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第178話 アルシアの懸命の看病

 俺は眠っていたのか、気を失っていたのか分からないが、次に目覚めた時は周りがもう明るくなっていた。


 あれだけの負傷したのに、痛みがほとんど無い。それどころか、全身の魔力が活性化している感じがして、気分はいい。


 しかし、身体は指先ぐらいは動かせそうだが、まだほとんど動かない。



「真由、起きたの?」

「うぅ……」



 まだ思うように声が出ない。それと今気付いたんだが、アルシアは後ろから俺を抱くようにして、お腹辺りを両手で添えている。


 ちょうどその辺りは、ガムイから致命傷を負わされた所だ。



「お腹の傷を優先的に魔力を注いだから、他の部分はまだなの。だから、まだ喋らない方がいいわ。真由だったら、明日には動けるようになると思うわ」

 


 俺は身体が頑丈みたいだから、前回みたいに治るのは早いかもしれないが、流石に明日で治るのは早過ぎると思う。でも、それを可能にするのはアルシアの魔力注入量が多いからじゃないのか?


 なんか無理させてないか?



「でも、もうお腹の方は大丈夫よ。だから、ジュレを食べて少しでも回復させましょう。準備で少し離れるけど、我慢してね」



 アルシアはゆっくりと俺から離れて、ジュレが入っている鞄の方に向かった。

 すると、身体が思い出したかのように、急にあちこち痛み始めた。


 やっぱり、アルシアの魔力のおかけで今まで痛みが無かったのか。


 うぅぅ……。これぐらい耐えてやるさ。



「ごめん真由、痛かったでしょう?」



 アルシアはすぐに戻って来て、また後ろ側から優しく抱いた。そして、ジュレを一口サイズにして、スプーンで食べさせてくれた。


 しかし、いくらジュレがゼリー状でも、噛んで飲み込むことが出来ない。液状ならいけそうな気がするが。


 ガムイに何回か顔を魔力を纏わせた状態で蹴られたからな。魔力を纏っていたせいで、顎の骨も逝ってしまったみたいだ。皮肉にも魔力を纏っていたおかげで、治りも早いわけだが。



「うーん、困ったわね」



 すると、アルシアはゆっくりと、後ろから前に回り込んだ。



「ちょっと嫌かもしれないけど、我慢してね」



 アルシアはジュレを自分で噛み、そして、それを人工呼吸のような恰好で、俺の口元まで運んでくれた。結果的にはキス以上のことをしていることになるかもしれないが、もちろん、嫌なわけはない。


 しかも、アルシアは俺を助けようと必死になってくれている。むしろアルシアの方が大丈夫なのか心配だ。


 アルシアにはまだ言ってなかったが、俺の正体は男だ。このことを知ったらショックを受けるかもしれない。


 だからといって、言わないわけにもいかない。ミルネとミリちゃんはもう知っているわけだし、アルシアだけ言わない方が問題だ。


 喋れるようになったら言おう。


 

 

 そして、食事が終わると、アルシアは鞄から服を出した。



「真由、ここを離れるわよ。また手下が来るかもしれないわ。おんぶするからちょっと我慢してね」



 アルシアはゆっくりと起き上がり、魔法で俺を宙に浮かせてアルシアの背中の方に移動させ、鞄から出した服で固定した。


 さっき「また手下が来るかも」って言っていたけど、俺が意識を失っている時にガムイの手下が襲って来たのかな? 

 たださえ俺に魔力を四六時中送っているのに、手下とも戦っていたなんて……。

 

 その上、おんぶまでしてもらって「身体が痛い」なんて言ったら罰が当たりそうだ。



 そして、俺はアルシアにおんぶをしてもらって移動した。


 おんぶをすることで、全身からアルシアの魔力を感じることが出来る。それはとても心地が良かった。


 

 しばらくすると、俺は心地よさにいつの間にか眠ってしまった。



 次に目を覚ますと、辺りは薄暗くなっていて、周囲の草木が魔力発光して、少し幻想的な感じになっている。


 いつからここにいたのか分からないが、また、アルシアが後ろから覆い被さるようにして抱いて、魔力を俺に流していた。



「真由、起きたの?」

「ああ、ありがとう」

「話せるようになったのね」



 俺の身体は、まだ完全ではないが、大分良くなったみたいだ。



「アルシア、ありがとう。もう身体も動くようになったよ」

「それは良かったわ。でも、真由がやられた時は心臓が止まるかと思ったわ」

「ははは、ごめん。けど、まさかアルシアがガムイを倒すとは思ってなかったよ。魔法以外でも強くなったんだね」


「ふふふ、今度は私、真由をちゃんと守ったわよ」



 アルシアが居なかったら、俺はあいつに残虐に殺されていただろう。それにここまで短期間で回復出来たのは、単に俺の身体が丈夫だけではなく、アルシアの魔力を目一杯注ぎ込んでくれたからだろう。


 しかも、この状況でガムイの手下から守っくれたわけだから、かなり無理をさせてしまったかもしれない。


 だから、俺が男であることを隠したままでいたくはないから、ちゃんと話そうと思う。

 

 この先、魔王軍と戦闘になるだろうし、魔王フィルリアルと戦うとなれば、命懸けに……。

 そうだった、魔王城に集合するのは明日なんだよな?


 これは不味いな

 

 俺はまだ魔王フィルリアルから結菜ちゃんを救う方法を見つけてない。

 これもアルシアに相談すべきか……。


 いや、あの強さは異常だから、全力を出すのを躊躇してしまうようなことは言えない。アルシアも大事だ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

登場人物が多く出てくるので、確認用を作成していたのですが、投稿するのを忘れてました。

173話~174話に挿入しています。

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