第162話 拘束魔法の攻略
今まで、散々拘束魔法を掛けられていた俺だが、今回は仕掛ける側になれるらしい。これはちょっと予想外だが、本当に出来るのか?
「ア、アルシア、本当に俺でも拘束魔法が使えるのか?」
「顔が赤いわよ」
「い、いやそれは……い、意外だったから驚いているだけだ。でも、解除よりも掛ける方が簡単って言うのはどいう事だ?」
「さっき『魔力の流れ』が掴めそうって言ってたでしょう? その感覚で相手の魔力を捉える事が出来れば、自分の魔力を注ぐ事が出来るのよ。それで相手を押させつける事が可能になるわ」
なるほど、相手の魔力を捉えればいいのか。でも、普通はそんな簡単にはいかないんだろうな。
「魔力を捉えるのは簡単じゃないだろう?」
「ええ、みんな普段から気を付けるから、普通は無理ね」
「どう気を付けているの?」
これは是非参考にしたい。
「人によるけど、魔力をカムフラージュしたり、故意に乱したり、でも、一番確実なのは拘束魔法を打ってきた時に対処する方がいいわ。だから、真由も拘束魔法を使えるようになれば、自ずと対処法も分かると思うわ」
「やってみたら分かるのかなぁ。是非、拘束魔法を教えて下さい」
「ふふふ、ではまず、私の魔力を感じ取って。分かりやすいように少し魔力を上げるわ」
「うーん」
アルシアの魔力の流れをねぇ……これで感じ取れれば苦労はない。
「ごめん、よく分からないや」
「そうね、じゃあ私を触って」
「さ、触るってどこを?」
「どこでもいいわよ」
「どこでもいいんだな?」
ここで胸とか触ったら、最低な奴なってしまうからそんな事はしない。
俺は普通に肩に手を当てた。
「どう? 分かる?」
「うーん、分からない」
「じゃあ、今度は魔力を一旦弱めてから、少し上げるね」
これで成功しても実用性ゼロだな。ミリちゃんみたいに『ふんっ』で掛けらればいいんだが。
「これでどう?」
「うーん、何というか、魔力がアルシアの体内を循環しているような感じがする」
「それでいいわ。感じ方は人それぞれだから。じゃあ、次はその感覚を持ったまま、真由の魔力を流し込んでみて」
「という事はこの手から、魔力を込めればいいのかな」
俺は魔力を送り込むと、アルシアの魔力と融合しているような感覚を覚えた。
よし、出来たぞ! もしかして、これが拘束魔法というやつか?
「真由、それは私の魔力を刺激しただけよ。もっと勢いよく繋がりが出来るまで続けないと」
魔力を刺激という事は、治療に使う時と同じやつだな。回復させてどするんだよ!
魔力をもっと強くする必要があるのか。結構疲れるぞ。
「よし、これでどうだ!! おりゃー、ほぼ全開!」
「もう少しよ」
「おおー!! 全開!!」
「あっ」
すると、俺の魔力がアルシアの全体を包んだように、一体化したような感覚があった。しかし、この状態が続くのは魔力を放出している俺にはかなりきつい。
「ア、アルシア、こっからどうするればいい?」
「今、私は真由の魔力に捕まっている状態なの。今の魔力で拘束させて、魔力を解除すれば完了よ」
「操り人形みたいな状態か。ならば!」
俺は感覚的に魔力をアルシアの腕を動かし、手を後ろに回させた。俺がいつも散々やられているように、アルシアも魔法拘束された状態になった。
よし、これで解除だ。
「はぁ、はぁ、せ、成功したか?」
「動けないわ、成功よ」
「やったー!! でも、こんなに魔力を消費するのか?」
「ゆっくりやるとそうなるわね。この一連の流れをもっと早くやれば、魔力消費は押さえられるわ」
ミリちゃんはこの作業を一瞬でやっていたのか? 本当に凄いよな。
しかし、俺がこの魔法を掛ける事はないから、マスターしなくても別にいい。問題はこれを掛けられないようにする事だ。
「アルシア、拘束魔法を食らわないようにするには、相手にこっちの魔力を捉えられないようにする事と、魔力を流し込まれないようにすればいいのか?」
「そうね、でも相手の捉える能力が高い場合は、難しいかもね。でも、魔力を流し込むのは普通に魔力で抵抗出来るわよ」
「うーん、そんな事出来るかなぁ」
「拘束魔法のプロセスが分かっただけでも、大分違うわよ」
確かに、これからはそれを意識して対応すれば、何とかなるかもしれない。でも、魔王に掛けられた魔法は、全身石のように全く動かなかったのもあったよな? あれも同じ対応でいいのかなぁ。
「拘束魔法って、まだ他に種類があるのか? 例えば、全身石みたいになるとか」
「うーん、それは多分相手の魔力が強力過ぎる場合は、理屈上そうなるのかな? 私も詳しく知らないけど、そういう仮説はあるわ」
仮説かよ! じゃあ、あの魔王フィルリアルが掛けたやつって、かなりチートな魔法なんじゃないか?
「でも、もしそれが可能だったら、もう拘束魔法というより、乗っ取りになるかもしれないわ」
「相手を自由自在にって事?」
「うーん、魔力を押さえられている状態だから、それに近いかもね。拘束魔法も腕を動かした時の一瞬の動作も、一時的な乗っ取りかもしれないわね」
「なるほど、あの一瞬が常時続くわけなのか? そんな事したら、こっちがすぐに魔力尽きてしまうぞ」
「心配しなくても大丈夫よ。そんな膨大な魔力で扱える人なんていないんじゃないかしら」
それがいるんだよ!! 魔王が!! でも、ミリちゃんもアルルンに使っていたような気もするが……それは考え過ぎか……はは。
「ありがとう、アルシア。何となく分かってきたよ」
「どういたしまして。それより、そろそろ――」
「もう一つ聞いていいか?」
「う、うん」
特に聞きたい事は無かったんだが、アルシアが何を言おうとしていたのか分かってしまったから、ちょっと意地悪をしてしまった。
早く拘束魔法を解除して欲しいんだろうけど、こんな機会は二度とないし、もっと言えば、動けないアルシアを見るとちょっと悪ふざけしたくなるんだよね。
「真由、聞きたい事って……」
「うん、それはね……何と言うかね」
「ちょ、ちょっと真由?」
いやー、なんかいいですなぁ。もしかして、ミリちゃんもこんな風に楽しんでいるわけじゃないだろうな?
しかし、あまりこんな事をずっとしていたら、本気で怒られそうだ。そろそろ解除してやるか。
っとそう思った瞬間! アルシアは自分で拘束魔法を解除してしまった!!
「げっ! なんで!?」
「真由の魔法は単純過ぎるから、解析するのは簡単よ。フフフ」
「いやー、それはアルシアさんが凄いからだよ。ハハハ」
いや、なんか笑顔が怖い。
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