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第124話 真由煩い 

 俺の胸ぐらを掴んでいるこの手は、ミリちゃんであるが、とても凄い力だ。

 一体どうなっているんだ!? 魔力を使っているのか!?


 俺は抵抗する間もなく、端側のミリちゃんの隣に引きずり込まれた。



「両手に真由ちゃん」

「両手に花みたいに言うな! 俺が2人いるんだぞ! ちょっとは変だと思ってくれー!」

「真由ちゃんが2人……ミリのもの」

「駄目だこりゃ」



 ミリちゃんにとって、本物と偽物とか、2人いる疑問とかどうでもいいのだろう。

 むしろ、2人居る事でテンションが上がっているだけのような気がする。


 このベッドは3人でもギリギリなサイズなのに、4人寝ると密集度は高く、とてもじゃないが寝れるものではない。


 それでもミリちゃんは強引に自分の方に寄せるように抱き、アルルンの方を見たり、俺を見たり交互で楽しんでいるようだ。



「真由ちゃんが2人~」



 こんなにテンションの上がったミリちゃんを見たのは初めてだ。そんなに真由が好きなのか?


 でも、いつもなら添い寝するように眠ってくれるのだが、今回はいつもと違う。

 なんか、どんどんハイになっていく。



「もう離さない。真由ちゃんはミリのもの~」

「きゃっ! 痛い!」

「お、おい」



 ミリちゃんはさらに力を入れ、俺とアルルンを自分側に抱き寄せた。


 これはちょっとやばいような気がしてきた。

 一旦ここは、アルルンと脱出して落ち着いてもらった方がいいぞ。


 問題は脱出方法だが、俺一人だったら不可能だが、2人いる事でミリちゃんの関心がアルルンに向く瞬間があり、そのタイミングを狙えば成功率は上がる。


 具体的には、アルルンの方に気が向いた時に、MPCで一気に布団から脱出する。

 すると、ミリちゃんは俺を捕まえようと、再び俺の方に気を向けるだろう。

 そして、そのタイミングがアルルンを救出させる時になる。


 まぁ、その時にカニ挟しているミルネを吹っ飛ばすかもしれないが、それは仕方が無いだろう。うん。すまん、ミルネ。先に謝っておくよ。


 MPCは魔力を発せず大きな力が出せるから、流石のミリちゃんも対応出来ないはずだ。


 よし。



 俺はミリちゃんの段々と強くなっている抱き付きに耐えながら、アルルンの方に気が向くタイミングを待った。


 そして……。



「きゃ、もうやめるわけです!」



 今だ!!



「MPC! 緊急脱出!!」



 MPCによる一瞬の力、瞬発力で一気に布団から出ることに成功した。



「駄目、真由ちゃん」



 予想通り、ミリちゃんはすぐに俺の方に向きを変えて、捕まえようと手を伸ばした。

 俺はそのままMPCで一気にアルルンの方に突っ込んで行き、ミルネを吹っ飛ばして、アルルンを抱き抱え脱出した。


 ミルネはそのままベッドから落ちてしまったが、まだ寝ているようだ。まぁ、大丈夫そうで良かったが、本当に起きないな。


 とにかく予定通りの救出に成功する事が出来た。



 俺はアルルンを床に座らせ、拘束魔法を解除した。


 自分に掛けられたものなら魔力が制限されてしまう為、解析をして少量の魔力で効率良く解除しないといけないが、今回は自分に掛けられていないから普通の解除で解ける。



「アルルン、大丈夫か?」

「真由ー、怖かったよー」

「おい、抱き付くな」



 アルルンは泣きながら、俺に抱き付いた。余程怖い思いをしたんだろうが、大丈夫そうだ。

 ミリちゃんにも、駄目なものは駄目だとちゃんと教えないといけない時が来たかもしれない。


 とりあえず、これで一件落着か。はっはっはー、はぁー。

 このまま幕を閉じてくれたらどんなに良かったかー。

  

 ミリちゃんの様子が可笑しい……。

 

 ベッドの上で下を向いたまま座っている状況だが、これが不気味過ぎる。

 普段ならここまで捕まえに来るか、魔法を使うか、なんらかのアクションを取るだろう。


 しかも、俯きながら何か呟いているようだし。



「真由ちゃんはミリのもの……」



 これは逃げた方が良さそうだな。途中でアルルンには退場してもらわないと、収まらないような気がしてきた。



「ここはひとまず逃げるぞ、アルルン」

「うぅ、分かった」



 俺はアルルンを手を引っ張り、ドアの方に向かった。

 そして、扉を開けようとした瞬間、後ろから今まで感じた事もない圧? 魔力? みたいなものを感じた。もちろん、それはアルルンも同様に感じているみたいで身体が震えていた。


 実は俺も震えてたりして……。 



「真由、怖い」

「俺も怖えーよ」



 俺は恐る恐る振り返ると、すぐそこにミリちゃんが茫然と立っていた。さらに強力な魔力を発しながら、ヤバい目をしていた。それは何かに取り憑かれたような感じだった。


 

「真由ちゃん、勝手にどこに行くの? ミリのもとにおいで……さぁ!!!」

「ひゃあーー!!」



 突然、ミリちゃんは俺とアルルンに襲いかかり、もう正気でなかった。

 俺は咄嗟にアルルンを抱えて、MPCでダッシュをして、扉を破って外に飛び出した。



「大丈夫か? 全力で走るぞ!」

「大丈夫。でも手は握っていて欲しいです」

「分かった」



 俺はアルルンと一緒に全力で森の中を走って逃げた。しかし、まだ100メートルぐらいしか走ってない所で、何か異変を感じて止まった。



「真由、どうしたの?」

「ちょっと待って、何か変だし、音もする。これはもしかして……」



 俺とアルルンの周囲の空間が歪み始め、また、セロハンテープを引っ張る時のビリビリとした音が響き渡っていた。



「間違いない。これは空間魔法だ! 気を付けろ!」



 ミリちゃんは、逃げる俺達を空間ごと引っ張って捕まえるつもりなのか!?

 なんてでたらめな方法なんだ!



「どこかに空間が裂け始めている所があるはずだ! それを見つけるんだ!」

「真由の横に裂け目がある!!」

「こ、これか! 反対側に逃げるぞ!」



 俺はそこから離れるようとアルルンを抱え、MPCでダッシュすると、その直後に空間が完全に裂けて、異次元に吸い込まれるようにミリちゃんの方へ引っ張られた。


 そして、引き裂かれた空間が元に戻ろうとする時に発生した衝撃波で、俺とアルルンは横へ吹っ飛ばされ、地面に転がった。


 なんという力だ! もうでたらめだ……。



「大丈夫か?」

「怖い……ごめんなさい」



 うーん、恐怖のあまり少しパニックになっているな。アルルン独特の喋り方ではなくなっている。

 無理もないが。


 俺はアルルンを起こして、ミリちゃんの方を見ると、さっきの衝撃波で砂煙が舞っていた。そして、ミリちゃんの姿が見えてくると、強力な魔力が体外に噴き出しているのが分かった。


 もしかして、俺の奥の手みたいに魔力が暴走しているのか? 恐らく、今のミリちゃんに理性がないかもしれない。


 ここは、我に返ってもらう為に、一発引っ叩いた方がいいだろう。でも、それは俺も覚悟しないといけないかもしれない。


お読み頂き、ありがとうございます。


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