第140話 ダンロッパ粛正と魔王軍討伐
ライムさんの話はまだ続く。
「次に入って来た情報が、ラビットちゃんとストレングスが合流して、ベルリア学園を攻めに来たという話だ。ミリちゃんの能力が発揮させれれば、こちら側の敗北は確定だし、ギリギリ勝っても、ダンロッパ率いる討伐隊まで勝つのは不可能。だから、対魔王軍用に開発していた結界魔法『ベルテックバリア』を使って、圧勝を狙っていたのさ」
ミリちゃんの能力が発揮されれば、ベルリア学園の討伐隊は敗北かよ! だったら、ベルリア学園に協力を求めなくても、ミリちゃんを説得出来れば、すぐに解決していたかもしれないな。はぁー。
まぁ、それが出来ないからみんな苦労しているんだけどね。
「ここまでの経緯はこんな感じだ。今度はお前達の事を教えてくれないか? 何か要求があってここに来たんだろう?」
おおー!? 自然といい流れになって来たぞ。もちろん、要求はある。よし!
「今回の件にしても、ダンロッパがガムイという男を仕向けて事件を起こしました。こちらもアルシアが被害に遭いました。だから、こちらの要求は、ダンロッパの暴走を一緒に止めて欲しい事です」
「ほーう、あのデス魔法を受けたのか?」
「はい」
ライムさんからすれば、魔法が使えるアルシアを疑問に思うだろうな。でも、なんて説明していいか分からない。
「なるほど、分かった。お前達の要求を受け入れよう。その代わりこちらの要求も聞きいて欲しい」
なんかあっさりと要求が通ったぞ。後はどんな要求をして来るか? だけど、大体想像はつく。
「エイルテック討伐隊隊長のオリンを助けて欲しい。お前の居た世界なら、魔力が消失していても治せるんだろう? アルシアのように」
思った通り治療だった。しかし、俺個人としては治療させてあげたいが、まだベルリア学園の人達をどこまで信用していいのか分からない。
闇雲に転移させて、悪意ある者だったら、日本、いや世界中の人達に危険が及ぶかもしれない。
そもそも、和田司令官はそれを警戒して俺をこの世界に送ったわけだし……。
でも、見捨てるのもなぁ。大丈夫だと思うけど。
うーん、あっ!!?
そう言えば、カリバーの伝言で『準備は整えておくから、いつでも帰って来ても大丈夫だよ』だったか? あれはそういう事なのか? カリバーはベルリアの事情を知っていたのか?
アルシアが帰って来た時も、絶好のタイミングを狙っていたという話だし、時々情報収集の為に戻っていたのかもしれない。
今回はそれに賭けてみるか? カリバーはこの世界では凄いやつだしな。
「分かった。治療させるよ。でも、出来るだけ少人数で、俺の世界の話はあまり口外しないで欲しい」
「ああ、分かっている。連れていくのは、オリンと延命の為の魔力を送っているAランク2人だけにしておく」
「ちょっと待って!! あたいも一緒に行きたい!! オリンの傍に居てやりたいんだ!」
突然、声を上げたのはメルリだった。
「真由、メルリにテレポート役をさせてみてはどうだろう?」
「頼むよ!」
テレポート役は必要だから、こっちも助かる。
「テレポートしてくれるなら、こちらも助かるからいいよ」
「ありがとう! やったぜー」
なんか急展開になって来たけど俺、日本に帰れるという事だよな? そう思うとテンションが上がってくる。
「では最後に太助の要求があるなら聞こう」
忘れていたが、ストレングスにも要求する権利はある。だけど、何を要求するのか全く想像出来ない。
「ゴ、ゴッスン」
「我々は指示に従うだけです。我々と合同訓練をしてくれれば、それでいいです」
太助さんの代わりにゴレイアーさんが話したけど、当初の指示の内容だ。ダンロッパにハメられた事に気付いていないのかな?
「そんな事でいいのか? それはフェルティングスに対応させよう。それで一つはっきりさせたいが、ストレングスは今誰の指示に従っているのだ?」
「ゴッスン……」
「我々はトップであるダンロッパさんの指示に……」
ゴレイアーさんは言葉に詰まった。流石にこの流れでダンロッパとは言えないだろう。しょうがない、例のあの技を使うか。
「ゴレイアーさん、ダンロッパの味方になると、ミリちゃんが怒りますよ」
「ゴッスーン」
「なら、仕方ないです。我々はあなた達に従います」
ミリちゃんの力を使ってしまったけど、別に使わなくてもストレングスは協力してくれただろう。
「よし、後は魔王軍の対策だ。ダンロッパを潰すとなれば、モリモンとケイトとの討伐隊とも戦わなくてはならなくなる。そうなれば、魔王軍は攻めて来るだろう。特に最近、不穏な動きもあるみたいだし。その時は一緒に魔王軍と共闘しようじゃないか」
魔王軍対策って、ライムさんの要求は、治療だけだったけど、実は魔王軍と共闘したいという要求もあるんだろう。
2つの要求を1つに見せかけていただけなんじゃないのか?
でも、こちらもダンロッパを潰せば、チャンスとばかりに魔王軍が攻めて来るだろうし、魔王軍との戦いは避けれないだろ。
「分かりました。でも、ダンロッパの事を良く思わない者も結構いると思うので、ベルリア学園が協力すると知ったら、ケイトさん辺りはこちら側に付いてくれるかもしれません」
「そ、そうか」
そして、今まで大人しく話を聞いていたアルシアが立ち上がった。
「ライムさん、魔王軍討伐は、私達の悲願でもあります! もし、討伐する時は私達も協力します!」
「流石、アルシアだな」
やっぱり、アルシアは凄いな。
そして、話し合いは今後についての話題になり、しばらく続いた。
要約すると、俺達はベルリアに招待され、今日はもうゆっくりしてもらいたいらしい。そして、明日には、組織に戻ってオリンの治療を受けに行き、2週間程滞在する予定だ。
俺達が向こうにいる間、ライムさん達は魔王軍とダンロッパの調査をして、オリンが復活して戻れば、すぐに行動を開始する流れになっている。それからストレングスは、ひたすらベルリアと演習に励むそうだ。
実は俺も、この2週間で魔法をちゃんと覚えたいと思っている。組織に戻って魔法の練習というのも変だけど、アルシアにお願いしたらコーチになってくれるかな?
とりあえず今日は、お言葉に甘えてゆっくり過ごすつもりで、ベルリアの街を観光でもしようかと思う。さて、ベルリアの街はどんなものだろう?
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