第157話 真由ちゃんと一緒にいたい
夜遅くに突然チャイムが鳴った。
「せっかく、いい感じだったのに」
ピンポーン! ピンポーン!
「分かったよ! 出るから待って!」
俺は着替えようとしたが、よくよく考えてみたら真由に合う服は、今日買った物しかなく、まだ袋の中だ。あとは、可愛いパジャマだ。
ちょうどそのパジャマが脱ぎっぱなしになっている。異世界に行く前日に着ていたものだ。
しょうがない、これを着るか。
俺は急いでパジャマに着替え、ドアの前まで行き、ドアスコープを除いた。するとそこに居たのは……。
「げっ! ミリちゃん? うん? アルシアも一緒か? でも、何でこんな時間に?」
俺は鍵を開け、ゆっくりとドアを開けた。
「真由ちゃん」
「うごっ」
いきなり、ミリちゃんが長い間会えなかった恋人同士のように、俺に抱き着いた。
実際は今日の朝以来だが……。
「アルシア、これは一体……」
「こんな夜分遅くにごめんなさいね。ミリちゃんがどうしても真由に会いたいと言うから」
「真由ちゃんと一緒に寝る」
「アルシアもあいみも仕事で疲れているのに、我儘言っちゃあ、駄目じゃないか」
「寝る前まではいい子でいたのにね」
あれ? このシーン、何かのアニメで見たような気がするぞ。
それより、これはもう俺を解放してくれないパターンだろうな。抵抗しても、ミリちゃんなら俺を拘束してでも一緒に寝るはずだ。
「分かった。ミリちゃんと一緒に寝るよ。アルシアはどうする?」
「ありがとう。私はあいみを車で待たしているから、戻るわ」
「そうか、気を付けて帰れよ。おやすみ」
「明日、組織の方がお迎えに来てくれるから、寝坊しないでね。おやすみ」
アルシアはあいみを待たせているせいか、足早に去って行った。そして、残されたのは、未だに抱き着いて離さないミリちゃんと、呆然と立ち尽くす俺だ。
「ミリちゃん、そろそろ放してくれないかな? 部屋の中に入ろうね?」
「……」
すると、ミリちゃんは顔を上げ、10秒程ジト目で俺を睨むと、再び顔をうずめた。
要するに『このまま連れて行け』というメッセージだろう。
「じゃあ、一緒に部屋に入るよ」
「うん」
相変わらず俺を放さない。もしかして、ミリちゃん本人で拘束しているつもりなのか?
そして、何とか部屋に入ったが、ミリちゃんはまだ解放してくれない。
「部屋に入ったよ。もう放してくれない?」
「駄目。ミリと一緒に寝る」
どうやら一緒に寝るまで解放するつもりはないらしい。まぁ、一緒に寝ても解放するつもりはないかもしれないが。それにしても、玄関前から抱き合ってベッドまで行くなんて、バカップルでもしないと思うぞ。
「ベッドまで来たよ。一緒に寝るから少し離れようか?」
「いや、このまま寝る」
「おい!」
ミリちゃんは強引に俺を押し倒した。
「ちょっと、このまま寝るのか? せめて電気ぐらいは消させてくれ」
「ミリは大丈夫」
「いや、電気代が……」
仕方ない。ミリちゃんは眠そうだし、もう少し待てば眠ってくれるだろう。焦って事を急ぐと、いつものように拘束魔法を掛けられ、朝まで何も出来なくなってしまうだろう。
でも、今夜は真由の身体でちょっと遊ぼうと思ったのに……。
うーん、しかし、一度テンションが上がってしまうと、ムラムラした気持ちがまだ収まらないなぁ。
しかも、ミリちゃんに抱かれている。この状況を冷静に考えれば……いや、冷静に考えたら駄目だ。
とりあえず、落ち着こう。
まだ俺にも、男が残っているようで良かった。たまに思う事がある。いつか心も真由に飲まれてしまうんじゃないかと。
早く、浩二に戻りたい。明日、無垢郎に戻る方法が見つかったかどうか聞いてみるか。可能性は低いと思うが……。
ふぅー、なんか俺も眠たくなってきたなぁ。
大人しく眠っているミリちゃんには、癒しの効果でもあるのかな.....。
――そして、目覚まし時計のアラームが鳴り響き、朝が来た。いつもなら、朝日で目覚めるのだが、電気を付けっぱなしだったので分からなかった。
「もう朝かぁ……」
今日は組織から迎えが来るみたいだから、早めに用意した方がいいだろう。
でも、車でお迎えって凄く偉くなった気分だぞ。社長出勤というやつかなぁ。ふっふっふー。
さてと、ここから脱出して、ミリちゃんを起こそう。ミルネが絡んでいないし、寝袋じゃないから脱出するのは簡単だ。
「ミリちゃん、起きて」
「むにゃむにゃ」
なんか小動物みたいで可愛いなぁ。何もしてこなければ。
「ミリちゃん~」
「むにゃ?」
「ミリちゃん。朝だから起きようね」
「真由ちゃん、起こして」
「えっ」
ミリちゃんは俺の方に両手を伸ばした。これは俺に『抱っこしろ』というメッセージだ。
「はい、起き上がろうね」
なんかすっかり甘えん坊さんになってしまったな。大丈夫か?
「真由ちゃん、着替えさせて」
「え? 魔法を使えばいいんじゃない?」
「駄目、着替えさせて」
もしかして、これは……。
「ミリちゃん、魔法は使わないようにしてくれているのかな?」
「うん、真由ちゃんの世界に合わせる」
「おお!!!」
よっしゃー!! ここにいる間は、理不尽に拘束されたりしないぞ!
ふぅー。それならミリちゃんとの共同生活も大分マシになる。良かった、良かった。
「真由ちゃん、これ」
「え?」
「ふんっ」
ミリちゃんは魔法で小さくしたゴスロリの服を取って、解除した。
「ミリちゃん、今魔法を使わないって……」
「……」
「何でもないです」
追及したら怒られそうだから、やめておこう。そういう努力をしているという事が大事ということで……。
でも、この服って買ってきたものだよな? いつものとは違って、デザインも凝っている。恐らく昨日、無垢郎の金で買ったんじゃないかな? 高そうだし。
「この服は買ってもらったの?」
「うん、真由ちゃん早く」
「分かった、分かった、じゃあ、あっ」
ちょっと待ったー!!
着替えさせるには、今着ているレースのワンピースみたいな可愛いパジャマを脱がさないといけないぞ。つまり、下着姿になる。
「真由ちゃん、早く」
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