表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/202

第179話 アルシアの告白

 後ろからアルシアに抱きしめられている状況だけど、本当のことを言うなら、今しかないと思う。



「アルシア、聞いて欲しいことがあるんだ」 

「なに?」

「実は……」



アルシアの表情は見えないけど、優しい声で何となく分かる。それでも、やっぱり緊張してしまう。



「えーと、その」



 おいおい、ここまで来て何ドモッているんだ。言うんだ俺!?



「今から言うことは、冗談だもなく真面目な話だからね」

「うん」

「実は俺……男なんだ」

「うん、知ってた」


「何言っているのか分からないかも知れないが、言葉通りなんだ。騙すつもりは無かったと言えば嘘になるんだけど……その、そんなつもりは無かったというか、とにかくごめん! もっと早く言えば良かったんだけど、中々タイミングが無くて……。驚くのも当然たけど、本当に……ん?」



 なんか必死だったらから、分からなかったが、今「知ってた」って言ったのか? 

 いやいやいやいや、知ってて俺にあんなことをしてくれたのか?



「真由、いや浩二君なんでしょう?」

「えー、あ、うん。でもいつから知っていたの?」

「あっちの世界に行った時かな。でも、どうやって知ったかは秘密ね」



 ということは、あいみか無垢郎か? いや、カリバーも。

 いや、詮索はやめよう。



「あの……怒らないの?」

「こらー!」

「えっ!?」

「ふふふ」



冗談みたいだけど、そうやって笑ってくれると、救われた気持ちになる。もしかして、俺を気にかけてくれたのかな?



「ありがとう真由。本当のことを言ってくれて。私も真由に聞いて欲しいことがあるの」

「う、うん」



 アルシアはゆっくりと前に乗り出し、俺の顔を恥ずかしそうに見つめた。俺もアルシアの話を真剣に聞きたいから、目を見ようとするが距離も近いし、なんか恥ずかしい。



「真由……私ね……」

「うん」



 アルシアとくっついているから、アルシアが緊張しているのが伝わってくる。



「私……真由が好き……」

「えっ」

「真由も浩二君も、全部が好きなの」

「アルシア……」


 

 俺はここで告白されると思っていなかった。自分のことで精一杯だったし、気持ちが追い付かない。



「うん、えーと……」



 何て返事をすればいいんだろう? 

 アルシアのことは嫌いじゃないし、断る理由なんてないはずなのに、なんか気持ちの整理が出来ないというか、まだはっきりしない。


 でも、アルシアはちゃんと自分の気持ちを口にしてくれたんだから、ちゃんと返事をしたいんだが、なんて言えばいいのか……。



「真由?」

「……え?」

「突然、こんなことを言ってしまってごめんなさいね。びっくりするよね」



 なんかアルシアに気を遣わせてしまった。ここは正直に今の気持ちを言おう。



「アルシアの気持ちはよく分かった。でも、俺の気持ちがまだ整理出来ていないんだ。気持ちの整理がついたら、ちゃんと返事するからそれまで待ってもらってもいいかな?」


「うん、ありがとう。私ずっと待っている」

「アルシア……」



 そして、アルシアはゆっくりと後ろに引き下がり、俺を抱きしめ再び魔力を送った。


 アルシアは真由の俺も、浩二の俺も全部が好きと言ってくれて、正直嬉しかった。

 だから、真由とかこだわる必要はないんだが、俺は心のどこかで浩二の姿で返事をしたいという気持ちがある気がする。


 やっぱり、いくら外見が変わろうとも、俺は浩二なんだからな。


 俺には元に戻れるかもしれない、無垢郎から貰ったドリンクがある。だから、ちゃんと返事する覚悟が出来たら、ミリちゃんが怖いけど飲もうと思う。

 

 

 でも、俺はアルシアにまだ隠していることがある。魔王フィルリアルのことだ。

 危険が及ぶかもしれないということで、隠していたが、本当にそれでいいのかな? 

 

 もう明日には魔王城を攻め落とすのに、何にも対策が無い。恐らくこのまま無策で行けば、結菜ちゃんは助けられない。


 だから、隠さずにアルシアにちゃんと話を……。


 ……。


 いや、違う。本心は違う。


 最初こそ本当に危険が及ぶから、隠していたけど今は違う。

 隠し事は良くないから、ちゃんと言う? それも違う。



 俺は単純にアルシアに助けて欲しいのかもしれない。そこにミルネ、ミリちゃん、ポンタも含まれるかもしれない。


 ただそれを認めたくないから、何か理由付けをしていたのかもしれない。

 情けない話だが、真実はこれだ。


 でも、今更そんな話をしたらどうだろう?


 うーん……。



「真由、どうしたの?」

「アルシア……」

「真由、いいのよ。一人で抱え込まなくても」

「えっ!?」



 アルシアは俺の気持ちが分かっていたのか?



「最近の真由、何かに悩んでいるように見えたわ。特にここ最近」

「うん……」

「真由が悩んでいるなら、私も一緒に悩みたい! 力になりたいの。もし、それが危険な目に遭うかもしれなくても」

 


 再びアルシアは前に乗り出し、さっきと違って真剣な表情で力強く話してくれた。

 どうやらアルシアには俺の気持ちはお見通しのようだ。



「ありがとうアルシア、全部話すよ」



 俺はもう悩むのを止めて、アルシアに全部話すことにした。

お読み頂き、ありがとうございます。


気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ