第152話 ミリちゃんの恐るべし魔法
俺は競泳タイプのスク水か? ビキニか? どちらがマシなのか、頭をフル回転させて考えた。
やっぱり、ビキニだと紐が解けてポロリというハプニングがあるかもしれない。
無自覚にミルネがやりそうだ。その辺り、スク水はそんな事はないから安心だ。
うーん、やっぱりスク水?
けど、着るの恥ずかしい……。バスタオルで巻いていこうかな。
スク水は、青紺色で肩紐が白色で伸縮性があった。俺はそれを手に取り着替えた。
これは恥ずかしい。でも、真由によく似合っている。サイズは丁度いい感じで、適度な締め付け感があっていい。この暑さなら、これで過ごすのも悪くないかもしれないが、あの3人の前でこの格好はヤバいな。
俺はバスタオルを身体に巻いて、スク水の部分を見えなくした。
これで肩紐しか見えないから、恥ずかしさはマシになったけど、なんかエロくなった気がする。
俺はゆっくりと廊下を歩き、部屋のドアの前までやって来た。すると、部屋からミルネとあいみが燥ぐ声が漏れてきて、すでに何かが始まっているようだ。
こんな格好で、この中に入るのは嫌だな。うーん、どうしようか……。
俺がドアの前で躊躇していると、突然ドアが物凄い勢いで開いた。
「うわーーー!! 痛てーー!!」
忘れていたが、ミリちゃんがいる時はドア周りは危険だ。でも、いつもなら吹っ飛ばされるが、今回はおでこにぶつけるだけで済んだ。
「ミリちゃん、ドアはゆっくりと開けようね」
「真由ちゃん、早く中に入って」
ミリちゃんは俺を手を引っ張て、部屋の中に入れようとした。俺はおでこに手を当てていたからあまり視界が入って来なくて、すぐに気が付かなかったが、部屋の中は凄い事になっていた。
「なんじゃこりゃー!? 海岸!? テレポートしたのか!?」
「違う。ミリのデザイン魔法」
部屋の中は南国にありそうな砂浜の光景が広がっていた。これはテレポートしていないのなら、あいみの部屋をミリちゃんのデザイン魔法で、そういう風に見せているだけという事になる……のか?
「マユリン、凄いでしょう!?」
「魔法って凄いね。あいみ、未だに信じられないんだけど」
「てか、みんな水着かよ!」
それで水着に着せられたのか? 水着に着替えていたのは俺だけではなく、3人ともだった。
あいみとミルネはビキニで、ミリちゃんは俺と同じスク水だった。
「マユリン、そのタオル邪魔だよ!」
「げっ、こら!引っ張るな!」
「真由ちゃんも水着になるの」
予想はしていたが、ミルネとミリちゃんはバスタオルを強引に引っ張り、剝がされてしまった。もしも、ビキニを選んでいたなら、この時に水着と一緒に脱げたんじゃないか? だから、スク水で正解だったかもしれない。
「マユリン、スク水を選んだんだ」
「ほーう、スク水可愛いね。ひっひっひー」
「ミリは分かっていた」
「ビキニだったら、今ので脱げただろ? お見通しなんだよ」
「なぜ、ドヤ顔」
こんな格好させて、辱めようと企んでいただろうが、それが裏目に出たな。ひっひっひー。
逆に何もされなかったら、スク水を選んだことに「そういうのが好きなんだー」とか言って、からかってきたと思う。
だが、予想通りの行動を起こしてくれたお陰で、ちゃんとした理由が出来てしまったからな。
「あいみは、女性用のスク水を着るの抵抗あると思って、ビキニを選ぶと思ったのに」
「あたしもだよ。この格好のマユリンをぎゅっとしたかったのに」
「それはお前の願望だろ!」
「真由ちゃんはスク水好き。だからミリもスク水にした」
「違うよ!」
なんか俺が何を選ぶのか予想していたのかな?
「それで、この砂浜は何だ? この海にみんなで泳ぐのか?」
「ミルネちゃんと夏の話をしていたら、海の話になって、ミリちゃんがこの雑誌を見て魔法で何かしてくれた」
「マユリン、湖の時は一緒に遊べなかったから、ここで遊ぼうよ」
「分かったけど、もう拘束魔法とか無しだからな」
「こうそく?」
しまった。あいみに変な誤解を与えてしまいそうだ。
「いや、高速で移動するなよっていう話だ。気にしないでくれ」
「ふーん、色々大変だったんだね」
「マユリン、そんな話あったかな?」
「さぁ、どういう原理か分からないが、目の前に海があるなら泳ごうぜ! とーう!」
「真由ちゃん、危ない」
ゴーン! バターン!
「痛たーー!! 同じ所をまった打った……うっ、マジで痛い。何だよ! この海!? 壁みたいに固いぞ!」
「海は壁。見た目だけデザインした」
「何というリアルさ。て、いうか先に言ってくれ」
ミリちゃんの事だから、何か凄い魔法で海も再現してくると思っていたからな。それにしても、痛すぎる。
「真由ちゃん、海に入りたいならこっち」
「なっ」
突然、ミリちゃんは俺の手を引っ張って、浴室の方に向かった。
「ちょ、ミリちゃん、一体何をする気?」
「ここを海にする」
「え!?」
「ふんっ」
すると、ミリちゃんはデザイン魔法で浴室をさっきと同じ砂浜に変えた。でも、部屋に比べれば大分狭くなるはずだから、うかつに入ればまたぶつけそうだ。
「真由ちゃん、こっち」
「うわっ」
「あたしも入りたい」
「3人ともごゆっくり~あいみは部屋の片づけするから」
流石のあいみも少し引き気味だ。俺が美少女にされた頃は、もっとぐいぐい来たのに。ちょっとは成長したのかな? いや、ミリちゃんとミルネがヤバ過ぎるだけかもしれない。
それにしても、広い海なのに3人が一個所にくっついているのは、違和感があるぞ。俺の前にミリちゃんが前向きに座って、後ろのミルネだ。狭いから結構密着する……水着だし、これはヤバい。
「くっつき過ぎだぞ」
「だって、狭いもん。マユリンのスク水、前と少し違うね」
「触るな!!」
「ミリも!」
「い、いや、やめ! げぼぼぼっ」
突然、ミリちゃんが強引に向きを俺の方に変えたせいで、変に避けようとしてお尻が滑り、顔まで海? 湯? に浸かってしまった。
「マユリン、大丈夫!」
「真由ちゃん、大袈裟」
「げほげほ、はぁー、ふぅー。溺れたぞ…….ん? 何だこれは?」
「マユリンのエッチ~」
「げっ!!」
なんか掴んでいると思ったら、これはミルネの水着のブラじゃないか!? 滑った時に咄嗟に掴んでしまったのか。
「いや、これはそんなつもりじゃないぞ。返すから早く着替えろ」
「ひっひっひー、あいみから聞いたよ。この世界では魔法を使わないから、裸になって洗うんだよね」
「何を企んでいる? ここは海という事じゃなかったのか?」
「ミリちゃん」
「ふんっ」
ミリちゃんが魔法を解除すると、海から元の浴室に戻り、湯気が立ち昇った。
「お、俺はもう風呂に入ったから、出るよ」
「駄目、真由ちゃんと一緒」
「あたしが洗ってあげるよ。スク水脱いで」
「ミリも脱ぐ」
「それはNGだから!! もう終わりーー!!」
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