状態だから、必然的に魔動拳になる。
しかし、普通なら空振りで終わるはずが、何故か俺のいる所まで衝撃波みたいなものが、超スピードで飛んで来た。
「うん? 何か飛んで来たぞ」
「どうじゃ! わしはこの距離で拳を振るだけで、常時纏っている魔力が飛び出し、魔動砲になるんじゃ。最強じゃろう! 今のでお主はもう……ん? 何故じゃ!? ダメージを受けてないじゃと!?」
「ダメージは受けたかもしれないが、今はハイなんでね。痛みは感じない」
「なんじゃとー!? ふんっ、ならばこのまま押せば、わしの勝ちは確定じゃな。わしの魔力は無限に近い! お主が死ぬまで打ち込んでやるぞ!」
ザイロンはさっきの攻撃を連発で打って来た。この衝撃波みたいなものが飛ぶパンチなんて、接近戦でも遠距離でも対応出来るうえに、魔力が無限ときたら詰んでいただろう。
しかし、今の俺には禁じ手で全体のパワーが上がっている状態で、そこから集中することでさらにパワーと剛性を上げれる。そして、そこから魔力も集中させるともうチート状態だ。
それでダッシュすれば、瞬間移動みたいにザイロンの前に現れることが出来る!!
「なにー!! いつの間に!?」
「今度は俺のターンだ!」
ボゴォ!!
「な、なんじゃー、魔力を感じないのにこの威力!」
「これが覚醒状態の普通のパンチだ!」
いきなりMPCで殴って、ガムイの時みたいにカウンターを貰いたくないからね。
そして、確実に当てたらMPCでパワーと拳に集中させて、さらに威力を上げる。
バゴォーーーン!!!!
「うわぁー!!」
「これがMPCによるパンチだ!」
「何だ……この凄まじい威力……動けん……」
「まだまだこれから!!」
ここまで威力を高めると、一気に吹っ飛んでしまうから、右で殴ったら、即座に左で殴り返して、連続で攻撃した。
ザイロンはもうサンドバッグ状態だ。
そして、次の攻撃で俺のターンは最後になるだろう。
このアドレナリン全開フルパワーも長くは持たない。もうすぐ反動で動けなくなるかもしれない。これで倒せなかったら俺の負けだ。
だから、次の一手で最後だ!
「そして、これが! 習得するのに苦労した魔力との合わせ技! アグリケーションだー!!」
「ま、待て……」
「ぬおおおおー!!」
俺はめいっぱい力を集中させ、ザイロンに攻撃が当たる瞬間に魔力を一気に爆発させた。
バァーーーン!!!!
魔力が爆発したと同時にザイロンの上半身は粉砕し、残りの部位は城の方まで吹っ飛んで行った。
「真由がザイロンを倒したわ!!」
「よし、やったぞ! ザイロンを倒した! でも、身体が思うように動かない……」
確かにザイロンには勝ったけど、まだ肝心なやつがいるのを思い出さなければならない。
「げっ!! もうすでにザイロンから離れていやがった!!」
そう、黒魔パーティクルだ。
黒魔パーティクルは舞い上がり、周回を始めた。
何と言うかこれは……俺を狙っている!?
「なんか嫌な予感がする……」
その嫌な予感は的中し、一直線に俺の方に向かって来た!
「に、逃げられない……ア、アルシア!」
「大丈夫! 任せて!」
アルシアは高速移動で一気に俺の前に現れ、動けない俺を抱えると、今度は下降してくる黒魔パーティクルに手を向けた。
「これで終わりよ! デス魔法!!」
すると、アルシアの掌から、どす黒い澱んだ光が現れ、黒魔パーティクルを目掛けて一気に上昇して行った。
黒い煙に黒い光、どちらも薄気味悪い。
そして、両者がぶつかり合いと、バチバチと音と光を放ち、その度に衝撃が走った。まるで、俺の頭上で雷が鳴っているかのようだった。
でも、アルシアが俺を抱えてくれているおかげで、安心感はある。
「うぅ、真由、相手の魔力が大き過ぎて、倒せない……あともう少しなのに」
この為に、アルシアは魔力を温存していたのに、それでも駄目なのか?
確かに、ぶつかった部分は、光と共に煙も消失してくのが分かるから、利いているのは間違いない。
しかし、黒魔パーティクルの煙の量が多いから、全部消滅させるのはアルシアだけの魔力では厳しいかもしれない。
ならば、俺の残っている魔力をアルシアに!
俺は両手でアルシアを抱きしめた。
「アルシア! 俺も魔力を送るよ! だから、頑張って!」
「あっ、うん。私頑張る」
なんか、アルシアの顔が一気に赤くなった。でも、アルシアの放つ光も増したような気がする。
「イケー! アルシア!! あと少しで『魔王軍から人々を守る』という夢が叶うぞ!」
「はっ! そうね! この魔力は私だけじゃない! みんながいたからこその魔力! 私やるわ!!」
アルシアの放つ光が、どんどんと増していき、ついに黒魔パーティクルを全て飲み込んだ。
すると、花火が燃え尽きたように、魔力の残骸がひらひらと舞い落ちて来た。
「アルシアやったなー! もうあいつの欠片もないぞ!」
「はぁ、はぁ、うん、ありがとう」
アルシアはそのまま崩れてしまった。俺も魔力を使い果たしたから、支えることは出来ず一緒に倒れ込んだ。
「ごめん、真由」
「うん、俺も動けないから」
「しばらくこのまま……」
「えっ」
俺は少し恥ずかしいが、しばらくアルシアを抱いた。
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