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第172話 猫パジャマ

 玄関から廊下が伸びていて、両側に洋室があり、突き当りがダイニングキッチンになっていた。しかも、隣には和室もある。


 3室あるから、一人ずつに分けるれるけど、3人一緒になるんだろうな。



「真由ちゃん、服脱ぐ」

「待て、まだ湯も入れてないぞ」

「あ、私入れてくるから」

「ありがとう」



 会話の後半はごく普通の会話だけど、アルシアって異世界人なんだよね。もう普通にこっちの住人になっているよな。


 

 そして、10分もしないうちに湯が張ると、ミリちゃんは俺の手を引っ張って、浴室に駆け込んだ。


 

「ミリが脱がしてあげる」

「遠慮します!」


 

 ミリちゃんはお人形さんの着せ替えを、俺にしようとしているんだろう。

 でも、まだパジャマとか用意してないぞ。


 しかし、こうなったミリちゃんはもう止められないので、身を任せるしかない。



「ミリちゃん、ちゃんとタオルで隠してね」

「タオルは要らない」



 俺は自分の身体にタオルを巻いて、ミリちゃん身体も前にタオル掛けて、何とか隠すことに成功した。 

 

 そして、しばらくすると洗面室にアルシアが服を脱いでいるのが、すりガラス越しに見えた。

 これは不味い。


 俺はシャワーで身体を流し、先に湯船に浸かった。



「お待たせ。浴室も広いのね」

「アルシアちゃん、ミリの身体を洗って」

「いいわよ。ミリちゃんが終わったら、真由も洗ってあげるわ」

「なっ!」



 俺はアルシアから視線を逸らしてやり過ごそうとしていたが、思わぬ流れになってしまったぞ。アルシアは一応、タオルで隠してくれてはいるけど……もの凄くエロい。


 年齢はあいみと近いはずなのに、大人びいた感じが堪らない。



「はい、ミリちゃん終わり。真由と交代ね」

「げっ」



 本当にやるのか? 

 俺はゆっくりと上がって、すぐに向きを変えてアルシアに背中を向けた。



「じゃあ、背中だけお願いします」

「駄目、全部洗うの」

「何でミリちゃんが答えるの!」

「ミリちゃんが言うなら仕方ないわね」



 ミリちゃんは、俺がアルシアに洗われるのところに興味を持っているのか? 

 しかも、アルシアも洗う気満々だ。


 

「ふふふ、心配しなくても変なことはしないわ」

「普通に洗って下さい」

「変なことしてもいい」

「こらーミリちゃん?」



 なんかミリちゃん楽しそうだな。

  


「仕方ないわね、少しだけ」

「や、やめ!!」



 アルシアも楽しそうだ。

 もしかして、俺遊ばれている?



「じゃあ、真由のタオル外すわね」

「えっ! あっ」

「ミリも真由ちゃん洗う」



 後ろからアルシアに身体を洗われ、ミリちゃんが湯船に浸かりながら、手を伸ばして俺を洗おうと、いや触ろうとしている。

 

 なんかこの凄い状況に、恥ずかしいのを通り越して無になりそうだ。




 ――こうして、アルシアに身体を洗ってもらった後、俺は湯に浸からず風呂から上がった。あのまま居たら色んな意味でヤバい。 

 

 それにしても、風呂なのにどうしてこんなに疲れるんだろう……。


 俺は2人が上がってくる前に、さっさと着替えて部屋に戻った。もちろん、アルシアが用意してくれた服は水着とかではなく、組織が用意したもので、ごく普通の無地のTシャツに短パンだった。


 俺はこっちの方が凄くありがたいんだが、ミリちゃんが納得しないだろうね。

 とりあえず、夕食を取りに行ってくるか。食堂に行ったら用意されているのかな?


 俺は食堂に行き、カートに夕食を載せて部屋の前まで戻って来た。

 夕食のメニューは、ビーフシチューとポテトサラダだ。とてもいい匂いがして旨そうだ。


 異世界に戻ったら、またゼリーみたいなジュレになってしまうから、今のうちに堪能しておかないと。


 部屋に入るか。


 

「真由ちゃんもこの格好にする」

「いきなりかよ!! 今度は何だ?」



 部屋に入ると、ミリちゃんは猫のパジャマに着替えていた。またデザイン魔法で変えたんだろう。そして、俺に躊躇なく服を変えられてしまった。


 ミリちゃんは黒猫で、俺は三毛猫に変えられてしまった。これもバイトの影響か?  

 ここはアルシアに勝手に人の服を魔法で変えないように注意してもらおうかな。



「真由、私のこれ……可愛いかな?」

「うん、可愛いと思うよ」



 そんな予感はしていたが、アルシアも白猫になっていた。まぁ、みんな可愛いから別にいいけど。

 異世界に戻ったら、この格好で冒険とかやめて欲しいな。


 アニマルパジャマで、ニャーニャー言いながら魔王軍と戦うとかシャレにならないぞ。



 

 ――そして、食事を済ませ、ミリちゃんを洗面台まで連れて行って歯を磨いた。

 後は寝るだけになったが……。



「真由ちゃん、寝る」



 俺はまだ起きていたいんだが、ミリちゃんが「寝る」と言ったらそれに従うしかない。拒めばどうなるかは、容易に想像がつく。



「私はいいから、真由先におやすみになったら」

「悪いな、アルシア」



 アルシアは荷物を整理したり、明日の準備をしている。俺も手伝った方がいいかもしれないが、仕方がない。


 俺は布団を和室に3人分敷こうとしたが、ミリちゃんに止められ、1人分だけで十分らしい。まぁ、夏だから何とかなるか……。



「真由ちゃん、おやすみ」

「うん、おやすみ」


 ミリちゃんは添い寝するような恰好で、眠りに入った。

 バイトしてからミリちゃんは、大人しく直ぐに寝てくれるから助かる。もう少し待てば、ここから抜け出せるかもしれない。


 しかし、その計画はアルシアも布団に入って来たので、中止せざるを得なかった。



「アルシア、もう寝るのか?」

「うん、明日の準備も終わったし、私一人でいてもね」

「これから脱出しようと思ったのに」

「ふふふ」



 そして、しばらくミリちゃんを挟んでアルシアと話が弾んだ。そういえば、アルシアと2人で話すのは久しぶりだ。


 ミリちゃんはぐっすり眠っているようだし、今アルシアに打ち明けるチャンスかもしれない。

 

 ミルネとミリちゃんには打ち明けて、アルシアだけまだというのは良くないし、アルシアなら受け入れてくれそうな気がする。



「アルシア、聞いて欲しい事があるんだけど……」

「うん……なぁに……」

「実は……俺……」



 いつもながら、あと一歩で躊躇してしまう。普通の秘密と違って「実は男だった」というのは、こんな美少女の外見からかなり外れた発言になるから、なんか言いにくいだよな。


 でも、せっかく話せるチャンスだから、これを逃すといつになるか分からない。

 よし!




「アルシア、ずっと黙って悪かったが、実は俺は男なんだ」

「すぅー、すぅー」

「あれ? 寝てしまったか?」

「……真由ちゃんは……ミリが何とかする……」

「お前は寝言で返事するな!」



 うん、俺も寝よう。




 ――こうして、異世界に戻るまでの数日間はアルシアとミリちゃんで、一緒に過ごすことになったが、結局俺は最後までアルシアに打ち明ける事が出来ないまま、異世界出発前日を迎えてしまった。


 今日はミルネが京都から帰ってくる。

 

 午後はまわるみたいだが、ミルネの希望で一人でここまで帰って来るらしい。ミルネがそんなことを言うなんて、かなり成長したんじゃないかな?


 そして、今日はさらにベルリア学園の人達と、明日の異世界に戻る為の軽い打ち合わせがある。一応念の為に、テレポートで戻った時に状況が変わっているかもしれないから、何があっても対応出来るようにするらしい。


 まぁ、いきなり魔王軍と戦う羽目にはならないと思うが、警戒はしといて損はないだろう。

お読み頂き、ありがとうございます。


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