第128話 ダンロッパの陰謀
ミリちゃんは俺を抱き寄せ「盗らないで」と言わんばかりに、太助さん達を威嚇した。
「ウ~、ウ~」
「お前は犬か!」
犬みたいな威嚇でも、太助さん達には結構効いているようだ。
「いいえ、私達はそんな事しません。合流場所に来ないので、心配して捜索していました」
太助さん達の真意はまだ分からないけど、敵意は無さそうだ。もし、攻撃を仕掛けるなら、こんな派手な登場はしないだろう。
「ミリちゃん、敵意は無さそうだから、話しを聞こう。だからもう、離して」
しかし、ミリちゃんは、今度は俺の方をジト―っと見た。可愛い顔して、なんでこんなに恐いんだろうか?
「いや、このままでいいです。という事で、全然聞く姿勢になっていませんが、お話を続け――」
「構いませんよね? 太助さん」
「それは、しょうがないでゴッスン」
「という事で大丈夫です」
「もう、ゴレイアーさんだけで話したらいいんじゃない?」
ゴッスンがシャイという事でゴレイアーさんが、代弁しているみたいだけど、面倒くせーな。
「ええ、本部からあなた方を捜索する指示が出ていましたので、それに従って行動を取っていました。そして、見つけましたので本部に連絡しました。今は本部からの指示待ちになります」
うーん、と言う事は次の指示次第では、こいつらと敵対する事もあるって事だよな? でも、今の俺はミリちゃんに守られているから安心だ。
けど、ミリちゃんはいつの間にか、俺を抱いたまま寝てしまっているけど。
そして、サポータの一人が太助さんの元に駆け寄り、何かを告げた後、今度はゴレイアーさんにも同様に告げた。
「今、次の指示が入りました。当初の予定通りベルリア学園に行き、魔王軍討伐の合同演習に参加せよとの事でした」
「魔王軍討伐の合同演習!?」
「どうかされましたか?」
「いや、何でもありません」
本部の指示と言っても、ダンロッパが指示しているのには間違いない。なのに、あまりにも真面過ぎると、逆に不安になってしまうな。
とりあえず、ベルリア学園に合流するまでは何もしてこないと思うが、合流後何かあるような気がする。
もしかして、ベルリア学園もダンロッパと繋がっていて、到着した瞬間に太助さん達と一緒に襲いかかって来るとかだったら、最悪のシナリオだ。
「という事で真由、今すぐ出発の準備をしなさい。いつまでも魔王軍領域にいるのは危険ですから」
「そうしたいけど、無理にミリちゃんを起こすわけにいかな――」
「それは仕方ないですね。我々は我々で準備をしていますから、気を付けて下さい」
この人達は、ミリちゃんの事をよく知っているようだ。
さて、この絡みついたものを外すとしますか。ていうか、さっきまで威嚇していたのに寝るってどういう神経しているんだよ。
――場面変わって、ここはネスタリア学園内のダンロッパの部屋。
ちょうど討伐隊ストレングスから、真由達を発見したという報告を受けて、ダンロッパとモリモンが対話をしているところだ。
「ダンロッパさん、いかがなさいますか? 昨日、報告を受けた魔王軍領域で大規模の爆発があった所に、真由達が居たという話です」
「行方が分からなくなって3週間、ようやく現れたと思ったら、魔王軍領域でこの騒動……。一体何がしたい?」
真由の読めない行動に、ダンロッパは頭を抱え込んだ。
「なぜ魔王軍と関わるのか分からないが、私の作戦に魔王軍の介入は厄介だ。ベルリア学園を半分潰すからね。ベルリア学園も恐らく、監視しているはずだ」
「ガムイさんのお蔭で、ベルリア学園は崩壊し始めましたからね。その後、真由にやられた時は驚きました。もうすぐ完治するみたいですが」
「ああ、やっぱり真由という女を侮ってはいけない。だが、これからは私の為に利用出来るかもしれない。ふっふっふ」
ダンロッパは不気味な笑みを浮かべた。
――一方その頃真由達は。
俺は慎重にミリちゃんを外して、ミルネを蹴り起こし、ベルリア学園に向けて出発する準備を始めた。
準備と言っても、2人が起きてくれれば、後は流れ作業のようにスムーズに行く。
そして、出発すると、ストレングスのBランクのメンバーの3人が、荷物を持ちながら太助さんの周囲に付き、前衛と後方、左右にAランクが周りを固めた。
ちなみに俺達は、太助さんの直ぐ後ろを歩いている。
Aランクは周囲を警戒しているみたいだが、目視で確認というよりは、時々手を出して、魔力を察知する方に重点を置いているようだ。
まさにこれぞ討伐隊と言う感じだ。
それに比べてラビットちゃんは、可愛いゴスロリの服に(俺はアルルンの服のままだが)登山でもするようなリュックを背負い、3人仲良く手を繋いでいる。
これは遠足でピクニックに来ている感じだ。完全に山をなめているが。
それにしても、昨日ミリちゃんとあんな事があったのに、いつもと変わらないな。
むしろ、余計にくっついているような気がする。
そして、しばらくすると、後ろ側を警戒していたAランクの人が、太助さんに報告する為に近寄った。
「遠方から監視されています。感知した僅かな魔力から人間であると思われます。よってベルリアの討伐隊の可能性が高いでしょう」
「手を出してはいけないでゴッスン」
「分かりました。引き続き警戒にあたります」
「ふんっ」
「おい、やめろ」
俺はミリちゃんが何かしそうだったので、すぐに止めに入った。こうやって手を繋いでいるから、対応しやすい。
ミリちゃんは『可愛い』に関する事を制止すると怒るが、それ以外なら大体は言う事を聞いてくれる。 ここでベルリア学園の討伐隊を倒してしまったら、協力をお願いするどころではなくなってしまうからな。
でも、ベルリア学園も流石に昨日の騒ぎで駆け付けたんだろうな。そして、今朝のゴッスンコールで完璧に特定出来ただろう。
ミリちゃんはしょうがないとしても、あいつらはれっきとした討伐隊なんだけどなぁ。
まぁ、ベルリア学園に騒ぎの理由は絶対分からないだろう。誰が真由煩いで、あんな事なったのを想像出来るものか。
――そして、日が落ちる頃には魔王軍領域に出て、ベルリア地区に入った。
「今日はここで野営するでゴッスン」
太助さんの一言で、サポータ達は野営の準備と周囲の安全確保にまわった。
ベルリア地区に入ったとは言え、街に着いたわけではないので、大きなキャンプ場みたいな所だ。
ここなら見通しがいいが、逆に向こうからもバレバレで目立つ。
別にここは、魔王軍領域でもないし、ベルリア学園と合同演習に参加する目的なら、特に大きな敵に狙われる可能性は低いだろう。
それに今はSランクが2人、Aランクが4人もいる。盗賊や魔物が現れても平気だろう。それより、むしろ太助さん達がダンロッパの指示で、急襲してこないかの方が心配だ。
「マユリン、どこで野営するの?」
「そうだな……それが悩みどころだな。あんまり、みんなと離れ過ぎるのも、近過ぎるのもだしな」
俺が場所選びに悩んでいると、そこにゴレイアーさんが1人でやって来た。
「真由、あなたに話があるので、食後に来てもらって、いいですか?」
うーん、俺だけ呼び出しか……嫌な予感しかしない。
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