第135話 ベルリア学園トップのライムさん
俺はライムさんを殴る直前、勢いを殺してビンタに変えた。しかし、勢いは殺したつもりだったが、とてもいい効果音を響かせながら、ライムさんはそのまま少し飛ばされるように倒れてしまった。
その光景が目に入ったのか、フェルティングスやメルリの動きが止まり、ライムの方に視線が向いた。
そして、俺はミルネとストレングスに手を向けて、攻撃中止の合図を出した。
「ライム!!」
「おい! 嘘だろ!!」
フェルティングスとメルリは、ライムさんが一発でやられてしまった事に動揺しながら、急いで駆け寄った。
「おい! 大丈夫か!?」
2人はライムさんに声を掛けているが、何故か起き上がらない。
あ、あれ? そんなに強く叩いたかな? 気絶してしまったかな? 早く目を覚ましてくれないと……。
「おい! よくもライムをやってくれたな!」
「オリンだけでなく、ライムまで……あんた覚悟は出来ているんだろうね!」
「げっ!!」
いやいや、そんな展開止めてくれよ! もういいわ!!
でも、今回はミルネやミリちゃん、ストレングス、そして、アルシアもいる。焦ることはない。
よし、助けてもらおう!
俺はみんながいる方を振り返ると……。
げげっ!!
みんなは地上に降りてきたアルシアの方に集まり、そこにストレングスも加わってなんやら楽しく談笑していた。
あー、楽しそうだな。ミリちゃんがいないと思ったら、アルシアの所にいたのか。
俺も加わりたい……。アルシアに話したい事、聞きたい事が一杯あるのになぁ……
あはははは……。
「おい! 何よそ見をしておる!!」
クソー!! なんで俺だけいつも、強敵に1人で戦わないといけないんだよ!!
ていうか気づいてくれよ!
「えーい、こうなったらやけくそだ!! どっからでも来い!!」
「ふん、覚悟は出来ているみたいだな。では、行くぞ!!」
初見ならこの2人から逃げるくらいは出来るだろう。
しかし、フェルティングスとメルリは、前へ一歩踏み出そうとした瞬間!!
「2人ともちょっと待て!! 俺は大丈夫だ」
ライムさんはゆっくりと起き上がると、フェルティングスは剣を下ろした。
「あんた、大丈夫なのかい?」
「ああ、何ともない。ふーう、初めてだよ。女の子に打たれたのは。何か俺の心に響くような感じだったよ」
そう、これが俺が期待していた展開だ。けど、後半は何を言っているんだ?
「お前に興味が沸いた」
ライムさんは俺にキメ顔で、気持ち悪い事を言ってきやがった。もしかして、真由に一目惚れしたわけじゃあないだろうな?
この真由は男だぞ。それとさっきから、メルリが怖い顔で俺を睨んでいる。
おいおいおい、面倒なことになるんじゃあないだろうな……。
「こんな気持ちになったのは久しぶりだよ。おっと、今はこの話はやめておこう。お前とはまた2人きりで話がしたいものだ」
おいおいおい、何言っているんだ!?
ここは諦めてもらう為に、早めに手を打たないと……。
「はははは……一応、俺はミリちゃんの物なので……そういう事は……」
「そうか、それは仕方がないな。そんな恐ろしいことは出来ない」
うーん、半分冗談で言ったのに、ベルリア学園のトップでもミリちゃんを恐れるか。でも、これで諦めてくれそうだ。
でも、逆に俺はミリちゃんから自由になれるのか?
まぁ、今は考えるのはやめよう。
それよりさっき、ライムが「2人きりで」と言った時、メルリから殺意を感じた。
恐らく、メルリはライムの事が好きなんだろう。
「真由に1つ聞きたい事がある。単刀直入で聞くぞ」
単刀直入って、何だよ! 好きな人はいるのか? とかじゃないよな。
「お前は、奇跡の世界からテレポートで転移したんじゃないのか?」
「うん、あ、ええーーーー!!」
予想外の質問が来たぞ! 奇跡の世界から転移して来たという事は、東京? 日本? 地球? 範囲は分からないが、俺が住んでいた世界を示しているんだろう。
俺が美少女になる前、組織に侵入した犯人がライムさんだから、俺の居た世界を知っていてもおかしくない。
だけど、今は美少女なのに、なぜ分かるのか? 確か、魔王フィルリアルと初めて会った時も、同じ事を聞かれた事がある。
もしかして、魔力で分かる人には分かるのかな?
「なぜ異世界から来たと? やっぱり魔力ですか?」
「魔力? それは知らないが。奇跡の世界では、魔力が無くても魔法みたいな事が出来るみたいだからな。さっきの技もそうじゃないのか? 俺はあの世界に何回か行った時、その技を使っていた男を見たことがある」
魔力は関係無いという事は、魔王フィルリアルが特別なのかもしれない。
それから、その男というのも、俺がまだ美少女になる前、あいつを追い詰めた時の事だ。それで同じ技を使う真由を異世界から来たと思ったんだろう。
まぁ、それがきっかけで、俺はこの世界に魔法習得と、あいつを調査しに行く事になってしまったわけだが……ん?
今、あいつの事を調査するには、絶好のチャンスじゃあね?
なら、色々聞き出してやろう。
まぁ、調査で本人から聞くと言うのも変な話だが。
「えーと、ライムさんはなぜ奇跡の世界行ったのですか?」
「カリバーに会う為だよ。お前なら知っているんじゃないか? あいつのテレポートで来たんだろう?」
「い、いや、それは……」
俺があれこれ聞きたいのに、なんか向こうのペースでこっちが色々聞かれているぞ。しかも、カリバーが居ることも知っているなんて、俺は何て答えてたらいいんだ?
「どうした? 答えられないのか?」
「ははは……」
「まぁ、いいさ」
もう笑うしか出来ない……。
「最後に聞くが、お前は魔王軍と接触したと報告があったが、あの魔王に会ったのか?」
「あの魔王って、フィルリアルの事ですよね? えーと、それは……」
うーん、魔王の事も正直に言った方がいいのか? いや、関係者と思われるかもしれないから、偶発的に魔王軍と接触した事にした方がいいかもしれないな。
「ほーう、ザイロンではなくて、フィルリアルと答えるか」
「あっ」
しまった!!
一般的には魔王はザイロンだった。
お読み頂き、ありがとうございます。
気に入って頂ければ、ブックマークや↓の☆をクリックしてくれますと、モチベーションが上がります!