第181話 極超スピード魔法
ロウムは『極超スピード魔法』という技を出す為、魔力を高め一気に俺の周囲を弾丸のように飛び回った。
確かに言うだけのことはあって、目では捉えられない。
「なんてスピードなの。真由気を付けて!」
「あーはっはっは! どうだ驚いたか! このスピードについて来れないだろ! しかも、俺にはいつでもお前を攻撃出来るんだぞ! 避ける事は出来んぞ! あーはっはっは!」
「確かにアルシアの時より速くなったみたいだけど、勝てるかどうかは別の話だと思うぞ」
「なんだとー!! ならMAXスピードでお前を一発で仕留めてやる!!」
こいつはスピード馬鹿だな。
「あーはっはっは!! もうお手上げだろー!! 無駄なハッタリで動揺を誘ったかもしれんが、そんな手には引っ掛からないぞ! あーはっはっは!!」
「いいから早く攻撃してこいよ。次の行動が遅いんだよ」
「くそっ! 舐めやがって!! そんなに死に急ぎたいなら、そうしてやるー!! はっはっは!! 死ねーー!!」
バァーン!!
「真由!? えっ!?」
「……そんな」
バタン!
ロウムは俺の裏拳を自らのスピードで顔面に食らい、そのまま倒れた。
「真由、これは一体どうなっているの? 真由には見えていたの?」
「いいや、流石にあれは見えなかった。けど、あいつの飛んでいた軌道と位置、攻撃のタイミングは分かったぞ」
「どういうこと?」
「多分、極限までスピードを上げると、反復横跳びのように単純な動きのパターンになってしまう欠点があるんだろう。さらに言えば、ペラペラ喋っていたせいで、どういう軌道で飛んでいたかも分かった。あとは攻撃のタイミングだが、あいつはご丁寧に「死ねー」と叫んで教えてくれたからな」
まぁ、逆に超スピードであちこち飛ばれた方が厄介だったんだけどね。でも、そう出来なかったのは、スピードに特化した性かもしれない。
「そこまで考えてなんて、やっぱり真由って凄いわ」
俺は基本、魔法に頼らない考えを最初にするからな。意外にその方が強いかもしれない。でも、せっかく魔力もMPCでコントロール出来るようになったから、もう少し試したかった。
それにしても、もう俺の身体はほぼ治っているな。
「アルシア、俺はもう身体は大丈夫だから、自分で歩くよ」
「そうみたいね。でも、あんまり無理しないでね」
こうして、俺とアルシアは先を急ぐことにした。
――そして、辺りがすっかり明るくなる頃には、専属魔法団の本拠地に到着することが出来た。
本拠地と言っても、小さいな集落があるだけで、俺が思っていたのと少し違った。
俺はもっとアジトみたいに秘密の隠れ家のような雰囲気を想像していた。
でも、実際は生活感があって、知らなかったらただの村にしか見えないだろう。
まぁ、スパイならいい感じかもしれないが。
しかし!
ここでついさっき戦闘あった痕跡が一杯ある。ということは、ベルリア学園の討伐隊がもう制圧したんだろう。
「そこにいるのは真由達か!?」
そう声を掛けたのはオリンさんだった。
「遅れてすみません! 今、到着しました」
「ごめんなさい。もう討伐完了したみたいね」
俺とアルシアは遅れたことを詫びると、オリンは駆け足で俺達の前に来てくれた。
「気にすんなよ! あたいらもそんな成果を上げてないんだ。ダンロッパとモリモンはここに居たけど、テレポートで逃げられたし、ガムイは最初から居なかった。くそ―あいつだけは許せんかったのにー!!」
「そうだったんですね。でも、ガムイはアルシアが倒したよ」
「えーー!!!? あいつが一番厄介だったのに!? アルシアスゲーじゃん!」
「ははは、そんなことないわよ。一応、拘束魔法を掛けてあるから、ベルリア学園の方で対処してもらうと助かるわ」
「おお!! 分かった! あたいが止め刺しに行って来るわ!!」
「オリンやめなさい!」
オリンさんが本当に止めを刺しに行こうとした時、建物の影からメルリさんが呼び止めた。
「もう勝手なことをしないで。これから魔王城前に集合するんだから」
「えー! じゃあ、このまま放っておくのか!?」
「サポータに任せます」
「ちぇ、分かったよ」
オリンはとても悔しそうな表情をしている。でも、ガムイに殺されかけたのはメルリさんだからね。
メルリさんは結構冷静な人なのかもしれない。
「ところで、ここに来る道中で、極超スピード魔法使いのロウムに遭遇しなかったかしら? あのスピードはかなり厄介で――」
「はい、もう倒しました」
「真由が倒したのよ」
「す、凄いわね」
「真由スゲー! あのスピードにはあたい達も翻弄されてしまったのに!」
確かにあのスピードは厄介でけど、どこか抜けているキャラだったからな。もし、ガムイみたいなやつだったら、かなり苦戦しただろう。
「おーい! 真由達が来たのか!?」
そこに現れたのは、ベルリア学園の魔法剣士のフェルティングスだった。
「フェルティングス聞けよ、あの2人がガムイとロウムを倒したみたいだぜー」
「おーう、あれを倒すとは恐れ入る」
「遅れてすみません」
「何を謝っている、ちゃんと仕事はしているではないか」
初めて出会った時は、敵だったので怖いイメージがあったけど、こうして見るとみんな優しい顔をしている。
「ダンロッパ達を逃してすまんかったけど、あいつらが逃げる前に魔動石を忍ばせておいたから、いつでもテレポートで追うことが出来るぜ」
「おお!! それならいつでも倒しにいけますね」
「その時は俺達ベルリア学園の討伐隊も協力するぜ。でも、今は魔王軍討伐が先だ。来て早々悪いが、出発するぞ」
これでダンロッパには、こちらのタイミングで倒しにいけるから、今は追わない方がいいだろう。
今やるべきことは、目の前に迫っている魔王軍だ。その前に俺達は、というかアルシアにデス魔法を取得をしないといけない。
確か、ベルリア学園のリーダーのライムさんは、魔王フィルリアルを知っていたから、この3人も知っているよな?
「ベルリア学園の皆さんは、先に行って下さい。俺達は魔王フィルリアルを倒すために、もう少しここにいます」
「ここで何を?」
「魔王フィルリアルを倒すにはデス魔法が必要になります。そこでアルシアにその魔法を取得してもらいます。まだ殺人魔法使いはいますよね?」
全員、話も出来ないほど倒されいたら、終了だぞ。
「ああ、何人か捕えているが、そんなこと出来るのか?」
「分かりませんが、試す価値はあると思う」
ベルリア学園の人達は少し半信半疑であると思うが、一応同意してくれた。
こうして、アルシアが魔法を取得するまで俺達はここに残り、ベルリア学園の討伐隊の殆どが集合場所の魔王城へ向かった。
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