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第120話 真由達に刺客がやって来る

――――場面変戻って、ここは灰色の迷い森。


 俺はミルネとミリちゃんと一緒に、モウストリア湖を目指して進んでいたが、結菜ちゃんが何かしてくれたおかげで、一つの道筋だけ灰色の霧が薄くなっていた。


 おかげで、数時間程で迷い森を抜け出し、モウストリア湖に着く事が出来た。

 迷わなければこんなに早く着けるのか!?

 

 しかし、道中は敵に見つからないように魔力を最小限で進んだ事もあって、2人とも大分お疲れの様子だ。

 もちろん、俺も魔王城に突撃の時に色んな意味で疲れてしまった。しなくていい苦労を俺は一杯しているような気がする……。



「迷い森から出れたし、今日はここで休もうか」

「マユリン、疲れたよ~。まだ家残っているかな? 布団で寝たいな」



 このモウストリア湖は一応魔王軍領域になるし、ミリちゃんがあれだけ大きな魔法をブチかませば、もう魔王軍に把握されているんじゃないか? 

 ここは大人しくひっそりと寝袋で寝る方が無難のような気がするぞ。



「家は魔王軍の追って来れば、真っ先に狙われそうだから、ベルリア側の森で寝袋で寝る方がいいんじゃないか?」


「駄目、ミリとミルネちゃんで建てた家で、真由ちゃん抱いて寝る」



 そう言い放ったのはミリちゃんで、さらに俺の袖を引っ張った。もし、ここで俺が断ったら何を仕出かすか分からないから、家にしておく方がまだましかもしれない。



「分かった。家で休もう。ミリちゃんには逆らえん」



 という事で、俺達は家に向かう事にした。家は、今いる湖の迷い森側の対岸の森にあるから、湖岸沿いを歩けば着ける。


 そして、対岸の森が近くなると家が見えて、何か人影のようなものが動いた。よく見るとそれは魔王軍のオーガ5体で、しかも、向こうもこちらの存在に気付いた。



「家の前にオーガがいるぞ! ここは俺が――」

「ふん!」

「え?」


 

 ミリちゃんは、容赦なく魔動砲みたいなものを同時に5発撃って、一瞬で倒してしまった。それはまるで車の自動運転みたいに、自動で魔物を排除してくれるシステムのようだ。


 でも、これがもしゲームなら「こんなシステム何が面白いんだよ!!」って、コントローラを投げているだろう。


 いや、別にいいんだけど。


 俺ももう少し魔法の実戦経験を積んでおきたいというか……まぁ、でも討伐隊として考えればミリちゃんの行動は妥当なんだよな。


 討伐隊は、攻撃するのはSとAランクで、Bはサポータだから、今はアルシアがいない以上、Sランクのミリちゃんだけになる。

 ただ、本人がそれを意識しての行動かどうかは定かではないが……。


 ふぅー、とりあえず褒めておかないと、後が怖い……。



「流石、ミリちゃん、助かったよ」

「ふふーん」



 ミリちゃんは自慢げな顔で俺を見ると、俺とミルネの手を握り、家の中へと入った。家の中は前と変わりなく、特に荒らされた形跡も無い。相変わらず可愛いお部屋だ。



「今日は、みんなお疲れの様だから、ジュレ食ってさっさと寝よう」

「はーい」



 いつもは何かと物足りない感じのジュレだが、こういう疲れた時は、お菓子を食べるような気軽さで簡単に用意出来るのが嬉しい。一人暮らしの俺には必須アイテムとして欲しいくらいだ。

 


 2人とも、眠気に耐えれない子どもみたいに、目を擦りながら食べていた。俺も疲れた。だって今日は魔王城に殴り込みに行ったからなぁー、はっはっはー、しかも一人で。


 うーん、もしかしたら魔王城に乗り込んだ人間って、俺が初めてじゃないのか? 

 図書館の文献にもそんな話は無かったし。

 まぁ、俺が知らないだけかもしれないが。



 ――そして、食事を済ませ、魔法のクリーンで身体と服を綺麗にすると、いつもならこの可愛いゴスロリの服を、一旦デザイン解除するか、寝やすい服装に変更するところだが、今回は2人とも眠気に勝てずそのまま寝てしまった。


 仕方ないので2人をベッドまで運んでやった。俺も流石に魔法を使うのは面倒だったので、そのままの格好で寝る事にした。


 少し服がごわつくが、問題無い。そんな事が気にならないぐらい俺も眠たいからな。でも、こういう疲れた時にベッドの上で寝れるのは良かった。

 

 しかも2人はもう寝落ちしているからゆっくり眠れるぞ。こうして大人しく寝ている時の寝顔は可愛いんだよな。大人しく寝ている時は……。


 しまった! どうせなら俺が端っこで寝れば良かった。いつも真ん中で寝ているのが習慣づいたせいか、当たり前のように真ん中のポジションを取ってしまった。


 真ん中にミルネを持ってくれば、蹴られる事はあっても、ミリちゃんから何をされるか分からないリスクは避けられたのに。


 まぁ、今晩は大丈夫だろう。2人とも爆睡みたいだし。



「マユリン……」

「真由ちゃん……」

「ぐぇ!」



 爆睡だろうとミルネは抱き枕のように抱きつき、ミリちゃんは腕にしがみ付いた。

 結局、いつもと何も変わらなかった。


 こんなんで眠れるか! と思いながら俺はウトウトしながら、天井を見上げていると、外から誰かが近づいてくる足音が聞こえた。



「え? 誰かいるのか?」



 その足音は忍び寄るものではなく、堂々と歩いている感じで、逆にそれが不気味だ。こんな時間に魔王軍領域でただの通行人って事はないだろうし、魔王軍ならミリちゃんの事を知っているはずだから警戒はするだろう。


 考えれるのは2つ、ただのバカか、もしくはミリちゃんにも動じないスゲー大物の誰かだ。もし、後者だったらやばいぞ。


 すると、その足音の者は家の前まで来ると、何の躊躇もなくドアを開けた。

 これは本気で不味いぞ。何とかしないと……。



「おい起きっ」



 いや待て、ここで無理にミリちゃんを起こすと、俺が何をされるか分からない。

 しかも、ミルネはちょっとやそっとでは起きないぞ。


 ここは俺が先に布団から脱出してから、2人を起こすのがベストだ。まずは、俺に絡みついているミルネを、ミリちゃんを刺激しないようにして外さないと……。



「ん? あ、あれ? えっ! げっ! 手が後ろに!? これは拘束魔法!!」



 ミリちゃんは起きていないのに、俺に拘束魔法が掛けられ手足が動けなくなった。

 こいつは寝ながらでも、魔法を掛けれるのか!?


 その時!! 



「いっしっしっしー、初めまして、私はスライム人間のアルルン。君をさらいに来たわけですね。いっしっしっしー」



 俺が声のする方を向くと、ちょうどベッドの頭部側の支えに肘を置いて、ほっぺたを両手で添えながら無邪気に笑う、淡い色のセミロングでサラサラとした美少女がそこに居た。


お読み頂き、ありがとうございます。


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