第15話 ネスタリア学園の闇
――――一場面変わって、ここはダンロッパの寮。
ダンロッパの部屋は男子寮の4階にあり、この階のほとんどを占めており、かなり大きな部屋になっている。
部屋に入る扉を開けると、30人は入れるフロアになっていて、ここで客人を招き入れパーティーを開いたり、討伐隊や政策の会議も使えそうなものになっている。
さらに、このフロアの奥に扉が、ダンロッパのプライベートルームになっている。
そして、このフロアでダンロッパとモリモンがいた。
「ダンロッパさん、上手くいきましたね。これでようやく一番ですね。あとは魔法のランク試験のルール改正ですね。Sランクのトップの承認制、つまり、ダンロッパさんが最終判断するという制度」
「ふっふっふ、私がトップになったからそうなるね。あとはベルリアの承諾が必要になる」
「やはり、討伐隊での決着になりそうですか?」
「ああ、そうなるだろうね。彼らは何かと反発するかね。まぁ、いずれベルリアを潰してやるが」
「倒せますか? 向こうとそんなに戦力差は無いと思いますが」
ダンロッパは、その問いに自信があるのか、余裕の笑みを浮かべた。
「モリモン君、君は殺人を目的とする専属魔法団『ガムイ』っという男を知っているか?」
「えー!? 確か3年前に、強力な魔力を持ちながらも、女子の顔を何度も踏みつけたりするような異常性と、禁止されている『殺人魔法』の研究、やり方が残虐過ぎるから、ネスタリアから追放されたという……あのガムイですか!?」
モリモンはガムイの名前を聞いた途端青ざめた。
「その通り。彼とは同期でね、今でも繋がっているんだよ。まぁ、異常な性格の持ち主だが、戦力はSランクを凌駕している」
「な、なんと!」
「ベルリアの討伐隊長に女がいるだろ? ガムイなら喜んで抹殺してくれるだろう」
「なるほど。こちらが優位になったところで一気に潰すわけですね」
モリモンは冷や汗をかいたが、ダンロッパの話を聞いて少しずつ余裕を取り戻した。しかし、ダンロッパは余裕の笑みは消え、冷静になっていた。
「しかし、やり過ぎると魔王軍の攻め入る隙を与えてしまうからな。難しいところだ」
「なるべく討伐隊との戦いは、最小限にしないといけませんね」
「ま、いいさ。私がすべてのトップに立てば、魔法戦士を増強して、魔王軍も倒してやるさ。そうなれば、誰も私に逆らえなくなるだろう。その時はモリモン、君にもいいポジションを用意しておくから、協力してくれよ」
「はい、ダンロッパさん」
――――場面は変わり、ここは東京の『組織』の中の無垢朗の部屋で、いつも通りカリバーはゲームをしていた。そこに無垢朗が部屋に入って来た。
「無垢朗君、浩二君に魔力の『起動』をするのを忘れたけど、戻らなくても大丈夫かな?」
「それは他の魔法使いも出来るんだろう?」
「ああ、誰でも出来るよ」
「なら問題無いよ。浩二君だったら上手くやるよ。今までもそうだったし。まぁ、突然現れて『無垢朗、あれしてくれ、これ用意できるか?』とかならよくあったけどね」
「なるほど。なら安心してゲームが出来るね」
カリバーやっているゲームは、よくあるRPGオンラインゲームだ。
「そんなにゲームが面白いのかい?」
「ああ、面白いよ。魔法の種類も豊富で設定も細かいし、戦術も僕が参考にしたいぐらいだよ。魔法を繰り出す時、呪文みたいに唱えるのも恰好いいし、服装も凝っている。特に女の子は可愛い恰好しているしね」
「魔法少女いいね。浩二君が羨まし過ぎる」
「ねぇ、無垢朗君」
カリバーがコントローラを置いて、手を止めた。
「どうしたんだい?」
「魔法の無いこの世界で、なんでこんな素晴らしい魔法の世界を描くことが出来るのかな? それが不思議なんだよね」
「……」
無垢朗は答えに詰まった。
普通の感覚で言えば、ゲームや映画に描かれているものこそが魔法の世界なので、あえてそれが素晴らしいという感覚は無かっただろう。
もしくは、多くの作品に見慣れてしまったせいで、最初の頃の感動を忘れてしまっただけなのかもしれない。
「そうだね……魔法が無いからこそ憧れるんじゃないかな? 憧れて創るからこそ、理想と夢が詰まった素晴らしい作品が出来るんじゃないかな」
「無いからこそ憧れるか……。僕の世界だったら『魔法を無しで何かを……』という発想すら無いような気がするね……」
そして、再びカリバーはゲームを始めた。2人が沈黙していると、突然あいみが部屋に入って来た。
「入るよ! あ! 無垢朗さん、和田司令官が呼んでいたよ」
「分かったよ。ところであいみちゃん、無いからこそ、想像したり、憧れることってあるよね?」
「何それ……変態」
「なんでそうなるんだ?」
これは無垢朗の日頃の行いが悪いせいで、あいみは完全に下ネタとして捉えたようだった。
「無垢朗さんが美少女になっても、可愛がったりしないからね」
「差別だ!」
「無垢朗君が美少女になって僕の世界に行ったら、きっと18禁ゲームみたいになるだろうね」
「カリバー君、もうそっちのゲームにも手を出したんだね」
――――場面は戻り、ここは女子寮の部屋の中。
俺は図書館から慌てても戻ったが、やはりミルネは落ち込んだままだった。
ミルネは感情が顔に出やすい子だと思う。楽しい時は溢れんばかりの笑顔だし、不安の時はもの凄く心配そうな顔をする。
だから、こんなに暗い顔をするのは、きっと悩みがあるのだろう。しかし、それを聞いても教えてくれない。困ったものだ。
結局、ミルネの傍にいても特に会話もする事もなく、悪戯に時間だけが過ぎていった。
「マユリン……ちょっと出かけてくる」
「今から!? どこに?」
「……すぐに戻るから」
意外にもこの沈黙を破ったのは、ミルネだった。
いつもなら夕食も終え、床に就くところだが、今日は夕食もまだ食べてない。
「あ……」
ミルネは部屋を出てしまった。
この状態で、何もしないで放っておくのは良くないだろう。心配だから俺は、気付かれないようにミルネの後をつけることにした。
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