第161話 アルシアと修行
俺はアルシアと魔法の修行の場所として、組織内にある実験室にまだ早いが向かった。ここは地下内だけど、かなり巨大な施設で、火気はもちろん、爆発を起こしても耐えれる設計だ。
ここなら魔法をぶっ放しても、問題無いだろう。でも、ミリちゃんの規格外の魔法なら、壊れるだろうが。
施設の前に着くと、頑丈そうな鉄の扉があり、自動で開閉するタイプだ。
そして、俺は施設の中に入ると、アルシアはもう中に入って準備をしていた。
「あれ? もう来ていたんだ」
「うん、早く仕事が終わったから……ふふふ、真由、やっぱり、お人形さんみたいで可愛いね」
「うっ」
アルシアの格好は普通にジャージだな。俺も、ジャージの方が良かったかな? でも、ミリちゃんに見つかったら可愛い服にデザインされるから、ある程度可愛くしておく必要があるからな。今のところギャル系はセーフみたいだし。
「つ、つぎアルシアと修行する時は、俺もジャージ持って来るよ」
「駄目よ!!」
「へ?」
「い、いやあの、これは訓練でもあるんだから、実戦と同じ格好の方がいいわよ」
アルシアは顔を赤くさせながら、慌てた様子だった。
もしかして、アルシアもミリちゃんみたいになったのか? でも、アルシアって時々そういう事を言ってたよな?
てか、それならアルシアも制服を着てくるべきだろう。
「真由、魔法のトレーニングを始めるわよ。準備はいい?」
「う、うん」
「まず、真由が出来る事を教えて欲しいの。『魔動三原則』はどこまで使えるの?」
『魔動三原則』って、拳に魔力を纏わせる『魔動拳』、魔力を剣等の物に纏わせる『魔動伝導』、魔力そのものを飛ばす『魔動砲』だったか。俺が出来るのは魔動拳だけだ。
「魔動拳だけかなぁ……ははは……」
「そう、Bランク試験までにもう一つマスターしないとね。じゃあ、基本魔法の『火』『雷』『氷』はどの程度出来るの?」
「うーん、雷というか静電気というか、バチバチ程度なら出来る。でも、適当に魔力を出してやってるからあまり分かってないかもしれん」
「分かったわ。まず基本魔法からやりましょう。真由ならすぐに出来ると思うわ」
拘束魔法を先にやってくれると思っていたけど、火とか俺に出来るのか?
「一番簡単な方法でやるわね。まず、両手に魔力を出して」
アルシアの両手が魔力で青白く光り始めた。俺もこれぐらいなら出来る。
「これでいいか?」
「それでいいわ。次はこの2つの魔力同士をぶつけると、火が発生するわ」
すると、2つの魔力が重なる部分から、小さい炎がメラメラと立ち上った。ただぶつけるだけだから、俺でも普通に出来た。
「えっ!? そんな簡単なの!? これなら普通に俺でも出来るぞ」
「じゃあ、今度は2つの魔力を擦るようにしてみて」
「おお! 電気のスパークみたいなものが出たぞ!」
俺はこれを無意識にやっていたのか。適当に魔力を出してやっていたけど、原理が分かれば大したことなかったな。
「最後は魔力を1つにして、2つに分裂させるの。それで冷気が発生して氷になるわ」
「うーん、これはちょっと難しいなぁ」
「氷が一番難しいと思うから、これは慣れね」
何となく冷気が発生しているような気がするが、魔力分裂させるのはコツがいるかもしれない。
「でもアルシア、みんな両手を使って2つの魔力を出してとかやっているのか?」
「原理は一緒よ。ただ人差し指と親指だけでも出来るわよ」
「おお!!」
アルシアは人差し指から炎だした。
「もっと極めれば、手や指を使わなくても魔力をぶつけたり出来るわよ」
「そうなのか!?」
「その代わり、『魔動伝導』『魔動砲』も出来るようにならないと難しいわよ」
「うっ、それはハードル高いなぁ」
さっきアルシアは一瞬で炎出したけど、AランクやSランクになってくると、こういう所で差が付くんだろうな。
しかも、それを組み合わせて戦うんだから、俺にとっては先が長いぞ。
「私も魔動拳から火、雷、魔導砲、魔動伝導、氷という順番でマスターしたから、真由もきっと出来るわよ」
「そうかな。でも、アルシアに教えてもうらうわけだし、俺頑張るよ!」
「うん、頑張って!」
こうして、俺は火と雷をマスターする為、何度も練習して、時折アルシアにチェックしてもらい、アルシアは『テレシー流』の武術に励んでいた。
――そして、16時ぐらいになり、修行も後1時間前になった。
今日1日で大分成長出来たかもしれない。両手から片手で火を出せるように、魔力を試行錯誤で調整していくうちに、魔力の流れが感覚的に分かってきた気がする。
この魔力の流れをコントロール出来るようになれば、魔力を飛ばしたり、物に纏わせたりも出来そうだし、そうなれば『氷』だって不可能ではない。
いや、それだけではない。確か『拘束魔法』を解くには魔力を解析して解除する必要があるが、その解析の時に魔力の流れを感じ取るみたいな事を、前にアルシアが言っていた。だから、今日やった魔法の修行は、拘束魔法対策にも役立っているという事だ。
さらに言えば、魔動拳とMPCシステムを組み合わせた『アグリケーション』みたいに、もっとバリエーションを増やすことが出来る。例えば、氷を飛ばしたり、魔力を集中させて瞬間的に爆発させたら、ただの火が爆弾みたいにならないか?
なんか夢が膨らんでいく。
これもアルシアのお陰だな。もし独学でやっていたら、ここまでスムーズに行かなかっただろう。
もう少し時間があるから、拘束魔法をやってみるか。今なら解析出来るような気がするんだよな。
「アルシア、最後に拘束魔法を教えてくれないか? 解析の練習をしたい。魔力の流れを掴めそうなんだ」
「ふふふ、拘束されたいの?」
「なんでそうなる!!」
「冗談よ。拘束魔法は、解除が難しいけど、掛けるのはそんなに難しくないわよ。魔力の流れを掴めそうなら出来るんじゃない? やってみる?」
「えっ!? アルシアを拘束するの!?」
それはちょっと……興味がある。
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