第130話 ベルリア学園最高戦力!
報告に来たサポータとゴレイアーさんのやり取りを聞いていると、こんな夜中にベルリア学園の討伐隊が、隊列を組んでやって来たが、歓迎されていないそうだ。
「ベルリア学園のどこの討伐隊ですか?」
ゴレイアーさんは少し慌てた感じで、サポータに尋ねていた。
「はい、学園トップのSランク、ライムさんが率いる『ベルテック討伐隊』、Sランクのメルリさんが率いる『アイテック討伐隊』、Sランクのフェルティングスさんが率いる『オウロルテック討伐隊』の3隊です」
「それはかなり不味いですね。太助さんに報告と、こちらも応戦体勢を整えなさい」
「はい!」
これは何というか、嫌な予感しかしない。
Sランクが率いる3つの討伐隊なんて、かなりの戦力だ。
「真由、あなた達も応戦の準備をしなさい。最悪、戦闘になるかもしれません」
「やっぱり、そうなるんですね。でも、なぜ?」
「それは分かりませんが、少なくとも平和的な交渉ではありませんね」
もしかして、ダンロッパと繋がっていないよね? それとも、ストレングスが何かやらかしたわけではないよな?
でも、なぜか俺はそこまで危機感を感じていないんだよなぁ。
いつもなら、こういう危機的な状況の時は大体1人だった。この世界は俺に厳しいからな。
でも、今回はストレングスの皆さんと、ミルネやミリちゃんも一緒にいる。
状況的にこっちが不利でも、みんながいると思うと心強い。
よし、あの2人を起こして、こちらも準備するか。
ここは出来るだけ話し合いで解決して、そのまま上手くいけば、俺らの目的であるダンロッパの粛清に協力を取り付けられるかもしれない。
さらにストレングスも協力してくれたら、最高なんだが。
俺はミルネ達の寝袋に戻った。果たして素直に起きてくれるだろうか?
「おーい、起きろ!! 敵襲かもしれないぞ!!」
しかし、そう簡単に2人は起きてくれない。いやいや、討伐隊としてあかんでしょう。
「起きろ!!」
駄目だ、起きない。もし俺が敵ならこいつらもうアウトだろう。しょうがない、こうなったら奥の手でいくか。
「起きろ!! 先に起きた人はぎゅっと抱きしめて上げよう」
我ながらくだらない事を言ってしまったが、果たして効果は……。
「マユリンからの誘いなんて譲れない!!」
「真由ちゃんはミリのもの!」
「えっ!?」
今まで寝ていたはずの2人が、俺の意表を突いてビーチフラッグのように、物凄い勢いで俺に突っ込んで来た!
「ちょっと待てー!!」
俺は、ぶつかる直前でかわせたが、再び突進してきた。
「お前ら闘牛か!! 趣旨変わっているぞ!」
そして、その時!!
「あなた達! こんな時に何やっているんですか!?」
ゴレイアーさんが慌ててこっちに来て、怒られてしまった。
いや、ほんと何やっているんだろうね。
「あなた達、もっと緊張感を持って下さい! 事と次第によっては戦闘になるかもしれないのですから!」
「すみません。ミリちゃんが――」
「それは仕方ありませんね」
「おい!!」
もうゴレイアーさんのネタになってしまっているな。今度また怒られそうだったらこの方法を使おう。
「これから私と太助さんで、対話を申し込みに行きますが、あなた達も来てもらっていいですか?」
「それはもちろん。その為にここまで来たんだから」
「でも、気を付けて。向こうは本気の戦力で来ているので」
うーん、無敵モードで行った方がいいのか?
いや、とりあえず俺達に敵意が無いことを示して、友好的に対話が出来るようにした方がいいだろう。
向こうだって、戦闘を望んでいるわけではないだろうしね。
俺はミルネとミリちゃんと一緒に広場に出向き、ストレングス代表として太助さんとゴレイアーさんが来てくれた。他のメンバーは後方から警戒にあたっている。
すると、ベルリア側も前進を止め、代表者と思われる3人が俺達の方に向かって歩いて来た。
「あれは代表か? 誰だ?」
「あの3人は、『ベルテック討伐隊』『アイテック討伐隊』『オウロルテック討伐隊』の隊長、 Sランクのライムさん、メルリさん、フェルティングスさん。ライムさんがベルリア学園のトップになります。つまり、最高戦力で来ています」
ベルリア学園の凄いメンツだと言うのに、なんか平和的な雰囲気ではなさそうだ。
そして、10メートル程の距離まで互いに接近したところで立ち止まり、暫く睨み合いが続いた。
俺達は単純に向こうが止まったから、こっちも止まっただけで特に意味は無い。
しかし、ベルリア側の3人は、俺達に相当恨みでもあるのか、鬼の形相で睨んでいる。
この辺りも草木の魔力発光で暗闇でも表情が分かるが、光の当たり具合でとても恐いぞ。そして、1人は女子大生の金髪ギャルみたいな感じで、本来なら可愛いんだろうけど、今はとても恐い。
後の2人は、おっさん剣士のフェルティングスと、ちょい悪そうなイケメンのお兄さんと言う感じのライムさんで、この人がベルリア学園トップの……あれ? あれれ??
あれ? 見た事があるぞ!!
そう、俺がここに調査目的の男!!
つまり、目の前にいる男こそが、異世界人侵入事件の張本人で、ベルリア学園トップのライムさんだ。
ネスタリア学園にいなければ、ベルリア学園のSランクと思っていたけど、まさかこういう形で出会えるとは思っていなかった。
という事は、ベルリア学園は俺のいる世界、日本を知っているという事になるよな? もし、敵になるような事があるのなら、厄介だぞ。
幸いにも俺が美少女になったお蔭で、俺の事はバレないだろう。
さて、これからどうするか? この沈黙を俺が破って、先に話しかけた方がいいのかな?
とても平和的な雰囲気では無いが……。
そして、俺が話しかけるか迷っていると、ライムさんの方から先に沈黙を派手に破った。
「よくもエイルテック討伐隊長のSランク、オリンを暗殺してくれたな!! パワーバランスが崩れたところを攻め入るつもりだが、そうはさせないぞ!!」
やっぱり、そうなるのね。
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