第176話 ネスタリア学園の惨事
カリバーのテレポートでネスタリア学園に到着すると、魔王軍との戦闘で荒れ果てた状態になっていた。
「これは酷いなぁ」
「とにかく生存者を探しましょう」
「じゃあ、僕は高速移動でネスタリア街に寄って、それから、オーガを一掃しに行くよ」
「ああ、俺とアルシアもここの安全を確保出来たら、専属魔法団の所に行くから」
そう言い残すと、カリバーは物凄い速さの高速移動で去った。あの速さならすぐに着くだろう。
「真由、手分けして探しましょう。私は校舎を探すわ」
「じゃあ、俺は外を探すか」
アルシアと別れた後、俺は講堂の方に向かった。
グランドにはオーガの死体が、あちこちに転がっている。みんな無事なんだろうか?
そして、講堂に近づいてくると、講堂の脇に女の子2人が倒れているのが見えた。
俺は急いで、倒れている女の子に駆け寄り、声を掛けた。
「大丈夫か!?」
すると、俺の声に反応するように女の子2人は、ゆっくりと顔を上げ俺の方をみた。とりあえず、大丈夫そうだな。
俺は手を差し伸べると……。
「ありがとう……えっ!? お、お前は!?」
「何でここに!?」
俺の顔を見るなり2人は驚き、怯えて始めた。
うーん、この2人は、ダンロッパに所属するAランクの女の子達だったかな。
俺がダンロッパの戦いで負傷していた時、止めを刺しに来た子だ。
この様子だとオーガと戦って、魔力が尽きてしまったというところか。一応、学園を守ろうと戦ったようだから、悪い人間ではなさそうだ。
「ま、真由!? あ、あ、あの時はごめんなさい!」
「何でもするから許して!」
うーん、前と立場が逆になったから、復讐されると思っているな。
そんな事するつもりはないが、女の子に何でもするからなんて言われたら、からかいたいくなるぞ。
「じゃあ、エッチなことでもしようかな。ひっひっひー」
男の感覚で言ってしまったが、もちろん冗談だ。
「そんな事で許してくれるならいいよ」
「私も喜んで」
「いや、冗談だからね!」
ちゃんと冗談だと理解してくれてないような気がするが、大丈夫か?
ちょうどその時、アルシアが俺の方に向かって来るのが見えた。
「真由、そこにいたのね。あ?」
アルシアは2人を見て、一瞬止まった。俺はその反応を見て、すぐに声を掛けた。
「アルシア、もう大丈夫。今和解したから」
「ごめん、アルシア。私達が間違っていたよ」
「真由には身体で許してもらえたから」
「身体?」
「だから、あれは冗談だー!!」
アルシアはちょっとムスッとしている。うーん、呆れているのか?
しばらくするとアルシアが気を取り直して話し始めた。
「この学園にはもう魔王軍はいないみたい。ケイトさんが保健室で手当てを受けているわ。他のメンバーはネスタリア街に応戦に行ったらしいわ」
「そうか。Sランクのケイトさんでもやられてしまうんだ」
「あなた達も早く保健室に連れて行かないと」
こうしてこの2人を保健室に連れて行き、手当を受けさせた。そこにはケイトさんが居たけど、元気そうだったので、ネスタリア学園の守備を任せて、俺とアルシアはネスタリア学園を出た。
俺達にはダンロッパ、モリモン、ガムイが潜伏していると思われる、専属魔法団の拠点を潰しに行かないといけないからな。
今回はベルリア学園の主力、3つの討伐隊も一緒だから心強い。ダンロッパもガムイも、俺は一回勝ってるし、問題無いだろう。
これでダンロッパも終わりだろう。けど、何か物足りないなぁ。どうせならもっと懲らしめてやりたいが。
けど、今回は魔王軍も絡んでいるし、あいつばっかり構っていられない。
それに俺はまだ、黒魔パーティクルに精神支配された魔王フィルリアルから、結菜ちゃんを助ける方法を見つけていない。
このままだと、明後日には魔王城を攻め落とすことになるから、それまでに方法を考えないといけない。
気持ちばかり焦るが、何も方法が思いつかない……。
「真由、どうしたの?」
「あ、いや」
「何か気になることでもあるの?」
アルシアにだけは言った方がいいかな? いや、駄目だ。危険過ぎる。
魔王フィルリアルの強さは半端ないから、一瞬の気の迷いが命取りになるかもしれないし。
「何でもないよ。それにしてもこの森は通ったことがないな」
「こっちの方面はあまり通らないかもね」
方角的には、ベルリア学園が東方向なら、魔王軍の領域は北方向、厳密には北東。
そして、専属魔法団の拠点は南東方向になる。
詳しい場所は、アルシアが知っているから問題無いだろう。問題は俺の体力だな。
こうして、俺達は南東方向に早歩きのペースで進み続けた。そして、夕方になると流石に俺のスタミナも切れきた。
「アルシア、そろそろ休憩しない?」
「そうね、もうすぐ日が暮れそうだし、野営する場所を探さないとね」
正直、休憩を提案してみたものの、本当はもうこの辺りで野営したかった。早歩きでも、こんなにずっとはしんどかったからな。
「じゃあ、どの辺りにする?」
「真由!! 危ない!!」
「えっ!?」
突然、アルシアは俺に被さった。
一体何が起きた!?
「どうした!? アルシア!?」
「真由、攻撃よ。でも、かすっただけなのに、しびれる……」
「攻撃!? って、アルシア大丈夫か!?」
「私は大丈夫。けど、気を付けて」
俺は辺りを見渡すと、木の陰から男が現れた。しかもこいつは!?
「よう! 久しぶりだな。もう一回会えるなんてラッキーだぜ」
「「ガムイ!?」」
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