第14話 2年前の魔王軍襲来事件
俺は校舎内をうろうろしていると、イメージ通りの図書館を発見した。校舎も迷う程広くないので、見つけるのは簡単だ。
今は授業中だが、自習に来ているのか結構の数の生徒がおり、机に本を広げて読む人や、勉強をする人もいた。
とりあえず、魔法無しでもなんとかなりそうか……。
それにしても、ここにある本棚はなんでこんなに高いんだ!?
上段が届かないだろうが!
うぅ、俺が小さいだけなんだけどね。男の時は背は高い方だったから、こんな苦労はなかったのにな。でも、それを逆に利用する方法もある。
美少女の特権というものを使ってみるか。
俺は上段にある適当な本を、背伸びして手を伸ばした。
「うーん……届かない……」
と、言ってみた。すると近くにいた男子生徒がそれを見て話しかけてきた。
「この本かい?」
その男子生徒は本を取って、俺に手渡してくれた。もちろん、俺の探している本ではない。
「ありがとう。でもこの本じゃなかったみたい」
「どんな本を探しているんだい?」
よし、その言葉を待っていた。
「近年の出来事が分かる本かな」
「えーと、それなら歴史本がいいかな。ちょっと待ってて」
いいね、待ってるだけで欲しい本が手に入りそうだ。
「お待たせ。はいどうぞ」
「ありがとう」
そこそこ分厚い本だな。
俺は少しページをめくってみたが、白紙で何も書いていなかった。
おいおい、まさかボケたわけじゃないだろうな。
「これ何も書いてないけど」
「それは歴史本だから、どんどん上書きされていくんだよ。指先にほんの少しの魔力でなぞると、読めるようになるよ」
「そうなんだ。親切にどうも」
「じゃあ、僕は行くね」
指先に魔力を溜めるだけなら、俺でも出来そうな気がする。これは魔法の自主練にもなって一石二鳥だな。
俺は指先に魔力を集中させ、指先が光ったところで本になぞった。すると、本全体がふわっと光り、すぐに消えた。
さっそく、ページをめくってみると、ぎっしり文章が表示されていた。
「よっしゃ!! きたー! これ!」
「お静かに」
「すみません」
俺は思わず声を出してしまったが、単純に嬉しかった。この調子で色々覚えていかないとな。
よし、読んでいくか。
(その昔、人間が初めて魔法を使ったとされる人物は『パロデメイタ』と言われてます。彼は紛れもなく『ネスタリア』出身で)
昔過ぎるわ! それに何で『ネスタリア出身』とこだけ絶対的な表現になってるんだよ!
俺はページをペラペラとめくり、そしてカリバーの名前が出てきたので、そこから読むことにした。
(2年前に魔王)
ちょっと待った! いつから起算しての『2年前』なんだよ!
いや、ちょっと待てよ。
俺が魔力でなぞった瞬間からなのか? あの男子も「上書きされる」って言ってたしなぁ。
(2年前に、魔王ザイロンが率いる魔王軍が、人間を滅ぼす為に総攻撃をしかけてきた。そこで『ネスタリア』ナンバー1のカリバーとナンバー2のマリの主導のもとに、『ベルリア』も加わって討伐隊を結成した。ネスタリア陣営の活躍とカリバーの『ファイヤードラゴン』という大技の魔法攻撃により、魔王軍を撤退へと追い込み、大きな勝利を収めることが出来た)
なんかネスタリアばっかりで、偏重しているよな。ベルリアに関しては、人物名すら書いてない。
(しかし、偉大な勝利を収めたカリバーとマリだが、帰還する際に遭難した)
いや、それは流石に無いだろ! 魔王軍を撃退して、帰りに遭難って……。
(その後は、偉大なる魔法使いダンロッパさんがネスタリアを、より発展と豊かな生活が送れるよう主導しました。またダンロッパさんは――)
あれ、最後はダンロッパのごり押ししかないぞ。
俺は本を閉じた。これ以上読んでも得るものはないだろう。とりあえずダンロッパにはなんか『闇』がありそうなのは分かった。
あいつには気を付けた方が良さそうだ。それ以前にCランクの俺が関わることはないか。
それより、知れば知るほどカリバーって凄いやつなんだな。
ただのネトゲ廃人じゃないのか?
あいつは何か目的があって来たのか? 今度会ったら問い詰めてやらなければ。
さてと、日はまだ高いし、まだ時間はありそうだ。日常に使える魔法の勉強でもしていくか。
でも今日は早めに寮に戻ろう。ミルネのこともあるし。
――そして、外はすっかり夕日に染まっていたが、俺は日常生活に必要な魔法を中心に、図書館で勉強をしていた。
しまった! もう夕方じゃないか! ミルネが心配だから、早めに寮に戻ろうと思ってたのに。
俺は急ぎ足で寮に戻った。すると、予想通りミルネの方が先に帰っていた。
「ああ、た、ただいま」
「……」
「……」
「……おかえり」
やばい! 出迎えの時より落ち込んでいる!
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