第188話 結菜ちゃんを救え!
――――場面変わって、ここは魔王城の敷地。
俺は結菜ちゃんを抱き抱え、窓から外に飛び降りたが、それでも黒魔パーティクルがすぐそこまで追って来た。
とにかく、走ろう! カリバー達が居るところまで逃げれたら何とかならないか?
「真由お姉ちゃん、私から離れて……」
「え!?」
突然、結菜ちゃんは俺を両手で突き放し、俺の手から放れた。そして、その直後に黒魔パーティクルが結菜ちゃんに覆い被った。
「結菜ちゃん!?」
俺は結菜ちゃんを救おうと、引っ張り出そうとしたが、煙のように掴めない黒魔パーティクルに為す術が無かった。
そうして、結菜ちゃんは黒い煙を纏うと、魔王フィルリアルに変貌した。そして、その時にアルシアも下に降りて俺の所にやって来た。
「真由、これが……魔王フィルリアル」
「う、うん」
でも、以前の時は、魔王らしく落ち着いた雰囲気があったが、今はスタミナが切れたような辛そうな感じだ。これは早く何とかしないと結菜ちゃんが死んでしまう。
「アルシア、今デス魔法を打ったら、当てられるか?」
「こんなに魔力が強かったら無理だわ」
「やっぱり、弱らせないと無理か」
少なくとも結菜ちゃんは弱っているから、もしかしたらと思ったが、黒魔パーティクル自体を弱らせる必要があるのか?
「でも、どうやって、あいつだけを弱らせればいいんだ?」
「多分だけど、黒魔パーティクル単体は難しいけど、寄生した状態なら寄主にダメージを受ければ、弱らせることが出来ると思うわ。でも、それだと……」
「うう、結菜ちゃんに攻撃をするのか……それは無理だよ」
「もし、真由が取り押さえてくれれば、デス魔法を当てることが出来るわ」
俺は以前より、修行のおかげでレベルは随分上がったと思うし、MPCとの組み合わせで大分強くなったが、それでも無理のような気がする。
しかし、それしか方法が無いならやるしかない。
「分かった、やってみるよ。アルシアは準備をしておいてくれないか?」
「分かったわ」
その時、魔王フィルリアルは崩れるように、地面に膝と両手をついた。見るからに苦しそうだ。
「真由! チャンスよ!」
取り押さえると言っても、こんな苦しそうな結菜ちゃんだったら、気が引けるがこれしか助ける方法がない。
「ごめん! 結菜ちゃん!」
俺が結菜ちゃんの所に行こうと思った瞬間、もの凄い速さの高速移動でこっちにやって来る者がいた。
「待て―!! そうはさせんぞ!!」
そいつは最高幹部のザイロンだった。そして、それを追うようにカリバーとライムさんもやって来た。
「真由君! ザイロンを止めるんだ! 魔王にさせてはいけない!」
「はっはっはー! 魔王フィルリアル様!! そいつはもう駄目じゃ! わしを使って下さい! わしならもっといい働きが出来る! あなた様の願いも叶うであろう!」
「真由! 止めろ!」
そうか、ザイロンは黒魔パーティクルを自分に寄生させて、再び魔王になりたかったのか。
それは好都合じゃないかー!
「いや!! このままザイロンに魔王になってもらう!! 手を出さないでくれー!」
「真由君!?」
「何馬鹿な事を言ってやがる!! 俺とカリバーでも苦戦した相手だぞ!! 魔王なんかになられたら終わりだぞ!!」
「はっはっはー! やっぱり、真由はわしらの味方だったかー! 感謝するぞ!」
「違うわー!!」
こいつらミリちゃんの件で、何か勘違いしているんだよな。俺はただ、結菜ちゃんから黒魔パーティクルが放れてくれたら、いいと思っただけなんだけど。
すると、俺とザイロンの思惑通り、黒魔パーティクルが結菜ちゃんから放れ、ザイロンに渦を巻きながら寄生していった。でも、受け入れていたはずのザイロンだが、何だか苦しそうだ。
そして、ちょうどその時にカリバーとライムさんが追い付いて来た。
「真由! 何故止めなかった!?」
「黒魔パーティクルはそう簡単には止められない。完全にザイロンに移れば、あの黒い煙の中に女の子がいる。その女の子はただの人間だ。俺はその子を助けたい」
「そうなのか」
カリバーとライムさんは驚いた表情をしてるが、そもそも魔王フィルリアルのことをそこまで知らないからな。
「マユリーン!!」
その時、ミルネが走ってやって来た。
「ミルネ!? ということは、あの剣士に勝ったのか?」
「勝ったよ!」
「凄いじゃないかー! 怪我はしてないか?」
「えへへ、大丈夫だよ」
あとはミリちゃんとポンタが来れば、ラビットちゃん全員集合になるんだが、まだ来ないか。
「マユリン、フェルティングスさんから、こっちに援軍を回して欲しいって言っていたよ」
「あっちは魔王軍と幹部3人だから、手を焼いているかもしれないな」
「よし、俺が行こう。真由、ここは任してもいいか?」
「はい、行ってあげて下さい」
ライムさんがここを離れると、黒魔パーティクルとザイロンは完全に同化した。すると、すぐそばには、ぐったりとした結菜ちゃんが倒れていた。
「カリバー、結菜ちゃんの回復を頼んでいいか?」
「分かった」
「ミルネは、城に入ってミリちゃんと様子を見てくれないか? ポンタもいるし、大丈夫だと思うけど、相手がお姉さんだから、ちょっと心配なんだ」
「いいよ、マユリン」
「俺とアルシアで、こいつをやる!」
これで魔王はザイロン。遠慮なく戦えるようなった。
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