第166話 無垢郎からの衝撃の真実!?
ミリちゃんは手錠の鍵をネックレスのように首にかけ、ちょうど胸の辺りにあった。そもそも、ミリちゃんが鍵の保管をこんな風にやるだろうか?
どうも無垢郎の入れ知恵のような気がしてならない。
もしそうだったら、3発ぐらい殴っておくか。いや、真由の身体で殴っても喜ぶだけか。
でも、今はそれより、この状況を打破しないと。
俺はミリちゃんの胸に触れないように指先に神経を尖らせ、胸の谷間にある鍵だけを掴むことを試みた。
電気が付いていたのは良かったが、後ろ向きだからよく見えないんだよなぁ。
俺は一度、身体を動かして鍵の場所を確認してから、もう一度鍵を掴むようにした。
よし、これだな。
フニャ
ん? これは鍵にしてはやわらか過ぎた。ミリちゃんは起きていないようだから、セーフにしておこう。
フニャフニャ
わざとではない。
フニャフニャフニャフニャ
――数分後……。
ようやく、俺はネックレスを手繰り寄せ、鍵を掴んで解除することに成功した。
ふぅー、疲れた。
これからは、ミリちゃんの持ち物にも気を付けた方がいいぞ。
とりあえず今日はもう寝よう。
――翌日、ミリちゃんは組織からバイトに行った後、俺は無垢郎の研究室で、アルシアとの修行までの間居ることにした。
あいつから色々と聞き出さないといけないしな。
カリバーも今日は仕事みたいだから、ここにはいないし、ちょうどいい。
「じゃあ、僕は研究室に戻るね。昼までゆっくりするといいよ」
「ちょっと待て!」
「何だい?」
ミリちゃんが居なくなると、無垢郎は研究室に戻ろうとしたから、俺は止めた。
「ミリちゃんに手錠をあげたのは、お前だろ」
「えっ!? はぁはぁ、という事は、はぁはぁ、使ったんだね? ど、ど、どうだった? 最高だったかい?」
バコ!!
俺はギャグにもならないくらい、強めに殴ってやった。流石の無垢郎も喜べないだろう。
「い、いいね、もっとやってくれてもいいんだよ!」
「どんな身体してんだよ!!」
全く利いていなかった。実はこいつ強かったりするのか?
それにしても、やっぱりこいつだったか。思った通りだ。でも、ここからが本題だ。
「他に何をあげた? 何を買ってやった?」
「もうないよ。手錠だって、ミリたんが『真由ちゃんを捕まえる物が欲しい』って言ったから、用意しだけなんだ」
「その割には、玩具に見せかけて本物だったりする小細工何だ!」
「その方が成功するだろう?」
バコーン
殴っても喜ぶだけと分かっていても、ムカつくから殴ってしまう。
「それで、以前に買い物に行った時は、どんなものを買った?」
「ミリたんの服とか小物だよ」
「いくら使った?」
「10万ぐらいかな。人生で一番、有意義なお金の使い方だったよ」
「どんな人生送って来たんやー!」
無垢郎はミリちゃんの言いなりなんだろう。しかも、それに幸せを感じている。
「あと、俺に関して何か言ってなかったか?」
「うーん、大した事じゃないけど『真由ちゃんの心も女の子に戻す方法を教えて』って言ってたよ」
「どこが大した事ないだよ!! 大有りだよ!!」
得体の知れない能力をミリちゃんは持っているんだから、そういう考えを持っているのは怖いぞ。しかも『女の子に戻す方法』って、ミリちゃんは俺を本当の女の子だと思っているのか?
「それで、何て答えたんだよ」
「うーん、浩二君だった記憶を消せばいいって助言したよ」
「馬鹿かお前は!!」
「ミリたんは、そんな事しないと思うよ」
「いや、するんだよ!」
これは不味いなぁ。もし、そんな魔法があるなら、躊躇なく掛けてきそうだからな。まだ大丈夫なのは、そういう魔法が無いからだろう。
でも、ミリちゃんの事だから、侮れない。
「ところで、俺の姿を元に戻す方法は、どうなっている?」
「ああ、その件に関して、いいニュースと悪いニュースがあるんだけど、聞くかい?」
「おお、意外な返答。もちろん、聞くさ。いいニュースから教えてくれ」
「いいニュースからだね。仮説だけど、戻す方法が分かったんだよ」
「ええーー!!」
無垢郎の事だから、戻す方法なんて考えてないと思っていたから意外だぞ。俺は少し肩の荷が下りた。
何だ、意外に簡単に戻れるんだな。もっと時間と手間がかかると思っていたぞ。でも、悪いニュースがあるっていう事は、何か問題があるのかな?
「じゃあ、悪いニュースって何だよ」
「うーん、大変言いにくいんだけど、ちゃんと言うね。君は僕とカリバー君の魔法で作った薬で、可愛い女の子になっただろう?」
「不本意だがな」
「その後、カリバー君の魔法で全ての魔法効果を消したけど、失敗したんだよね?」
「それがどうした?」
無垢郎は気持ち悪いぐらいの真顔になった。
「実は成功していたんだよ」
「はぁ? 見ての通り全然成功していないだろ!」
「つまりだね、今の姿が本来の君の姿なんだよ」
「はっはっはー、流石にそれはないだろ」
何を言い出すかと思えば、これが本来の俺の姿だと? という事は、俺は元々女の子だったと言いたいのか? 冗談じゃないぜ。
「おいおい、そんな冗談は要らない。まさか、元に戻れるの話も冗談なのか?」
「僕は本気だよ。君は女の子なんだよ」
「待て、待て、待て、そんなのおかしいだろう。俺には21年間の浩二としての記憶しかないし、女の子だった記憶なんて微塵も無い」
「その記憶は捏造だよ。魔法で記憶がデザインされているんだ」
「なっ」
この21年間の記憶がデザインされた? そんな事が出来るのか? それに何故? 誰がそんな事するんだよ! 俺は信じないぞ。
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