第133話 救世主現れる!?
ベルリア学園のSランク3人が、魔力をどんどん溜めている。本来なら溜めに時間をかけ過ぎると、相手側に隙を作ってしまうから、ここまでやらない。
しかし、今回はその心配が無いから溜め放題だ。
これだけの魔力で打込まれたら、跡形も無くなってしまうんじゃないか?
ここはミリちゃんを起こすしかない!
「ミリちゃん! 起きて! 大変なことになった!!」
俺はミリちゃんを降ろすと、ミリちゃんは目を擦りながらも、素直に起きてくれた。
「真由ちゃん、帰ろう」
「いや、俺も帰りたいけど帰れない。それより、ミリちゃんあれを何とかしてくれないか? 空間魔法であの結界を切り裂いてくれ」
空間魔法なら、空間と一緒に結界も裂けるんじゃないか? 我ながらいいアイデアだぞ。結界が無くなれば勝機はある!
「ミリちゃん、空間魔法をお願い!」
「……」
「ん?」
「ぷいっ」
「えぇぇぇー!!」
ミリちゃんは顔を膨らませて、そっぽを向いた。
なぜー!? 拒否するー!?
「どうしたの? ミリちゃん、なんで嫌なの?」
「真由ちゃんが怪我するから嫌」
「俺が!?」
うーん、どういう思考回路でそうなった……いや、もしかして、昨日のミリちゃんの暴走してしまった時に、事の重大さを教える為に、額から流れる血を拭かずにミリちゃんを叱ったことがあった。
それでミリちゃんは、空間魔法のせいで、俺が怪我をしたと解釈したんじゃないのか? だから、空間魔法使用=俺が怪我をする、みたいに思っているのでは。
「ミリちゃん、俺はもう大丈夫だから」
「嫌」
駄目だ! 全然やってくれそうな雰囲気ではない! どうすればいいんだ!?
もう打ってくるぞ!
いっその事、ミリちゃんの後ろに隠れるか? ライムさんもミリちゃんは助けると言っていたから、無茶な事はしないと思うし。
「魔力は溜まった。お前達にこれを防ぐ手段は無い。覚悟しろ!」
げっ! もう溜まってしまったか!? どうしよう……。
太助さん達はどうしているのかな?
俺はストレングスの方に視線を向けた。すると、太助さんの前にAランク4人がガードして、さらにその前をBランクが囲んでいた。
これは身を挺してSランクである太助さんを、守っているんだろう。
はぁー、一瞬でもミリちゃんの後ろに隠れようと考えた自分が恥ずかしい。
いくら生き残る可能性が高いからと言って、こんな幼くて可愛い女の子を盾にするなんて、絶対に出来ない。
俺はこの討伐隊の隊長で、年上でもある。俺が守らないと……。
「ミリちゃん、ミルネ、俺の後ろに隠れてくれ」
「マユリン、何をするの?」
「俺が防いでやる」
「無茶だよ」
「これは隊長命令だ。心配しなくても大丈夫。勝算はあるから」
勝算なんて無いんだけどね。こうでも言わないと下がってくれなさそうだからな。
「マユリン……」
「真由ちゃん、帰ろう」
俺は2人前に出て、両手を大きく広げたが、これ以上守る術はない。よくよく考えてみれば、俺は魔法からの攻撃を防ぐ術を何一つ持っていない。だからこうやって身体を張ることしか出来ない。
今まで攻撃系の魔法とか、魔力とMPCとの組み合わせた技とか中心にやってきたけど、魔法からの防御とか全然やってこなかった。
クソー、次はちゃんともっと魔法の基礎からバランス良く、勉強しよう。
次があれば……。
「いい覚悟じゃないか。だが、最後までそうやっていられるかな」
3人の魔力が上がって、放電するようにバチバチと音を立てた。どうやら、3人同時に攻撃を仕掛けて来るみたいだが、一撃必殺なのかさっきみたいな連打なのか分からない。
ただ、どちらになってもピンチであることには変わりはない。今出来る事は、最後の瞬間まで妙案を考え出すだけだ。
「では、行くぞ!!」
駄目だ! 何にも思い付かない!!
俺がもう駄目だと思った瞬間!!
ド―ーン!! ド―ーン!! バッ!! パチパチパチ ド―ーン!!
なんだ!? この打ち上げ花火みたな音は?
俺は音がする空の方を見上げた。すると……。
「いや、花火じゃないか!? なんで!?」
ここから数百メートルの近距離で打ち上げられている花火は、普通に日本全国で行われている花火大会と何も変わらなく、鮮やかでとても綺麗だった。
「マユリン! 何これ!? すごーい!! 初めて見たよ! でも、魔力が感じないよ」
「おー、真由ちゃんがやったの?」
「いや、俺では……」
ミルネもミリちゃんも、初めて見る花火に驚いているようだが、俺ではない。
じゃあ誰?
「ごーすん……?」
「太助さん、これは一体……」
ストレングスの人達も、突然の出来事に動揺しているようだ。もちろん、ベルリア側も同様だ。
「これは一体何だ!? 何が起こっているんだ!?」
「ライムさん!! 大変です!? 全周まで包囲した結界の一部が破られています!! 一番奥の方です!!」
「何だってー!!」
ベルリア側も、相当慌ててしまったのか、せっかく溜めた魔力を解除してしまっている。しかも、報告しに来た者の話では、結界の一部が破られたというが、誰か来たのか!?
「結界が破られるなんて、まさかー!?」
「ライム! まだメインの結界は無事だから、さっさと攻撃してしまおう!」
「待て、フェルティングス! 結界に穴が開いたら、テレポートで脱出されるかもしれん。まずは修復させてからだ。それまでの間、メルリ頼むぞ!」
「ああ、任しときなー!」
「それにしても一体何が起きたというんだ!?」
花火は収まって、再びメルリが攻撃してきそうな感じだ。これではまた同じ繰り返しになってしまうぞ。
「マユリン!!! あの空見て!! 誰かいるよ!!」
突然、ミルネが大声を出して、指を差した。その方向はさっきまで花火が上がっていた場所だが……確かに誰かいる。
そして、花火の煙が引いてくると、その姿が徐々に見えてきた。
「あ、あれは……アルシア!!??」
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