第158話 お着替えタイム
いくら俺の姿が女の子だからといって、ミリちゃんの服を脱がしてもいいのか?
でも、従わなかったら何をされるか分からない。魔法は使わないって言っているけど、例外はあるだろう。
まぁ、裸も見てしまったし、今更という気もするが……。
「じゃあ、脱がすから万歳してくれるか?」
「ふん」
俺はあんまり見ないように、ミリちゃんの服をゆっくりと脱がした。でも、自然と視線がそっちにいってしまう。
うーん、小ぶりの胸で華奢な身体だが、下着は普通に大人っぽい。
いかん、いかん、ミリちゃんに興奮してどうする。
俺はお洒落に着飾れたブラウスを着せ、前ボタンをミリちゃんに触れないように慎重に閉めていった。特に胸の辺りは……。
ちょっとぐらいなら『手が滑った』っと言って、触れたくなるがそんな余裕はない。それにミリちゃんはずっと俺の事を見ているし、たまに髪を触ってくる。
そして、ようやくミリちゃんに服を着せることが出来た。まだ朝なのに疲れてしまった。
っと、その時!
ピンポーン
「げっ!! もうこんな時間!? お迎えが来てしまったぞ!」
俺はインタホーン越しに少し待ってくれるようにお願いをした。
「ミリちゃん、急ごう!! お迎えが来てしまった」
「駄目、真由ちゃんも着替えるの」
「もちろん、着替えるよ」
「ミリがやる」
「ええー」
時間が無いのに、そんな事をしている余裕なんかないぞ。
「ミリちゃん、また今度にしようね。待たせたら悪い……から……」
「駄目、今度はミリの番」
「うん、急ぎでお願いします」
そんな顔で睨まれたら、断れない。どうせ断っても聞いてくれないだろうし。
「真由ちゃんの服貸して」
「はい!」
俺はギャル風の服を渡したが、ミリちゃんが持っている服を着せられると思った。
そして、服を渡すと、ミリちゃんは一つ一つ、じっくりと吟味していた。
「ミリちゃん、早くお願いします」
「……」
「いや、何でもないです」
刺激しない方がいいだろう。それにして、ミリちゃんってこういう服に興味があるのかな? ちょっとミリちゃんのギャルバージョンも見てみたいなぁ。メスガキコンビになりそうだが。
「ふん」
「ああ! ビックリした」
突然、ミリちゃんは俺の服を強引に脱がし始めた。
「もっと優しく」
「ふんふん」
今まで魔法で、衣装チェンジしていたから慣れていないのは分かるが、強引過ぎるぞ。
「ミリちゃん、そんなに力をいれるとっああ!!」
俺はバランスを崩して、後ろに倒れてしまい、ミリちゃんも俺を押し倒すように倒れた。
「げっ! ミリちゃん!?」
「真由ちゃん、柔らかい」
ミリちゃんは真由の胸に顔を埋めていた。心地良いのかなかなか離れてくれない。
しかも、俺は袖を掴まれており、万歳するような状態なので抵抗出来ない。
「ミリちゃん、顔をのけてくれないと」
「真由ちゃん、欲しい」
「何を言っているんだ!?」
あまり長くそんなことをされると、変な気持ちになってしまう。
「ミリちゃん、顔を上げて」
「真由ちゃん」
「駄目だこりゃあ」
こうなったら、腹筋で強引に起き上がるぞ! それー!
「真由ちゃん、駄目」
「ええー、痛た」
俺が起き上がろうとすると、ミリちゃんは身体を前に乗り出し押し戻され、そのせいで、後頭部を床にぶつけた。
しかし!!
今度は俺の顔にミリちゃんの小ぶりな胸が押し当てられた。
「むぎゅう~、ミ、ミリちゃん?」
「真由ちゃんに食べられる」
「食べるか!? てか、なんで押し戻すんだよ!」
「これで着替える」
どうやって着替えさせるんだよ!
「ふんふん」
「痛てて、ミリちゃん、まず前のボタンを全部外さないと脱げないから」
「ボタン? これ?」
「そう」
「分かった」
異世界でもボタンが付いている服は普通にあったと思うが、やっぱり、人に服を着せたりすると勝手が違うのかな?
「ふんふん」
「キャア! ちょ、ちょ、ミリちゃん、もっと丁寧に、色々と当たっている!」
思うわず変な声を出してしまったが、ボタンを外す動作が雑過ぎて、俺の身体に触れまくりだ!
「真由ちゃん、大袈裟」
「い、いや、大袈裟じゃない!」
「ふんふん」
「ひゃあ」
ようやく、パジャマの上は脱げたが、この状況どう見ても襲われているよな?
「真由ちゃん、次は下。ふん!」
「うわーーー!!」
今度は勢いよく、パジャマのズボンを脱がされた。いやいや、これ着替えじゃなくて、襲われているだけじゃないか!
「真由ちゃん、可愛い」
「押し倒された女の子の下着姿を見て、その発言はやめなさい」
――こうして、無事かどうか分からないが、着替えは終わった。俺の服はTシャツとデニムのスカートを履くだけだから、そんなに苦労はしなかった。
でも、押し倒して着替えさせる方法は、謎だが。
しかし、どれだけの時間が経過したんだろう。待たせているのに。
「ミリちゃん、急ごう! 朝飯は、この菓子パンで無垢郎の部屋で食べよう」
「分かった」
俺はミリちゃんの手を引いて、車が止めてある所まで向かった。
「すみません! 遅くなりました!」
「いいえ、どうぞこちらへ」
車の外で待機していた組織の人は、後部座席のドアを開けてくれた。なんか凄い悪い気がしたが、ミリちゃんはお構いないしに車に乗っていた。
これはお嬢様の通学で、俺はその付き人みたいな感じになっている。
うーん、やっぱりミリちゃんはこっちでもお嬢様なんだなぁ。
「真由ちゃんも早く」
「はいはい、なんか車にすっかり慣れてしまったね」
「真由ちゃんも持っているの?」
「ふっふーん、あるよ。あそこに止まっている黒い車さぁ」
「真由ちゃん、凄い」
でも、真由のままでは運転出来ないだろうな。
――そして、組織に到着し、一旦無垢郎の部屋に入った。いつの間にか、ここが異世界の担当部署になりつつある。
和田さんは『こっちに居る間は休んでいい』と言っていたが、ミリちゃんがいる限り安心して休息は取れないだろう。
それよりも、アルシアと魔法の修行をそろそろやりたいところだが、その間ミリちゃんが大人しくしてくれるか心配だ。
無垢郎なら仕事を蹴ってでも、引き受けてくれそうだが、あいつの人生を崩壊させてしまいそうで気が引ける。
昨日の買い物も、魔法で小さくしているから実際どれだけ買ったか分からないが、多分相当買わされたと思う。
うーん、このままだと今度は俺が、付き合わされそうだ。なんとしなければ……。
無垢郎の部屋は、無垢郎もカリバーもいない。恐らく、他の場所で仕事をしているんだろう。
「ミリちゃん、誰もいないし、今のうちに菓子パン食べよう」
「うん」
この菓子パンはアンパンで甘いから、ミリちゃんのお口に合うと思う。
「ミリちゃん、美味しい?」
「美味しい」
さぁー、これからどうしようかな? 一応、本人に予定を聞いてみるか。
「ミリちゃん、今日はどうするの?」
「バイトに行く」
「そうかバイトかぁ……」
「……」
「……」
「え!? バイトー!?」
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