表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/202

第16話 闇認定!

 もう辺りは真っ暗で、ほとんど人もいなかった。ミルネは女子寮を出て、校舎の中の廊下を歩いてる。


 その様子からも、以前のような活気は全くない。これから向かう先にとても憂鬱な事でもあるのか?


 ミルネは男子寮の入り口前まで来ると、周囲を警戒するように辺りを見渡して中へ入った。

 俺はすぐに物陰に隠れて、様子を伺った。

 

 なんであいつ男子寮に行くんだ!?

 もう嫌な予感しかしない。

 

 この男子寮も女子寮と構造が同じのようで、最初にS、Aランクの寮があった。恐らくもっと廊下を突き進めば、ボロいB、Cランクの寮があるはずだ。

 

 ミルネは奥には行かず、階段を登ってSランクの部屋の方に向かっていた。下はAランクみたいだからな。


 男子寮に入ってからのミルネは、周囲を気にしながら歩き、最上階の4階まで来たところで止まった。


 この4階だけ、部屋に続くような廊下は無く、ドアが一つあるだけだった。つまり4階全部が1つの大きな部屋になっている。


 Sランクの中でもこんな大きな部屋にいるやつと言えば、ダンロッパしかいないだろう。しかし、ミルネは、ドアのノックをして部屋に入って行った。


 なんでこんな時間に、ミルネがあいつの部屋に行くんだ!? 

 何か嫌な予感がする……。

 何とかして中の様子を見れないかな?


 俺はドア付近を調べると、以外にもドアは完全に閉まってなく、少し力を入れるだけで開きそうだった。

 

 よし、少しずつ動かして.....これぐらいの隙間なら大丈夫だろう。

 

 ここで気を付けないといけない事がある。


 『郷に入っては郷に従え』ということわざがあるように、この世界にも規律、習慣、価値観があり、Sランクは絶対的な存在である以上、勝手にこっちの価値観で早まった事だけはしてはいけない。

 

 もし何かあった時、下手にこちらの尺度で判断して、ミルネを助けたつもりでも結果として、ミルネの魔法戦士としての将来を奪ってしまうかもしれない。


 だから、踏み込むのは、本気でヤバい時だけにしよう。


 俺は部屋の中を覗いてみた。

 かなり大きな部屋で少し距離があるが、ミルネの後ろ姿が見える。

 

 うつむいている様子でテーブルの横に立っていた。そして、そのテーブルの反対側に座るダンロッパとモリモンがいる。

 


「君はいつまで黙っているんだね?」

「……」

「君が待って欲しいって言ったから、戻るまで待ってやったんだぞ」

「……」

「簡単なことじゃないか。私の3人目の女になるだけの話だろう」



 なんですとー!? ダンロッパのやつミルネにそんな事言っていたのか!? しかも3人目って。

 これがミルネの憂鬱の原因だったのか。



「……ご、ご」

「うーん? 何か言ったか?」

「ご、ごめんなさい」

「はっはっは、やっぱり振られましたね、ダンロッパさん」

「ちっ、モリモンの言った通りになったか……」



 そりゃあ、断るのは当然だ。しかし、このまま何事も無く済むかが問題だ。

 


「生意気な女だ」


 

 ダンロッパは席を立ち、ミルネの所まで駆け寄った。そして……。


 

 パシーン!!

 

 

 ダンロッパはミルネの頬にビンタをした。

 その時の音がはっきりと俺のところまで聞こえた。

 

 あの野郎! 許さん! 俺の怒りのバロメーターは一気に上がったが、ミルネは、肩を震わせながら耐えているようだ。



「貴様勘違いするなよ! 私はSランクだぞ! 初めから貴様に拒否など出来ないんだぞ! 分かってるのか?」

「……」

「分かったかと聞いているんだ! ちゃんと返事しろよ! なぁ!」



 ダンロッパはミルネの頭を掴み、ぐるぐると回しながら下の方に押し込んで、無理やり返事をさせようとした。


 しかし、ミルネは涙は流しても、歯を食いしばり必死に耐えていた。


 この世界では『Sランク』は絶対的な存在である以上、どんな理不尽な要求でも従うしかない。不服を申し立てたくても、それを受理してくれるような機関も救済措置も存在しない。


 だから、ミルネのようにただ耐えるしかない。これがこの世界の『闇』だ。いや、この男だけの話かもしれないが。


 

「貴様は私の言う通りにやっていればいいのさ。よし、指令を出してやろうか。服を脱げ」

「えっ……」



 ダンロッパの予想外の指令に、ミルネは思わず顔を上げた。

 もちろん、俺の怒りのバロメーターは振り切りそうだ。

 


「裸になれと言ってるんだ! 早く脱げよ。Sランクの指示だぞ」

「そ、それだけは……」

「また逆らう気か?」

「……」



 ダンロッパは一度ミルネから少し離れ、モリモンの方を見ながら呆れた感じで話し掛けた。



「カリバーがトップになってからこの有様だ。規律も甘くなったものだ。昔は、Sランクには様付されていたのに。モリモン、何でランク付けされているか分かるか?」


「やっぱり、実力が分かるようにですかね」

「違うな。効率良く支配する為だ。例え実力がAランクであっても、Sランクに逆らうのであれば、それはもうDランク以下でいい。いや、罰を与えねければいけない」


「なるほど……」



 ダンロッパはモリモンにそう言うと、再びミルネに近づき、強引に服を引っ張った。



「だから、貴様の意志なんてどうでもいいんだよ! 私が命令したら黙って従え! これからはそういう時代になるのだ! 私の時代になるのだ!」

「きゃっ!」


 バタっ


「なんだ? なんか落ちたぞ。なんだこの木の枝は?」

「け、剣の素材……です」

「はっはっは! 聞いたかモリモン。これが剣の素材だとよ!」

「本当にふざけてますね。こんなもので魔法剣士になれるわけがない」



 ふざけているのはお前らだろ!! 逆に、そんな木の枝から剣にデザインして、Bランクの剣士としてやっている方が凄いと思うぞ。



「貴様の魔力なんてB級止まりだろう。才能なんて無いんだから、戦士なんか辞めてしまって私の女になる方が、未来は明るいぞ。なんならAランクにしてあげてもいいぞ」


「そ、そんなこと……」



 顔はあまり見えないが、床に何か落ちたのが見えた。恐らく涙だろう。

 

 ミルネは魔力のことを日頃から気にしていたから、ダンロッパみたいなクソ野郎でも、一応Sランクだけに才能が無いなんて言われれば、ショックは大きいだろう。


 駄目だ、もう我慢できない。

 さらに、ダンロッパはミルネの剣の素材を拾い、真っ二つの折った。



「モリモン、このゴミを処分しといてくれよ」

「はい、分かりました」

「これで分かっただろう。貴様は私に逆らえない。だから早く脱げ」

「……それだけは……許して下さい……」

「頭の悪い子だな」



 ダンロッパは強引にミルネの制服のブレザーを脱がし、ブラウスに手をかけた。



「貴様は従うしか無いんだよ!」

「きゃ!!」



 ドーーーーン!!



「何だ? 誰だ!?」

「あっ……マユ……リン!?」



 俺は考えることもなく、気付けばドアを蹴り破っていた。

 普通にドアは開けれるのだが、俺の怒りが頂点に達した為、感情的になってしまった。


 いくらこの世界のルールがあったとしても、友達として許せない。

 

 それに俺は日本で色んな『闇』を粛清してきた。だから、今回のダンロッパの件は完全に闇認定され、粛清されるべき対象になる。

 

 そして、その闇を粛清するのが俺の仕事だ。だから、いきなりSランク最強を敵にまわして、最悪な結果になってしまっても後悔は無い。

 

 むしろ、このまま何もせずにミルネを放っておく方が後悔するだろう。

お読み頂き、ありがとうございます。


気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ