第170話 ミリちゃんのお仕事
ドアを開けると、いきなりコスプレの指名を受けてしまい、そのまま可愛い猫耳のメイドさんの案内で席に着いた。
いつもこうなのか、イベント中なのか分からないが、店内は賑わっている。
「いきなりコスプレとか何ですか?」
まぁ、理由は分かるが敢えて聞こう。
「本日はニャンニャンイベントで、私達から指名を受けたお嬢様達も同じメイドの格好して、ニャンニャン出来るのですニャン。お受けになりますかニャン」
「せっかくだけど、やめ――」
「やりますわー!!」
「おい!」
「ありがとうございますニャン! ご用意するのにお時間が掛かりますニャン。それまでゆっくりして欲しいニャン」
俺の発言をかき消すぐらいのアルシアの一声で、コスプレをする羽目になった。
まぁ、アルシアが言わなくても、ミリちゃんに強制参加させれると思うが。
「アルシア、本当にやるのか?」
「やらないとミリちゃんが怒るわよ」
「うっ」
絶対、ミリちゃんに関係なくアルシア自身が着たいんだろうな。
「ところで、肝心のミリちゃんが見当たらないなぁ。ミリちゃんが案内してくると思っていたけど」
「そうね、今日は混んでいるから、私達に気づいていないのかしら」
「いくら混雑しようが関係ないような気がするが」
「あっ!! あれじゃないかな?」
アルシアが指さす方を見ると、猫耳姿のメイドの格好したミリちゃんが、お客さんにケーキを運んでいるところだった。
「おお!!!!! ちゃんと仕事しているじゃないか!」
「真由、驚き過ぎ……」
そりゃあ、驚くだろう。あのミリちゃんがだぞ!! でも、動機は不純だけどあいつはあいつなりに頑張っていたんんだなぁ。
「お客さんの前に来たぞ。ちゃんと渡せるかな?」
すると、ミリちゃんはいきなりお客さんの前で、「ふんっ」と言わんにケーキに指を指し、どうどうとつまみ食いを始めた。
「げっ! 駄目だろ! そんな事しちゃー! 怒られるぞ!」
「真由見て! お客さんが笑顔になってるわ」
「え?」
いや、笑顔どころではない。ガッツポーズまでやっているぞ。そうか、あのお客さんは無垢郎と同じで、美少女にそんな事されると逆に喜ぶのか。
そして、ミリちゃんは食いかけのケーキをお客さんに渡すと、今度は別のお客さんのオーダーを取りに行った。
「一応、仕事しているんだなぁ。ん?」
「どうしたの真由?」
「いや、目が合ったのにスルーしたぞ。うん? また合った」
「ミリちゃん、真由に仕事しているところを見て欲しいじゃないのかしら」
何だ仕事しているところを見て欲しいのか? という事は後でちゃんと褒めないといけないなぁ。つまみ食いとか問題あるけど、一応、仕事として成立しているみたいだし、頑張っているよな。
今度は、お客さんが近いから、オーダーのやり取りが聞こえそうだ。
「ミリちゃんはどれが食べたいの?」
「これ」
「じゃあ、それでお願いします」
「分かった」
何か逆になってないか! ミリちゃんの食べたい物をオーダーしたけど、そういうシステムか? というか本名じゃねーか。
「アルシア、このお店って、メイドさんが食べたい物を客が注文したりするのか?」
「いや、知らないわ。無垢郎さんもそんな事してなかったし」
あの貢ぐ無垢郎がしてないという事は、無いんだろうな。
そして、ミリちゃんはオーダーを別のメイドさんに伝えると、俺の方に何かドヤ顔でやって来た。
「ふーーん」
「ミリちゃん、ちゃんと仕事して偉いねー」
「頑張ってるわね。ふふふ」
褒めて欲しい感じが本当に分かりやすい。でも、さっきのオーダーはミリちゃんが最後までやらないといけなかったんじゃないのか? というのは置いておこう。
そして、別のメイドさんがさっきのお客さんに運んで来るのが見えた。すると、お客さんは少し残念そうにしていた。
「あー、ミリちゃんプレミアム失敗かー」
何だよ! ミリちゃんプレミアムって!!
「真由ちゃんも、何か頼んで」
「何かされそうだし……はい、頼みます」
渋ると睨むのやめてくれないかなぁ。
「ミリはこれが欲しい」
「お前が決めるのかよ!!」
「アルシアちゃんは?」
「私は猫クッキーでいいわ」
「分かった」
ミリちゃんはオーダーを取ると、カウンターの中に入って行った。そして、しばらくするとトレーにショートケーキと猫クッキーを載せて運んで来た。
まさか、このケーキをミリちゃんプレミアムにするのか?
「真由ちゃん、食べさせてあげる」
「なっ! 自分で……」
ミリちゃんが強制的に俺にケーキを食わそうとすると、さっきの客がそれに気づき、大声を上げた。
「あれを見ろー!! ミリちゃんがー!! あの、お客さんに……えっ!! あのお客さんかわええぇぇぇーーー!!」
「本当だー!! かわええぇぇぇーーー!!」
「ミリちゃんのお友達かー!!?」
なんか店が騒がしくなってきたぞ。
「真由ちゃん、食べて」
「た、食べるから口に押し込むなー!!」
半分ぐらい食べさせられると、ミリちゃんはそのケーキをもぐもぐと食べ始めた。
「真由ちゃんプレミアム」
ミリちゃんがそう言うと、店の中は異様な盛り上がりを見せた。ここにいるやつは馬鹿ばっかりか!! アルシアはドン引きしてないか?
「真由ちゃんプレミアム……」
いや、ちょっと欲しいそうな感じだな。どうなっているんだ!?
店の中が異様に盛り上がる中、このタイミングを待ってましたと言わんばかりにメイドさんが、大きな声で話始めた。
「今から、このお嬢様方にメイド姿になってもらいますニャーン!!」
すると、歓声が沸き起こり、もう後に引けない状況になった。
俺もニャンニャンしないといけないのかー!?
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