表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/202

第153話 ミルネの旅立ち

 風呂なのにこんなに疲れるとは……。

 流石のあいみもミルネとミリちゃんには、ちょっと引いていたなぁ。あの2人は無自覚でやり過ぎなんだよ。


 そして、ようやく解放された俺は、半袖と短パンでソファーで寛いだ。2人は今、テレビに夢中になっているからゆっくり出来る。


 暫くすると、片づけを終えたあいみが、俺の方にやって来た。



「お布団、どうする? アルシアは、任務が終わっても組織で泊まるみたいだから、使っても大丈夫って言ってたけど、布団1枚じゃあ足りないよね?」


「ああ、1枚で大丈夫。逆にそれ以上あったら燃やされるので」

「え!?」

「いや、気にしなくていい。とりあえず、それで大丈夫だから」

「よく分からないけど、布団敷いておくね」

「すまん、ありがとう」



 あいみは俺の言った事を、当然ながら理解していない。でも、これは実際に起こった話だからな。



「真由ちゃんが寝るならミリも寝る」

「あたしも寝る! 今日は疲れたよ」

「いや、まだ寝ないけど、あっ!!」



 あいみが布団を敷いた瞬間、ミリちゃんは俺が寝ると思って、いつものように強引に俺を布団の中に押し込んだ。

 そして、俺を真ん中にして、両サイド側から、ミリちゃんとミルネが抱き着くように入った。



「そんなにくっついたら、暑いだろ!」

「だって、明日からマユリンと離れるんだよ。今のうちにギュッとしておかないと死んじゃうよ」

「お前の身体は、どんな仕組みやねーん!」

「ミリも今のうちにギュッとする」

「ミリちゃんはいつでも出来るだろ!」



 確かにギュッとしないと、布団に収まらないかもしれないが、これで寝るのは少しきつい。



「3人とも仲が良くて、いいよね」



 あいみが微笑ましく俺達のことを見ている。もうこの2人のテンションについていけないんだろう。

 まぁ、その方が助かるが。


 ふぅー。


 でも、ミルネもミリちゃんも、今日は大人しく寝てくれそうだ。もうすでに、寝落ちしそうな感じだ。これだけの慣れない環境だったらから、相当疲れたに違いない。 

 俺は慣れている環境だったのに疲れたが……。


 明日はミルネの剣術の修行の為、新幹線で京都に行くわけだが、恐らくミリちゃんの新幹線に乗る許可は出ないだろうな。

 もし、無自覚で変な魔法でも使われたら、大惨事になる可能性があるから、ミリちゃんの場合は、もう少しここで大人しく過ごして、信頼を得ないと駄目だろう。


 しかし、それでミリちゃんは納得してくれないだろう。このままだと、一緒について来るだろうから、明日は無垢郎とカリバーに協力してもらうしかない。




 そして、明日の事を考えていたら、いつの間にか寝てしまった。


 気付いた時にはもう朝になっていた。それだけ疲れていたんだろう。いや、異世界に行ってから……じゃない、真由になってからいつも疲れているなぁ。


 さてと、朝と言えばやらないといけないミッションがある。失敗すると理不尽に拘束され、ミリちゃんが起きるまで動けない。


 ここから脱出するには、まず絡まっているミルネをどかす……ん? あれ? ミルネがいない。ミルネが居なければ、脱出は簡単だ。


 俺はゆっくりと布団から出て、周りを見ると……ベランダに出ているのか?

 

 何やら一人で、景色を眺めながら考え事をしているように見える。自分から早起きするだけでも凄い事なのに、やっぱり、今日から離れて剣術を習いに行く事に、不安を感じているのかな?


 ちょっと、行ってみるか?



「おはよう。自分から早起きするなんて驚いたよ」

「マユリン、おはよう。あたしだって起きる時は起きるさ」

「今がその時だったんだー」

「違うよ。今日の事を考えてたら、勝手に目が覚めたよ」

「そうか」



 やっぱり、気にしていたんだ。でも、まぁ、普通はそうなるのが当たり前だと思う。



「なんか剣術を教わるのが楽しみだよ。早くあたしも強くなりたい」

「おお! 前向きだな。てっきり不安なのかと思ったぞ」

「それもあるよ。でも、アル姉が見せてくれたように、自分もそうなりたい気持ちの方が大きいよ」



 アルシアのあの登場は俺も驚いたけど、あれがミルネに勇気を与えていたんだな。 



「じゃあ、ミルネも強くなって、ミルネの事を馬鹿にしたダンロッパをギャフンと言わせてやれ」

「出来るかな……でも、マユリンの方がそうしたくないの?」

「俺は、ミルネがギャフンと言わせた光景を見て、ニヤニヤしているから」

「はははー、何それー」



 そうなると、俺も頑張らないと。アルシアに魔法の特訓をしてもらって、ある程度マスターしておかないと場当たり的な戦いになるから、しょうもない事で敗北を喫するかもしれない。



「マユリンもアル姉と特訓するんだよね? お互い頑張ろうね」

「ああ」



 アルシアと特訓するにあたって、看過できない懸案事項がある事を思い出さないといけない。



「アルシアと特訓すると、ミリちゃんが1人になってしまうんだよね。しかも、遊びに行きたいと言ってるし。ちゃんと特訓出来るかな? ははは……」


「確かにそれは大事な問題だね。よし、あたしから言っておいてあげるよ」

「えっ!? 本当! それはありがたいけど」



 アルシアならともかく、今のミルネなら、ミリちゃんに言う事を聞いて貰えるのかな? ラビットちゃんの中で言う事聞いてくれないのって、俺だけなのかな? 隊長なのに……。


 けど、仮に上手くいっても、1人には出来ないから、誰かに面倒を見てもらう必要があるだろう。

 やっぱり、無垢郎とカリバー辺りに頼んでみるか。無垢郎なら喜び過ぎてやってくれるだろうけど、カリバーがどうかな? カリバーがいないとミリちゃんを任せられないからな。


 その辺も込みで無垢郎に頼もう。あいつなら、絶対何とかするに違いない。



「そろそろ部屋に戻ろうか?」

「うん」



 俺がベランダのガラス扉を開けようとした瞬間!!



「うわーーー!! 凄い勢いで開いた!!」

「きゃっ!」



 驚いたけど、何が起きたかはもう経験で分かる。そう、ミリちゃんだ。



「ミリちゃん、扉はゆっくり開けようね。結構、隣の部屋にも響くからね」

「真由ちゃん、ミリから離れたら駄目」



 なんか不機嫌そうだな。恐らく、起きたら俺もミルネもいなかったからかな?

 

 


 ――こうして、あいみの家で朝食を取った後、迎えの車で組織に向かって、ミルネの京都への準備を無垢朗の部屋でした。


 部屋には無垢郎とカリバーがいた。

 無垢郎は仕事の準備をしていたけど、カリバーはさっきまでゲームをしてたという感じだった。昨日の晩は任務で呼び出されたから、あんまり寝てないんじゃあ?


 本当に廃人になってしまうんじゃないか?


 今日はカリバーにミリちゃんの面倒を見てもらわなきといけないから、しっかりしてくれないと困る。まだ頼んでないけどね。


 でも、新幹線の乗車許可は、やっぱり、ミリちゃんだけは出なかった。何を仕出かすか分からない部分があるから、仕方ないんだけど、果たしてミリちゃんは納得してくれるのかが問題だ。

お読み頂き、ありがとうございます。


気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ