第165話 おもちゃの手錠
ミリちゃんは、傍から見ればエッチなことを無表情でしてくるから、こっちもどうすればいいのか分からなくなる。さらに言えば、本人はからかう目的ではないから余計た。
そして、俺はお風呂から上がり、これから脱衣所で着替えるところだ。俺は髪をバスタオルで拭いていたら、いつの間にかミリちゃんがいなくなっていた。
「ミリちゃん?」
おいおい、どこに行ったんだ? まだ身体も乾いていないだろうに。
ん?
よく見ると、床に水滴が廊下まで付いていた。という事はもう部屋に戻ったのか? しかも、全裸で。
女の子だから、ちゃんと服を着てもらわないと、これから先やらかしてしまうかもしれないから、注意しといた方がいいだろう。
俺は、バスタオルを巻いて廊下の突き当りの部屋を開けようと、ドアノブを握った瞬間、勢いよくドアが開き、持っていかれるな形でバランスを崩し倒れしまった。
「いたたっ、そんな急に凄い力でドアを開けるから」
「真由ちゃん、裸」
「裸? あっ!」
転んだせいで、完全にタオルが外れてしまった。
「そういうミリちゃんだって……あれ? いつの間にそんな可愛いパジャマに着替えた?」
もしかして、魔法で着替えたのか? でも、子どもが着そうなてんとう虫のパジャマを、ミリちゃんは着てるが、これはここで買ってもらったものなのかな?
「大丈夫、ミリが着せてあげる」
「それは遠慮します。夏は半袖短パンに限るので」
「駄目、真由ちゃんの分も買ってもらった」
「無垢郎にか?」
「うん」
なぜこれにしたのか分からないが、俺に着せようとしているのはミツバチバージョンだ。確かに子どもが着るようなものでも、真由なら可愛く着れそうだ。
今度、無垢郎に他に何を買ってあげたのか確認しておいた方がいいな。
「真由ちゃんのパンツはどこ?」
「流石に自分で履きます!」
何とか下は履けたが、ブラのホックを止めるのに手間取っていたら、不満げ表情をしたミリちゃんがやってきた。
「ふんっ!」
「きゃっあ!」
ミリちゃんは何の躊躇もなく、俺のブラを剥ぎ取った。俺もびっくりして、女の子みたいな悲鳴をあげてしまったが、怒ったのかな?
しかし、ミリちゃんは休む間もなくミチバチのパジャマを強引に俺の頭に被せてきた。
「ふんっ」
「もっと優しくしてー」
これは、誘拐犯が帽子を顔に被せるような感じた。
「真由ちゃん、こっち」
ミリちゃんがパジャマを強引に着せられると、そのまま本当に誘拐するように部屋に連れ込んだ。
そして、俺に正座させると、色んな角度から観察し始めた。
「ミリちゃん、何を?」
俺が話しかけてもミリちゃんは、無表情のまま黙々とスタイリストみたいに服や髪を手直しをしていた。相変わらず俺をお人形みたいに遊んでやがる。深みにハマる前に何とかせねば。
「そうだ! ミリちゃん、歯を磨ないと」
すると、ミリちゃんは今にも拘束魔法を打ってきそうな雰囲気を漂わせながら、俺に迫ってきた。
「ここでは魔法禁止だからね」
「分かった」
「おー」
意外にも素直にいう事を聞いてくれたみたいだが、本当にそうなのかな? ミリちゃんは俺をスルーして自分の鞄が置いてある所に行くと、何かを探し始めた。
一体何を探しているのか、凄く気になる。
「ミリちゃん、何を探しているの?」
ようやく探し物を見つけたのか、何かを取り出して再び俺の方にやって来た。
「これ」
「こ、これは!? 手錠だとー!!」
ミリちゃんが手にしていたのは、ピンク色のプラスチック製のもので、子どもの用の数百円で売ってそうな玩具だった。
ふぅー、焦った。
あれなら、どこかにあるボタンで簡単に解除出来たはずだし、最悪力任せ簡単に割れるものだから、何とかなるぞ。
だったら、ちょっと乗っておくか。魔法使われたら厄介だし。
「これで真由ちゃん捕まえる」
「ああー、捕まっちゃったー」
でも、後ろ手なのね。
そんな可愛い顔しているのに、無言で躊躇なくしてくるから怖いぞ。
そして、ミリちゃんのよく分からん行動が暫く続いた。
「真由ちゃんと一緒に寝る」
「お、おい!」
もう飽きたのか、ミリちゃんは突然俺を掴み、強引にベッドの方へと引っ張った。
「真由ちゃん」
「げっ」
いつもは添い寝ぐらいなのに、今日は抱きしめられた。
もしかして、ミツバチパジャマがヌイグルミのような役割を果たして、ヌイグルミを抱いて寝るみたいな感じになっているのかな?
まぁ、それは別にいいとして、この手錠そろそろ外したい。もうミリちゃんは満足して寝そうだから大丈夫だろう。
確か鍵穴の所につまみみたいなものがあるはずだから、それを押せば……。
うーん……。
う、うーん……。
なっ、ボタンが無い! そんなはずは……どこか別の場所か……。
うーん……。
無い!!
これ子ども用の玩具だよな?
しょうがない。これはあまりやりたくなかったが、強行突破するしかない。この手錠は壊れてしまうが、また新しいのを買ってあげよう。ちゃんとボタンが付いているやつをね。
よし!
うーーーーーん、おらぁー!
ん?
おりゃーーー!!
ん!!
壊れないだとー!! なんでこんなに頑丈なんだよ!!
こうなったら、あれを使うしかない。
俺は腕に剛性とパワーを集中させ、一気にMPCシステムで破壊を試みた。しかし!!
これでも駄目なのかよ!
絶対にこれ普通のプラスチックじゃないだろ! このチープな感じを漂わせながら、かなりの強度がある手錠なんて、普通売ってないよな!?
という事は、無垢郎が作ったに違いない。明日、色々問い詰めて、他に何をミリちゃんに渡したのか全部吐かせてやる。
でも、今はこの状況を何とかしなければ。この手錠は恐らく鍵で外せるはずだから、鍵をさがさないとな。
あるとしたら、鞄の中にあるのか? それともミリちゃんが持っているのか? 俺は身体をくねくねさせて、ミリちゃんから少し離れる事が出来た。
すると、鍵はミリちゃんがネックレスみたいに首にかけていた!
これはまた際どい場所だ。
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