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第171話 メイドになるニャン

 俺はメイドさんに両脇に抱えられながら、店の中の更衣室に連行された。



「真由ちゃん、私達が着替えさせてあげるニャン」

「駄目、ミリがやる」

「自分で着替えます!」



 なんかメイドさん達の目がハートマークになっているみたいでヤバいぞ。



「任せるニャン、脱がせてあげるニャン」

「ミリが脱がす」

「あっ、こら! やめ! ああー、アルシア!! 助けて……え?」



 こういう時はアルシアに助けてもううのが一番だが、アルシアはメイド服に興味津々なのか、別のメイドさんから着方を熱心に聞いていた。


 駄目だ気付いてくれない!!



「ニャン、ニャン、ニャン」

「ふんっ、ふんっ、ふんっ」

「誰かー助けてー」



 俺はもう抵抗するのを諦めた。こうなってしまったら、下手に抵抗しても余計にヒートアップしていくだけだから、自然に身を委ねて早く終わってもらう方がいい。



「キャー凄い可愛いニャン」

「おー」



 どうやら完成したみたいだが、俺はもうこのメイド姿を一回見ているから、もう驚くことはないだろうが、一応確認しておこう。



「やっぱり俺、かわええー!」



 なんかミリちゃん無理矢理きせられた時よりも可愛く見える。一応、ちゃんと可愛く着飾ってくれたようだ。という事はアルシアも……。


 俺がアルシアの方を見ると、ちょうどアルシアもこっちを見た。



「アルシア、かわええぇぇぇーーー!!」

「真由可愛い」



 アルシアは恥ずかしそうに顔を赤くしているが、真由とは違う可愛さがある。しかも、ちょっとエロさもあっていい。



「お嬢様方、とても可愛いニャン。本当にニャンニャンしたくなってきた」

「何だよ、ニャンニャンって!」

「何でもないニャン、早速ホールに出るニャン」

「お、おい」



 メイドさん達は、俺とアルシアの背中を押すようにしてホールに出された。すると、これまでにない歓喜の声が上がった。



「かわええぇぇぇーーー!!」

「2人とも天使だーー!!」

「真由ちゃんの隣の子もセクシーで、かわええぇぇぇーーー!!」

 


 さっきより客が増えているような気はするが、このヒートアップがなんかヤバいぞ。

 俺の予感通り、お客さんはみんな席を離れ、スマホを片手に詰め寄って来て混雑し始めた。



「ご、ご主人様! 落ち着くニャン!」

「真由ちゃん! こっち向いて!!」

「おい、押すなよ!」

「お前、邪魔だよ! 見えないだろ!」



 おいおい、なんか暴徒化してきたぞ。一旦、中断した方がいいんじゃないのか? 

 しかし、そんな状況に屈しなかったのはミリちゃんだった。



「ウ~、ウ~」


 

 ミリちゃんは俺を抱き寄せ、お客さん達に犬みたいに威嚇を始めた。これは以前に太助さんが率いる討伐隊『ストレングス』がやって来た時に見せた『無敵モード』だ。果たしてこれはここでも有効なのか?



「真由ちゃんはミリのもの」



 すると、あれだけ騒がしかった店内も一瞬で静かになり、ミリちゃんの威嚇の唸り声だけが響いた。

 どうやら、この世界でも有効なようだ。


 と、思ったらすぐに歓声と、何故か拍手が沸き起こった。



「もう可愛い過ぎて死にそう」

「ミリちゃんに抱かれたい……」



 何かこの無敵モードは、別の意味でかなりの殺傷能力がありそうだ。

 


 ――こうして、このコスプレイベントは暫く続いたが、何とか終えることが出来た。そして、イベント終了後には店長がやって来て、熱心にバイトの勧誘されたが、もちろん答えは「NO!!」だ。


 出来ればこんな恥ずかしいことはしたくない。アルシアは凄く行きたそうだったが、組織の人間はこんな目立つようなことは禁止されている。だから……あっ


 やべぇー!! 俺、スゲー目立っていたよな? ここには組織の護衛もいるし、絶対にバレるぞ。


 はぁー、俺何も悪いことはしてないのに、また和田さんに怒られそうだ。



――そして、翌日に俺は和田さんに呼び出され、やっぱり怒られてしまった。SNS等で写真が投稿されていたみたいで、裏で活動する組織の人間が目立ってしまうのはNGだからな。

 

 ということで、俺とアルシアは護衛体制が整わないと外出出来なくなってしまった。

 まぁ、街の中で知っている人間に発見されて、後を付けられたりすると面倒だからな。しばらくの間、と言っても一週間切っているから、異世界に出発するまで組織で生活しないといけない。


 ちなみにミリちゃんは、護衛体制を強化してバイトを続けるそうだ。組織もミリちゃんに逆らえないことを知っている。

 

 そんな訳で異世界に行くまで組織内にある、ちゃんと日常生活が出来る寮みたい所で3人で生活することになり、ミリちゃんの要望でそうなってしまった。



 そして今は夕方で、ミリちゃんもバイトから帰って来て、これから3人で部屋に入る所だ。俺は今まで利用したことがあるのは独身部屋で、ファミリー部屋は初めてになる。


 

「ここがそうみたい。なんかプライベート感が無いな」

「ここで一緒に生活するのね」

「真由ちゃん、中に入ろう」

「おう」



 廊下は普通に組織内の施設と同じだから、会議室に入るような感じだ。



「うん、結構広いなー。ちょっといいマンションの部屋みたいで綺麗だ。しかも、家具も全部揃っている」


「素敵……」

「一緒にお風呂に入りたい」

「お前はいきなりかーー!!」



 アルシアは感動していたけど、ミリちゃんはあんまり興味無いみたいだ。それにいきなり何て事を言いやがる。



「ふふふ、一緒に入りますか? 夕食はその後にしましょう」

「げっ、お、俺は夕食後でいいから、2人で入って来なさい!」

「駄目、真由ちゃんも入る」



 流石にアルシアの裸を見てしまうのは不味いだろう。一応、ミリちゃんは俺が男だと知った上での話だからまだいいが、アルシアはまだ知らないから、後で知った時に傷つけてしまうぞ。



「浴室も狭いかもしれないし、俺は――」

「駄目、ミリと一緒に入る」



 駄目だ。ミリちゃんがそういう事情を考えるわけがないし、そうすれば……。



「いや、ミリちゃんとは何時でも入れるわけであって……つまりその……」

「真由、私大丈夫だから気にしなくていいわよ」

「そうか、まぁ、アルシアが言うなら……ん?」



 今のは…………いや、ただ俺に気を遣ってくれただけかもしれない。



「真由、早く行きましょう」

「う、うん」



 アルシアはいつもと何も変わらない。やっぱり、気のせいかもしれない。

 一瞬、男であることがバレたみたいで焦ったぞ。

 

 はぁー、でも、なるべく裸を見ないようにしないと……って、どうすれば?

お読み頂き、ありがとうございます。


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