第127話 討伐隊ストレングスの来襲?
周囲からゴッスンコールが響き渡り、俺は飛び起きたが、2人がまだ寝ているのは言うまでもない。
しかし、元々俺達は、太助さんが率いる討伐隊ストレングスと合流する予定だったが、アルシアがガムイに襲撃され、それどころではなかった。
それから色々あって3週間が過ぎ、結局合流出来ないままだったから、もう忘れられていると思ったがそうでもないのか? 昨日の爆発で、単にここに来たのか?
そもそも、ダンロッパの策略で派遣されている可能性が濃厚だったが、ベルリア学園に向かう所までは、目的が共通してきるから受け入れていたけど、今はどうだ?
ミリちゃんはまだ疲れていそうだし(俺があっさりと布団から出れたのが証拠)ミルネは起こすのに時間がかかる。
とりあえずここは、俺一人で、話し合う余地があるかどうかを確認しておくか。
そして、俺はゴッスンコールが鳴り響く外に出てみると……。
「うるせー!!」
俺の目の前には、Aランクと思われる厳つい女4人と、その後方にBランクのサポータが取り囲んでいた。太助さんはなぜか、サポータのさらに後ろにいた。
前回の出撃式の時と同じように、ゴッスンコールに合わせて、よく分からん踊りをしていた。
「とりあえず静かにしてくれー!! 話し合おう!!」
ドーーーーーーーン!!!
本当、どっから音しているんだよ!!
すると、爆発音と伴にゴッスンコールが止み、サポータは真ん中を開けるように引き下がり、Aランクの女も変な踊りを止めると、後ろにいた太助さんが真ん中を堂々と歩いて出てきた。
最初の第一声はなんだ? 場合によっては戦闘になるかもしれん。
そうなったらあの2人を抱えて、MPC全開で逃げた方がいいだろう。でも、この辺りは昨日の衝撃波で、何も無くなっていて隠れる場所がないから、そう簡単にはいかないぞ。
そして、太助さんが立ち止まり、その大きな身体で威圧するように俺の方に指を差した。
これはヤバいぞ!!
ドーーーーーーーン!!!
すると、再びゴッスンコールが始まり、女も踊し出した。
「おい! 何だよ!! うるせー!」
太助さんはゴッスンコールが始まると、何かを熱く語っているようだが、全く聞こえない。
「周りがうるさくて聞こえないぞ!!」
それでも太助さんは、拳を振り回し熱く主張しているが、全く聞こえない。
いやでも、距離は数メートルぐらいだから、少しぐらいなら聞こえそうな気もするが、全く聞こえない。
これは俺の方が近寄った方がいいのかな?
俺は太助さんの方に向って、敵意は無い事を示す為、両手を軽く上げて歩いた。
すると……。
「えっ!?」
俺が歩いた分、太助さんを含むメンバー全員後退した。一体どういう事だ?
さらに、俺は前に進むと、やっぱり同じように後退した。
相変わらず変な踊りと、熱い語りは止めないようだが。
じゃあ、一気に近づいたら、どうなるんだ?
俺はMPCのダッシュで一気に太助さんの前まで、接近してみた。
「まさか……」
なんと、あれだけ熱く語っているように見えたが、実際は口ぱくで何も喋っていなかった!!
一体、何がしたいんだ!?
ドーーーーーーーン!!!
また、何処からともなく爆発音がすると、再びゴッスンコールは止まった。やっと静かになった。
「それで、太助さんですよね……俺達に何の用でしょう? この前、合流する約束を守れなかった件なら、すみません。想定外の事が起こりまして……うーん……ん?」
俺が話し掛けると太助は、そのでかい図体に似合わず顔を赤くさせ、もじもじしていた。
すると、Aランクの1人、黒髪の長身の厳つい女が俺の方にやって来て、背の低い俺を見下ろした。
「太助さんはシャイなので。代わりに私、Aランクのゴレイアーが答えます」
「恥ずかしがり屋さんかよ!! もしかしてゴッスンコールは――」
「ええ、誤魔化す為です」
ゴレイアーさんはまだ話の途中で、即答で答えた。
なんか昨日の疲れが急に出て来た。ただのアホな集団なのか?
という事は、あの出撃式の時は何も喋っていなかったのかよ。
「あなたがCランクの真由ですね。質問します。なぜ、あなたは集合場所に現れなかったのですか? 本部からそう聞きました。これは命令違反になります」
「そ、それは、ガムイという男にアルシアが襲われて――」
「理由になりませんね。集合場所にはミリちゃんとミルネが来ればいいのです」
俺の話を途中で遮ぎって、厳しい事を言いやがる。
「だから、それでミリちゃんとミルネがこちらに――」
「なるほど。いかがでしょう? 太助さん」
「それは、しょうがないでゴッスン」
「という事で大丈夫です」
「なんじゃそりゃー」
あれだけ厳しく追及してきたのに、あっさりとOKしやがった。
「では、もう一つ聞きます。ここは魔王軍領域なのに、この周囲の有り様なんですか? むやみに魔王軍領域で騒ぎを起こすのは、重大な問題になります」
いやいや、そっちも結構うるさかったぞ! って言ったら怒られそうだから、ちゃんと答えよう。
「それはミリちゃんが――」
「いかがでしょう? 太助さん」
「それは、しょうがないでゴッスン」
「という事で大丈夫です」
「もういいわ!」
ていうか、ミリちゃんだから大丈夫って事なのか? 結局、こいつらもミリちゃんを恐れているんじゃないのか? それなら、ミリちゃんをここに連れて来れば、下手に手出しは出来ないのでは?
そうすれば、俺の安全は保障される。もういつかのような、俺一人で痛い目には遭いたくはないからな。
「Cランクの俺では役不足だと思うので、ミリちゃん呼んで来ます」
俺はそう言って、逃げるようにドアの方に向った。
「ちょっと、待ったでゴッスン!」
「ちょっと待ちなさい!」
やっぱり、ミリちゃんを恐れているな。でも、呼ばさせて頂きます。
そして、ドアを開けようとした瞬間!!
バァーーン!!
「痛てー!! 何だ!? いや、想像はつくが……」
俺はドアを開けようとした瞬間、急に馬鹿みたいにドアが開いた為に、そのまま吹っ飛ばされてしまった。
説明するまでもなく、ミリちゃんがドアを開けたんだろう。
この世界の人間は筋力が無いから、こんなパワフルにドアを開けるのは無理だ。
恐らく魔力を込めでいるんじゃないか?
俺は地面に倒れ込んでしまうと、予想通りミリちゃんが外に出てきた。
ミリちゃんは俺の方にやって来ると、俺を起こしてくれて、頭や顔に付いた埃を払ってくれた。
そして、なぜか俺を抱きよせると、太助さん達がいる方に威嚇するようにじっと見た。
「真由ちゃんを苛めたら駄目」
「お前だよ!!」
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