表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/202

第156話 家に帰るまでが任務

 俺は山道の車道の端っこを歩いた。

 しかし、暫く歩いていると、1台の車が俺に横づけするようにゆっくり走り、窓を開けると中年の男性が話しかけてきた。



「どうしたの? こんな所を歩いていたら危ないよ。送ってあげようか?」



 親切心で言っていると信じたいが、なんか下心があるように思える。ここは断っておこう。



「すみません。結構です」

「遠慮するなよ。車で行く方が早いから」

「本当に大丈夫なので」

「そう言わず、乗れよ」



 しつこい奴だ。ぶん殴りたいところだが、そんな事すると警察沙汰になるし、そもそも、警察と関わると真由だと面倒なことになる。


 うーん、どうすれば。



「いいから、早く乗れよ!」

「いや、いいです」



 なんか段々と口調が乱暴になってきたな。早く何とかしないと。



「ちょっと!! 何かあったのですか!?」



 突然、後ろから追いついて来た車から、女性のしっかりとした口調で声を掛けて来た。



「やべぇ」



 その声と同時に、中年の男は逃げるように車を走らせた。そして、その女性ドライバーは車を止め、俺の方に駆け寄って来た。



「大丈夫? 酷い事されなかった?」

「大丈夫です」

「声を掛けられたの?」

「はい、『送ってあげる』と」

「ちょっと気になるね。連絡しておこうかしら」



 何処に連絡するんだよ!?



「ああ、私警察官なの。今日は非番だけどね」

「げっ」

「げ?」

「いや、何でもないです」



 別に何も悪い事はしてないけど、あれこれ聞かれたら困る。よく考えたら真由って、身分証的なものが何にも無いぞ。いや、確か異世界に行く前に無垢郎が身分証を作ってたって言ってたな。名前は……南田真由だったか。



「私は田中恵美。名前は何て言うの?」

「南田真由です」

「真由ちゃんは……小学生?」

「高校生です!!」



 うっ、なんか大人に見せようとしてギャル風にしてみたが、逆にガキっぽく見えるのは間違いないな。これなら制服の方がマシだったかも。



「はははー、ごめんなさいね。でも、えらく可愛い高校生ね。可愛いから逮捕しちゃおうか?」

「ははは……」

「ふふふー、冗談だからね」



 うーん、笑えない。

 本気でそういう事をするのが身近にいるからね。でも、このお姉さんだったら、手錠を掛けられて、あんな事やこーんな事もありだと思う。まぁ、俺も健全な男ですからね。


 でも、これがミリちゃんだったら、何されるか分からん恐怖があるから怖いんだよね。それで手錠なんてされたら、堪ったもんじゃないからな。


 ふぅー、何を想像しているんだ俺は。



「ところで真由ちゃんは、こんな所で何をしていたのかな?」

「友人の所に行っていたんですが、帰りのタクシー代が足りない事に気付いて歩いていたんです。なんとかこの時間の新幹線に乗るために」



 俺は新幹線のチケットを見せた。



「そうだったの。ここから駅までは歩いたら、かなりギリギリね。私が送ってあげようか?」

「いいんですか?」

「こんな所に、こんな可愛い子置いてはいけないし」

「ありがとうございます」



 まぁ、この展開を期待して答えてしまった気持ちもあるが、とりあえず良かった。男だったらこんな展開ないからね。美少女万歳!




 ――こうして、田中さんに車で駅まで送ってもらい、余裕で新幹線に乗る事が出来た。そして、車内でスマホを見ると、アルシアからメッセージが入っていた。



(お疲れ様です。今晩、ミリちゃんとあいみの家でお泊りする事になったけど、真由も来る? それとも、たまには自分の家で過ごしたいかな?)



 おお、ミリちゃんはあいみの家に泊まるのか。という事は、久しぶりに自分の家でひとりライフを楽しめるわけだな。


 俺はアルシアに返信して、後者を選んだ。  


 


 ――そして、俺は家に帰ると、もう21時ぐらいになっていた。


 

 やっぱり、家が一番だね。久しぶりだからテンション上がる。

 まずは飯にしたが、金が無かったのでコンビニの唐揚げ弁当になってしまった。

 でも、この数か月ゼリーしか食ってなかった俺にとっては、これでも十分だ。


 なんか一人暮らしなら当たり前だったが、今はなんか嬉しい。



「よっしゃー! 食べるぞ! まずはこの唐揚げだー! うん! うまーい!!」



 コンビニの唐揚げがこんなに上手いと思ったことは無かった。やっぱり、異世界に行ってから、こっちの生活は恵まれていると実感出来る。

 明日は奮発して美味しいお店に行ってみようかな?


 俺は自分の姿がお人形さんのような美少女という事を忘れて、無我夢中で食べた。

 

 しかし! まだ半分ぐらい残したところで、自分が小っちゃい女の子であることを思い出すことになった。


 うーん、もう腹が一杯になってしまった。男の時はこれぐらい楽勝なのに……。



「うっぷっ」



 残すのはなんか嫌だが、しょうがない。



「ふぅー」



 よし、飯も食ったし風呂にでも入るか。いつもならシャワーで済ますことが多いが、今日は特別だ。

 なぜなら、今日なら風呂に入っても、美少女に襲われることも無いし、着替えが水着にすり替えられていることも無い。つまり、安心して入れるわけだ。



 そして、湯が溜まると俺は脱衣所で服を脱いだ。

 この脱いでいる瞬間がエロいんだよな。

 今ならゆっくりと観賞出来る。でも、鑑賞するだけでいいのか? いやいや、何を考えているのだ俺は……。と、とりあえず風呂に入ろう。


 うーん、今思ったらシャンプーとか男物しか持ってないなぁ。流石に昨日の買い物の時、そこまで気が回らなかった。それに身体を洗うのに、いつものスポンジだと、真由のこの綺麗な肌が傷が付きそうだ。


 実際は泡で汚れを落とすみたいだから手で洗うか。でも、手で洗うのもちょっと、何だが……あれだけど……。



 さてと、髪も身体も洗ったし、湯に浸かるかぁ。



「ふぅー、気持ちいいなぁ。安心して湯に浸かれるのはいいねー」



 久しぶりに自分の家で落ち着けると、なんか真由であることを忘れて、浩二に戻ったような気持ちになってくる。



「うーん、この身体でアレをしたら……いやいや、うーん、何を考えているんだ」



 でも、真由の身体は誰かと入れ替わっているわけでもなく、俺の身体なわけで後ろめたいことは何もないはず。別に誰かに迷惑が掛かるわけでもない。



「ちょっとぐらいいいよね? よし」



 何だが今晩は、変な気持ちになってしまったぞ。

 俺は風呂から上がり、脱衣所で身体を乾かし鏡に映る姿を見た。

 

 

「もう誰にも邪魔されることはない! ちょっとぐらい、しっしっしー」 

 


 しかし!!



 ピンポーン!



「げっ! 誰だよ!!」

お読み頂き、ありがとうございます。


気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ